イメージ 1

ポール・デルヴォー「シレーヌの村」1942年 板、油彩 105x127㎝ シカゴ・アート・インスティテュート蔵
1897~1994(ベルギー)

            目的の無い行い

「シレーヌ」とはギリシャ神話に出てくる人魚(セイレーン)で、船乗りを美しい美声で魅惑しては難破させた。美しい女性の比喩にも使われる。

道路を挟んで若い女性たちが無表情に同じ姿勢で椅子に座っている。画面の奥には何人もの人魚が海岸で泳ぎ、、その手前に紳士が歩き去ろうとしています。

人はどんな格好をしても、脳が指図して行動します。
たとえ座っていても座る行為には目的があります。

ここに描かれている女性は道の両脇に座っていますが、座っている目的が分かりません。
この女性たちに座っている意味を与えたら、例えば疲れをとるために座っているとか、町の娼婦で客の気を引いているなどだったら、この画面は何でもない自然な場面になりますが、この女性たちからは感情も伝わらないし目的も分からない。まるでマネキンのようでただ座っているだけ。

登場人物に目的を与えないとその世界は非現実的な世界になってしまう。
シュールな世界なのです。