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牧谿法常 「観音・猿鶴図」 171.9x98.4cm 大徳寺 南宋末  国宝


大徳寺の虫干し

以前、この作品牧谿の「観音・猿鶴図」を取り上げたことがありますが、私は牧谿作「観音・猿鶴図」を、なんとか観ることが出来ないかと、ネットで調べたらところ、大徳寺(京都)で毎年一度、10月の第2日曜日に文化財の曝涼(虫干し)を行っていて、その日一日だけ一般公開することが分かり、雨天は中止とのことで前日は雨で、天候を気にしながら、京都まで行って観てきました。

展示は虫干しが目的なので、大徳寺方丈(国宝)の6部屋すべての障子や襖が取り外され、内と外の境がない状態で、其々の部屋に絵画や書が壁全面に掛けられ、掛け軸は外からの風で微かに揺れ、照明は外の明と部屋の天井の中央に一つの裸電球があるのみで部屋は薄暗く、前庭は方丈の庭(特別史跡名勝庭園)その前の「唐門」は国宝。

天候もよく、部屋で超一級の作品を鑑賞して、疲れたら縁側に座って石庭を眺める。何度かそれを繰り返し、紅葉の時期ならもっと良かったのですが、美術館では味わえないゆったりとした贅沢な時間を過ごすことが出来ました。

画集ではこの作品をよく見ているのですが、実際に見ると思っていた以上に大きな作品で、薄墨でサラッと描かれ、ポイントポイントで強りタッチが加えられて、高僧の深い「知」と悟りきった静けさが画面の隅々まで行きわたり、深い空間が、静けさと緊張の中に観るものを癒します。

この作品は室町の末期、今川義元の軍師も務めていた太原崇孚という高僧が所蔵していて、妙心寺と大徳寺に遺産分けをすることを決めて、「観音猿鶴図」と50貫文の現金とどちらにするかと聞いたところ、妙心寺は現金を選び、大徳寺は「観音猿鶴図」を選んだそうです。

お金は使えばなくなりますが、「観音猿鶴図」は大徳寺の宝として永遠に残ります。

大徳寺は、一休さんでおなじみの一休宗純によって復興した禅寺ですが、「観音猿鶴図」の中央の観音像の座像を組んだ顔の表情は優しく穏やかで、禅寺の所有としてふさわしい超一級の作品です。