こんばんは。
VMDコンサルタントの藤井雅範です。
いつもボクのブログを訪れてくださり
有り難うございます。
こんな会話が描かれている
小説があります。
『ずいぶん長く会わなかったような気がするわ、
と彼女が言う。
ボクは考えるふりをして指を折ってみる。
三年ってとこだな。
あっという間だよ。
僕たちはお互いに肯いてしばらく黙り込む。
喫茶店ならコーヒーをすすったり、
レースのカーテンを指でいじったりするところだ。
君のことはよく考えるよ、と僕は言う。
そしておそろしく惨めな気持ちになる。
眠れない夜に?
そう、眠れない夜に、と僕は繰り返す。
彼女はずっと微笑みを絶やさなかった。・・・』
この彼女って誰だと思いますか?
主人公の昔の恋人?
いいえ、実は“ピンボール・マシン”です。
村上春樹さんの“1973年のピンボール”という
小説のセリフです。
昔、夢中になったピンボール。
その台、たった一つの一台を探して
街を尋ね歩く・・・
そしてついに見つけた一台との再会シーンが
上のセリフになっています。
このあと、再び別れのシーンがあるのですが
ここでも見事に、“女性”として
ピンボール・マシンは描かれています。
実はこの小説
前半には一切
ピンボール・マシンの記述は
出てきません。
後半を過ぎて、ようやくピンボール・マシン
が登場するくだりがあります。
ボクはこのシーンの記述が
大好きです。
こんな感じ。
『ある日、何かが僕たちの心を捉える。
なんでもいい、些細なことだ。
バラの蕾、失くした帽子、
子供の頃に気に入っていたセーター
古い、ジーン・ピットニーのレコード
・・・・・、
もはやどこにも行き場のない
ささやかなものたちの羅列だ。
二日か三日ばかり
その何かは僕たちの心を彷徨い、
そして元の場所に戻っていく。
・・・・・暗闇。
僕たちの心には
いくつもの井戸が掘られている。
そしてその井戸の上を鳥がよぎる。
その秋の日曜日の夕暮れ時に
ボクの心を捉えたのは
実にピンボールだった。
・・・・・・・・・・』


