その日からうしくんとは会うこともなく、それどころか学校で見かけてもガン無視を決めこまれた。
うしくんと会わなくなってからの放課後と言ったら、もう言い表せないくらいに退屈だった。彼女の幸せを考えた結果なので提案自体に後悔はしていないにしてもこの退屈さ加減はちょっと、いや、かなりやばい。
なにをしていいかわからなくて、ついに公園の小学生と顔見知りになってしまったほどだ。これで告白うまくいってなかったらどうしてくれよう。そこまで考えてから、心の中でとは言え、随分と独り言が増えてしまったなぁと情けなくなった。
こんな気分の時は公園の小学生と遊ぶに限る!!
退屈なHRが終わると、俺は一直線にチャリ置き場に急いだ。
今日はなにすっかな。まぁ小学生がもう始めてる遊びに混ぜてもらうだけなんだけど。
チャリに跨りながらそんなことを考えていると、後ろから声が聞こえる。
聞き慣れた、芯のある声。
「待って!!!!おーじ!!」
走ってきたのか、うしくんは膝に手をつき、肩で息をしていた。
「……告白」
「え?」
「成功したのか?」
突然の質問にうしくんは一瞬驚いた顔をしたあと、ニカッと笑ってピースサインを突き出した。
「なんだ、やったじゃん!!なに?その報告するためにわざわざ走ってきたんだ?」
「そう…だけど、そうじゃないよ!!」
うしくんはズンズンと近づいてきた。
「じゃあなん…」
「おーじ、やっぱり、放課後遊ぼ?」
「はぁ?何言ってんだよ、それじゃ彼氏が…」
「じゃあ!おーじは私と付き合いたい!?」
「いや全然?……ウッ」
真面目に答えたのに鳩尾を殴られた。
地味に痛い。
「そこは付き合いたいって言って!!でもそうでしょ!?私だってそうだよ!」
「何が言いたいんだ?」
「ねぇ、放課後、つまんないでしょおーじ」
会話が全く噛み合わない。
うしくんの質問は意図が全然見えてこなかったが、真剣な顔をしているので正直に答えることしかできない。
「つまんねーな、退屈すぎて鯛になったわ」
「そういうのいいから。」
「ごめん」
「私もつまんないの。おーじもつまんない。なのに一緒にいないのってなんか意味ある?」
正論だった。
一緒にいるのをやめたらお互いにつまらなくなった。ならまた一緒にいることにすればいい。
理屈はわかるが、彼氏はどうなる?
というか。
「彼氏と遊べばいいんじゃねーの…?」
「あいつとは学校内でも会ってるし休みの日だって会ってる!!も~~わっかんないかなぁー!」
うしくんはチャリを蹴った。
チャリが悲鳴をあげる。
「彼氏は彼氏!友達は友達なの!!変な気遣いほんとウザい、周りにどう思われるとか彼氏がどうとか、関係ないから!!いいから、遊ぶの!?遊ばないの!?」
「あ、遊びます…」
「声が小さい!!」
「遊びます!!!!」
「出るじゃん」
いつぞやの河川敷の時のようにうしくんが笑った。
たまには私が漕ぎたい。と半ば強引に俺からチャリを奪い、うしくんはチャリを漕ぎはじめた。
そのチャリの後ろにおとなしく乗る。
このパターンはなんだかんだで今まで一度もなかったのでうしくんといるのが久しぶりなのもあってなんだか落ち着かない。
どこに行くかもわからないままうしくんが漕ぐチャリは進む。
しばらくしてうしくんがポツリと言った。
「前に河川敷で聞いたよね。男女の友情ってあると思う?って」
「あー、うん、言ってたなぁ」
「あれ、おーじ答えなかったよねぇ」
鋭いところをついてくる。
あの時俺はどう答えていいのかわからずに有耶無耶にしたのだが、うしくんにはバレていたようだ。
うしくんは何故か楽しそうに笑って漕ぐスピードを急にあげた。風の音が大きくなって、他の音はほぼ聞こえない。
うしくんは叫んだ。
「ねぇ、男女の友情ってあると思うー!?」
実はあの日からずっと答えを探してた。
とうの昔に答えは出ていたのに、理由をつけてわからないふりをしていた気がする。でも。今度は自信を持って答えられる。
俺はうしくんにダメ出しをされないように大声で叫び返す。
「あるに決まってんだろーーーー!!」
うしくんは嬉しそうに笑ってから、
いきなり急ブレーキをかけた。
「逆方向だった!!おーじ、運転手交代!!」
「ハイハイ」
「ハイは一回~」
いつものやりとりをしながら、チャリはもと来た道を引き返した。