ドレミファソラシドレミ…って物心ついた時から当たり前のように音階は周期的に繰り返すと思ってますよね。
そのうちちょっと勉強して知識がつくと、オクターブっていうのは周波数が2倍に対応してるのか!と納得した覚えがあります。
オクターブを基準に考え、平均律もピタゴラス音率も純正律もできています。音率を作る時に「2」という数字が入っていることにそれが現れています。
ところがここ数日興味に任せていろいろ読んでいると
1オクターブ=周波数2倍ではない、という記述が出てきてびっくりしました。
オクターブ=2倍が崩れてしまったらピタゴラスも純正律も平均律も全部まちがい、考え直すことになるんでしょうか。
難しいのでちゃんとわからないのですがざっと読んで、分かったとこだけ書いてみます。間違ってたらごめんなさい。ちょっと長いですがひとまとまりなので。
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「オクターブ伸長現象
(octave enlargement effect/phenomenon)」
というものが知られています。
周波数が2倍になるものを
「物理的オクターブ」と名づけておきます。
一方、二つの純音を実際に人に聞いてもらって、"類似度"によってオクターブを探し当てると
"類似度"が一番高くなるところが周波数約2倍になります。こうやって決めたオクターブを
「心理的オクターブ」
と名づけます。(引用符付きの"類似度"は語彙が適当でないかもしれないからです。次に"類似度"が高いのはドとソです、確か。)
すると、心理的オクターブは物理的オクターブよりも3%(以下)くらい広いという結果が出るそうです。
どういう意味かちょっと仮想的な例で説明してみます。
バイオリンで旋律を引いていて、ある音(例えばラ=442Hz)から一オクターブ上の次の音(例えばラ'=884Hz)を弾くことがあったとします。自分のように、耳にも自信がないし指板の押さえる位置もあやふやという人は、チューナーの数字をにらみながら弾いたりします。で、884Hzという数字になるように弾いたとします。ところが「あれ、ちょっと低いかな、もうちょっと高く弾いた方がきれいなんじゃないか?」と思うということです。
3%といったら結構大きくて910.52Hzです。ラ'の上のシ'=994Hz(ピタゴラス)、ラ'♯=944Hzなので、ラ'とラ'♯の間ぐらいを弾いた時に、下のラと"類似"していると聞こえるということでしょう。
人は442Hzから910.52Hzまでを一オクターブと感じ、それは確かに442Hzから884Hzよりも広いのです。(注:ここの数字は仮想的なもので、正しくはないと思います)
そういえばこういうことがあったような気もしますが、なにぶんまだうまく弾けてる自信がないので自分で確かめることができません。
このことは京都市立芸術大学の大串 健吾さんが研究されているようで、引用は以下です。
「音の高さに関する生理・心理学と楽器のチューニング」(日本音響学会誌59巻3号2003年)p.153-p158
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jasj/59/3/59_KJ00001449008/_pdf/-char/ja
他にも似たような文献がいろいろあるようですがここでは略。
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もう少し考察していきます。
上の現象は「純音」を聴いた時の話のようです。
一方で、ある音と、その周波数が厳密に2倍の音とが「共鳴」現象を起こすのは間違いないことでしょう。これは複数の音が空気を振動させ空気の振動が共鳴するからです。空気中で共鳴が最も大きくおこる音のペアという意味ではこれは(ぼぼ)厳密に物理オクターブ(周波数2倍)だとおもいます。ですからステージから出た二つの純音が空気中で共鳴したものを観客が聴く場合は、物理オクターブに合わせた時に観客は共鳴音を聞くことができます。ですから共鳴現象で観客がオクターブを認識する場合は3%のずれはないでしょう。
一方二つの純音を聞いた時、人の耳、そして脳へ伝わる過程で、高い方の音の周波数が低い方へ大きくずれてしまうから、オクターブ伸長現象がおきるのでしょう。周波数が高くなるほどこのずれは大きいそうです。これは上の文献などをざっと読むと、人間の耳や脳が、高くなればなるほど音を拾うのがおっつかなくなってしまってもととは異なった周波数が脳で再現されてしまっているということのようです。
アナロジーとしては、ネットが遅かったりPCの性能が低い時に動画や音楽を聴いていると、バッファやメモリが足りなくなったりして、音が途切れたり場合によってはスローモーションになってしまったりすることがあると思います。こういうことが人の中でも起きていて、つまり処理能力を超えてしまうとこういうことが起きるということなんでしょう。
このあたりはななめよみで推測を交えて書いてるので間違っている可能性があるので話半分でおねがいします。
仮に、「外から来た音と人体とのあいだの”共鳴”によって人は音を知覚する」と言ってもいいとして話をすすめます。
そうすれば音を聴く場合にも
1.バイオリンの重音や、他の人の楽器との純音のペア、が空気中を伝わる過程で共鳴したあとで、共鳴したものが人に伝わる。
のか、
2.純音一つが人体に入ってから人体と"共鳴"する。
のかという違いがあります。「どこで共鳴が起こるか」によってオクターブがかわってくるということになります。
しかしこうなってくるとますます音率をどう考えるかっていうのは一筋縄でいかなくなってきます。
「どうして人は和音をきれいだと感じるのか」という出発点の疑問も「御和算で願いましては…」というかんじになってきました。。今後どうしようか。とりあえずもっとバイオリンがうまくなったら何か思いつくかも。。
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最後に上の文献のまとめを引用しておきます。
「音楽の現場の中で日常的に生じる,ピッコロの音はチューナで合わせてもオーケストラの中でピッチが狂って聞こえるという問題,旋律中の1オクターブの跳躍の演奏の場合にはしばしばそれ以上広い音程で演奏されるという問題,ピアノの高い方の2オクターブの音域は正確な平均律よりも高いピッチで調律されている問題,また聴覚心理実験データとして知られるオクターブ伸張現象は,管楽器や声楽,弦楽器でも生じている現象なので,基本的には次のように統一的に説明できるであろう。
すなわち,聴神経は,音響波形の周期をパルス間隔という形で伝送しているが,周波数が高くなるに従って,絶対及び相対不応期のために,パルス間隔が広くなっていくのである。すなわち,元々音響波形の周期として伝送される筈の時間情報は,聴神経のレベルで修正されて伝送されているのである」