江戸の頃さる大名家の正室が臨終のとこに在りました。


殿には何人かの側室がいたんですがその中で一番寵愛の深い『雪』を枕辺に呼ぶように願います。


雪が正室の枕辺に寄ると、「雪や、そなたは、わらわの後、殿にお仕えしこの屋敷をまもっておくれ、そして、最期にわらわに庭にある桜の花を視させておくれ・・」と哀願します。


殿からの命もあって雪は打掛を脱ぎすっかり軽くなった正室を背に負って桜の木の元に行きます。


正室は末期の願いが叶った事に喜びます。ひとしきる花びらを弱々しく眺め・・・やがて・・・・
























『わらわが見たかったのは桜の花では無い!!おまえの無様をさらした姿の恥桜よ!!!』


と、やにはに、雪の着物のあわせを開き二つの乳房を掴んだまま正室はこと切れます。


雪の乳房にがっしりと食い込んだ正室の手はどうしても離す事が出来ず、正室の遺体はくい込んだ両手首を切り取り、埋葬されます。



雪の乳房に残った正室の手は毎夜のごとく丑の刻から寅の刻まで、雪を苛みました。



思い余った雪は大名家を出て尼僧となり正室の鎮魂の為、行脚に出たとのことですが、以降の行方は分かっていません。



この話は旅の途中に雪が立ち寄った宿で、雪自身が話し、干からびたままほとんど二つの乳房に埋まりこんだ手を一度だけ他人に見せたとのことで伝わっています。




女はどちらかっていうと女に嫉妬するんですね・・・・・。



ハーン、奇譚より抜粋




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