消せない | 赤い糸、絡ませて。

消せない


仕事中のこと。


ふと、事務所の監視カメラ越しに見えた背格好



それが、懐かしい人にとても似ていた。



あまりにもそれがそっくりだったから、

目にした瞬間、

心臓が鷲掴みにされた感覚がした。



まさか、まさか、あの人なんだろうか。



早鐘を打つ鼓動と、思考が鈍っていくのを感じながら

わたしはモニタに釘付けになった。



あの頃、彼が「よく行く」と言っていた場所。

今のわたしは、その場所に関係する仕事に就いている。

よく似たその人影を見た瞬間、

そんなことを唐突に思い出してしまって。


それが、あの人であるわけがない。

そう思いながらも、やっぱり気にせずには居られず。

後でこっそり確認してみた。



当然のことながら、全くの別人だった。


ほっとした。




がっかりした。



彼のような背格好の人はいくらでも居る。

そんな人を視界の隅に捉えては、その度に同じ事を思う。



わたしはいつまで、あの人を引きずる気でいるんだろう。

もうすぐ二年経つ。


あの頃から、わたしは変わった。

自分を愛してくれる人と、やっと出会えた。


だから、

自分を通り過ぎ、去って行く人に縋る自分はもういない。


いないのだから。



消えてくださいと思っても、きっとそれは無理。

どんな始まりだろうが、どんな結末だろうが。

この先ずっと、消せやしない。


それならば、

せめて心の奥底で、静かに眠っていて欲しい。




彼の記憶が目を覚ます度に、足元に雫が落ちるのです。


この感情は、一体何だろう。