好きな本に山田詠美さんの「ラビット病」
というのがある。
好きでずっと一緒にいると
感じかたも考え方も似てきて離れられなくなるのだ。

20代後半、自分の意思でそんな人を手放した。
身が引きちぎられるようだった。
相手が泣いているのに自分が泣いているようだった。
何も食べなくなりがっくり肩を落としている姿が目に焼き付いて離れない。

それから5年後、そういう風になるだろう人にあっけなくふられた。
何をしても何も見てもただ泣いていた。
5年前のがっくりしていたあの人と同じ姿になった。
何も食べられなくなり、眠れなくなり、涙を流す。
人を好きになるからこんなことになるのだ。
己の愚かさを思い知った。
それから世界が白黒になった。

誰かを好きになっても、自分を明け渡すのはやめよう。

30代になって沢山の人が私の上に色を落としていった。
白黒からセピア、目まぐるしく原色。
沢山の色に翻弄され流され流れていった。
まるで10代のような浅い付き合いを繰り返す。
疲れて、それでも悪足掻きする悪夢のような日々。

戻ってきて欲しい人を思い浮かべていた。
感じかたも考え方も違うけれど
頑なだった私をゆるませてくれる人だった。

何もいらないから、こんな私でも一緒にいてくれるといいな。