「小麦色のマーメイド」は1982年、呉田軽穂名義での松田聖子さんへの提供曲。
(呉田軽穂はユーミンの他アーティストへの楽曲提供時のペンネームで、グレタガルボをもじったものだそう)
そして、「シンデレラエクスプレス」は1985年、アルバム「DA.DI.DA」に収録されています。
さて、この2曲の中に「うーん、しびれる!」というセブンス使いが存在します。
みなさん、きっとその部分ではきっと無意識にちょっとせつなくなったりしているかも!
ということでそのセブンス使いについて本日説明しようと思います。
まずは「小麦色のマーメイド」のこの部分。
歌詞「あなたをつかまえて泳ぐの」から「私、裸足のマーメイド」に入る部分です。
コードの響きがわかりやすいように少し和音を分散し、説明も加えながら。
さて、この問題のE♭7なんですけど、これが「セカンダリードミナント」です。
はて、セカンダリードミナントとはなんぞや。
下の表をご覧ください。
上の段の「ダイアトニックコード」については以前お話ししました。
その調(この表ではハ長調)の音階に和音を積み上げたものです。
そこに一つG7というセブンスがありますが、これはダイアトニックコードの範囲内の唯一の
セブンスです。
そして、下の段、その音階(ここではハ長調)のドレミファソラシドですべてセブンスにしたもの。
C7,D7,E7,F7~と並びます。このセブンスたちをセカンダリードミナントと呼びます。
そのセブンスひとつひとつを五度下に解決させていきます。
図では色ペンで結んでみました。
C7はFM7へ、D7はG7へと解決します。
この解決、それぞれに異なった性格の色彩があります。
本日のテーマのⅠ7-Ⅳ
ちょっとブルーな、そしてほんのりさっぱり系の香水をふりまいたような、
上品な響きです。
このⅠ7-Ⅳのセカンダリードミナントからの解決、
ユーミン作品ではけっこう頻出します。
いつか触れようと思っていますが、
ユーミン作品にはⅣの和音そのものが多く、
Ⅳの和音は理論上Ⅱm7でも代用できるのですが、
ユーミンはことごとくⅣを選びます。
そのⅣが多い以上、その前にセカンダリードミナントⅠ7をつければこの進行が成立するので、
当然多くなります。
「緑の町に舞い降りて」「消息」でもなかなかナイスな使いかたをしています。
「ユーミンとセブンス」の最初の回でも触れましたが、
この進行はバロック音楽から存在し、フランスバロックではこれでもか、これでもか、
といった具合に現れます。
さて、このⅠ7-Ⅳの進行、ユーミン作品ではさらに発展を遂げます。
Ⅰ7をⅤm7-Ⅰ7に分割するのです。
Ⅴ7はⅡm7-Ⅴ7というふうに理論上セブンスは分割可能。
(こちらについては各セブンスごとに少しずつ説明していきますね)
今回は分割するとどうなるか、
「シンデレラエクスプレス」の例で説明します。
歌詞「とけてついてゆきたい」部分のGm7-C7-Fm7(Ⅴm7-Ⅰ7-ⅣM7)
が問題の箇所です。
曲を知ってればおーっ、ここいいよね、と来る場所ですね。
これ、分割してるからこそぐっと来るんだと思うんですよ。
分割あり、と分割なしではだいぶ違うので聴き比べてみましょう。
ね、ね、違うでしょ!!!
上品な水色に少し影がさしますね。
ここで終わりかと思いきや歌詞「何もいわなくていい」部分でもまた使われていて
ノックアウト!です。
説明を入れながら和音を分散してら弾いてみました。時間制限があるため、Aメロ後半からです。
さてさて恒例の今回上げたⅠ7-Ⅳシリーズの全調コード表も載せておきましょう。
こうなります。
「シンデレラエクスプレス」はほかにもコード進行の点で突っ込みどころ満載なので、
今後も例に挙げていきたいと思っています。
コード進行の勉強なので、コード表のみを見がちですが、
ユーミン作品は特にメロディがコード構成音の重要な役割を果たしている、それどころか
メロディがテンションノートで浮遊していてさらに曲の味わいに大きな役割を果たすので、
メロディも込みで弾いてみてください。
弾き語りでもいいですね。
メロディも念頭に入れないとユーミン作品の研究は成り立たないと思います。
さて、次回はⅢ7-Ⅵm7
「Hello my friennd」あたりを例にしながら説明したいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
ビバーチェピアノ教室
(クラッシック幼児~シニア、ポピュラーピアノ、コード理論)
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尾崎陽子
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*11月より「かんたんコード理論口座」を開講する予定です。
詳細が決まり次第、またこちらでお知らせします。