2024年1/21【698】very good 難易度3

 9人のうち、死んでもいいのは、死ぬべきなのは、誰なのか。

 「週刊文春ミステリーベスト10」&「MRC大賞2022」堂々ダブル受賞!
 という、なんだかよくわからないけれどスゴそうな本書を図書館で半年待って読んでみた。

予備知識ゼロ。
 賞のタイトルからわかるように(それにしてもいろんな賞があるもんだなぁ)、本書はミステリー小説である。 

 ある場所に閉じ込められました。 そこで殺人が起きました。
 続いて犠牲者が出ました。ホームズ役が推理します。犯人は誰だ?&どうやって脱出するのか。 

 よくあるパターンです。
アリバイがどーのこーの、密空間の平面図も載ってます。正直、個人的にはあまり好きではないジャンルです(平面図系は脳内イメージが面倒くさい)。 
 だって「あるある」なんだもん。 またこのパターンかと。 

お決まりの、外部との連絡が取れない状況ってのも「どーせ最後には全員無事に脱出できるんでしょ」と冷めた目で読んでしまう私は嫌な読者である(いやむしろ良い読者?)。 

 ところが本書は、そんな定番パターンに加えて「ある人を助けるために他の人を犠牲にするのは許されるか?」で有名な『トロッコ問題』が絡んでくる。

 犯人は誰か、誰が犠牲になるのか、犠牲となるのは犯人であるべきか、命の優先順位とは、重さとは、何なのか。

 答えの出ない倫理的問題と密空間パニック、そして迫り来るタイムリミット…!
私は想像力が乏しいのでそんなでもなかったが、なかなか息苦しくなる展開である。

 とは言ってもミステリー的にはいつもの定番パターン。
 「で?どうなるの?」と軽く上から目線で惰性的に読みすすめる。 

 残りのページも少なくなった終盤にさしかかるとタイムリミットさながら、さすがに「もしこの状況に陥ったら私ならどうするだろう」と答えの出ないジレンマに焦りを覚えたが…



 うわぁーーー、キタわーーー。。。

 前に読んだ叙述ミステリーと違い、純粋な王道ミステリー(?)だった。 

 だけど、

うわーー、うわーーーーーー
 そうきたか、うわーーーーー 


 読了後、いつも儀式としてアマゾンで他人様のレビューをチェック。
 いろんな人がおりますね。 
そして皆、作品への批判が厳しい厳しい。それだけミステリー愛に溢れているってことなのだろう。 

 心理描写が甘いだの、動機が弱いだの。
 私もよく「設定にツッコミ満載」なんて毒づいているけれど。 

 そんなことすっ飛ばして、

 うわーーーーーーー

だった。

 ネタバレにならないよう書評するのは難しいのだが、トリック(?)や話自体は複雑なことなくすんなり状況が頭に入りグロい描写もないので、サスペンス映画を一本観たようにあっという間に読了。 

 今まで読んできたミステリーは
「あー犯人はアナタだったのね、へぇ、そうやって殺してたのね、お疲れさま」
で終了するパターンが多かったが、最近のミステリーはこういうプラスアルファで考えさせられる系の話が多いように思うのは、たまたま選んだ本がそうなだけなのだろうか。


 とにかく

うわーーーーーー


な作品。