2023年9/5【666】very good!!難易度5

冷戦時代、イギリスに送り込まれたソ連人スパイ(KGB)がこっそり寝返って今度はイギリスのスパイ(IM6管理下)としてソ連をこっそりスパイする…の、なにがかんだかわからない衝撃の二重スパイ実話!


先日うっかり映画【ミッションインポッシブル】シリーズを観てしまい、すっかりスパイにハマってしまった私である。

映画を観ながら
「どーせこんなの、映画の中の話でしょー?」
と思いきや!

スパイ、というか1970年代前後のロシアが…想像を超える映画以上のヤバさなのである(今も?いや、どこの国も?)!


へぇ、こっそり『消される』のって日常茶飯事なんだ…
へぇ、『盗聴』なんていつもと変わらぬ日常業務なんだ…(これについては今では全スマホがチェックされているって話だけども)。



本書の主人公であり『冷戦史上最大の二重スパイ』と言われたゴルジエフスキーの半生。

彼はいかにして二重スパイとなったのか、そしてその発覚からの命を賭したソ連脱出劇は映画さながら(むしろ映画のモデル)、今から半世紀前の防諜合戦がアナログすぎてて面白すぎ、手に汗にぎる展開にはハラハラ止まらず。
スパイ、大変だなぁ(笑)
こらこら、笑っている場合じゃないですよぉ!


そんなスパイ事情や防諜機関同士(KGB・MI5・MI6・CIA)の仁義なき戦いは言わずもがな、私が本書で一番興味をそそられたのが『スパイは一体何を考えているのか』ということである。


スパイといえば、エリートで冷静沈着、頭は良く社交術に長け自らを犠牲にしてまでインポッシブルなミッションに果敢に挑む、なんて完璧人間を思い描いてしまうが(映画の観すぎ)、実はそうとも限らない。

事なかれ主義で無知で傲慢で汚職まみれで怠け者でサボってばかり、お金に報酬、高級外車と昇進しか目になくゴマすることしか考えていない。
上司の嫌みに耐え間違いを指摘できず、生意気な使えない部下と働く。
なんだ、普通のサラリーマンと一緒じゃん。


『祖国のために』といいつつ実は権威に対する恐怖と服従。
もちろん自分がスパイであることは口外禁止、家族にも親友にも同僚にも妻にも愛人にも嘘をつき続けなければいけない。

愛するがゆえに誰にも打ち明けられない真実。
いったいどれだけの苦しみだろう。


ゴルジエフスキーの二重スパイ活動はソ連邦崩壊のきっかけの一つともなり、他にも核戦争回避など様々な世界的トップシークレット事項の裏には彼の活躍があった。
現在は亡命先のイギリスで手厚く保護されながら隠居生活を送っているというが。

はたして、そんな彼は幸せだったのだろうか?
自らが望んだ世界を彼は手に入れることができたのだろうか?


世界平和のために尽くし成果を残した彼だけれども、本当の意味で心から信頼できる人間関係を築くことができなかった。
なんと残酷なことなのだろう。

スパイあるあるなんだろうけれど、とにかく自分以外の『全て』を疑わなければいけない。気が狂ってしまう。


本書によれば多くの『傷ついている者、劣等感に苛まれている者、挫折した者などが、影響力のある強力な組織に所属して仲間意識、周囲にいる裕福な者たちに対する優越感、そしてもう1つの秘密の人生を味わうために』スパイになるという。

誰かから必要とされ、コミュニティの一員となり、報いられ、信頼され、大切にされていると感じること。

それはスパイに限らず人間であれば誰しもが感じている、普遍的欲求なのである。


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