2023年8/10【661】Excellent!難易度3

オレの名前はサンソン。
職業、一応公務員。
最近マリー・アントワネット王妃様の金遣いが荒すぎて我が国フランスは破綻寸前、失業者も多いがオレは親父のコネでなんとか今の仕事にあり付けた。
と言っても今は下っ端のギロチン係。
今日も首を切って切って切りまくり、出世コースに乗るのがオレの夢。
待っていろよ悪人ども!

ハイハイお次は誰ですか?
どなたのお首を切りましょう?

え?!
え~~っっ!!!!
ルイ16世?!
((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
オ、オ、オレが国王を首をはねるのぉ?!
無理ーーーッッッ!!!

…的な話を想像して読んでみたらまるっきり違った。。


まず。
死刑執行人とは世襲制である。
国王の委任により死刑を執行、年金的なものは保証されていて副業で医者も兼ねているため貴族並の贅沢はできるものの、身分の上では最低ランク。
社会から完全に隔離されいかなる援助も得られない。

かといって処刑人という職を恥じること即ちご先祖様に対する裏切り行為となる。
世間から蔑まれ後ろゆび指されようとも、伝統と誇りのある立派な職業なのだ。

そして、人の首をはねるということ。

これは社会的にも技術的にも体力的にも精神的にも想像を超えるほどに重く責任があり、また文字通り命懸けの行為となる。
そうだったのか…


死刑執行人の立場からみる今と変わらぬ倫理観や当時のフランス、職業に対するプライドと偏見、昨今でも問題になっている死刑制度、いつの時代にも根強く蔓延る身分制度など、実に、実に多種多様な問題を孕んでいて、ただただ唸るしかなかった。


ルイ16世といえばマリー・アントワネットの影に隠れた愚鈍な王というイメージしかなかったが本書を読む限りでは大きくイメージを覆された。

たまたまこの時代に国王として生まれたがために処刑される運命となった彼、不憫である。
やりたい放題やっていたルイ14世よりよほど堅実ではないか。

そして、敬愛して止まなかったルイ16世の首をはねざるを得ない立場にあった死刑執行人サンソン。
胸を抉られる気持ちであっただろう。


片や王家に生まれたルイと、片や処刑人の家に生まれたサンソン。
社会の頂点と底辺に生まれた二人は生涯において三度だけ顔を合わせることになるのだが、その出会いはなかなかにドラマチックであった。
三度目の出会いは、言わずもがなの処刑台の上である。


死を不浄のものとし他人事ととらえ、ときには死に直結する残虐極まりない行為すらも娯楽にしてしまう人間。

敵を殺した兵士は称えられ、処刑台で罪人を殺した処刑執行人は恥辱でおおわれ忌み嫌られる。

人を殺めるとは、一体どういうことなのだろう。


当時の処刑の様子やギロチンの発明エピソード(簡単に人を殺せるっていうのも皮肉なものなのねぇ)、フランス革命の裏歴史が充分に読みごたえがあり、そして何より、人の命の重みについて考えさせられた一冊。

お盆だしね。関係ないか。

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