2023年7/11【654】very good 難易度3

辺境ライター高野秀行氏にして「変人」と言わしめた内澤旬子氏が、この度ストーカー被害に見舞われたとのこと。
文筆家らしくきっと面白可笑しく体験談が書いてあるんだろうなぁと軽い気持ちで読んでみたが。

いやいやいやいや、めっちゃくちゃ酷いでしょストーカー被害って!!

そもそも内澤氏が被った害は、待ち伏せされたり暴力を振るわれたりする類のものではなく、たかが(と言ってしまう他人事な自分が情けない)電話やメッセンジャーの大量攻撃程度である。

そして裁判。
「名誉毀損で訴えてやる!」なんて軽々しく言うけれど。
いやいやいやいや、裁判、めっっちゃくちゃ大変。

たかがこの程度(ごめんなさい)の被害で、ここまで面倒煩雑な手続きを踏まねばならないのか。
誤認逮捕や冤罪にならないよう細心の注意が払われているのはわかるけど。
示談で終わらせたくなるのもよくわかる。
だとしても、唖然呆然ポカーンである。


結局のところ警察だってお役所仕事、部署は細かく分かれているし管轄外は知りませんだし横の連結は取れていない。
弁護士だってカウンセラーではないし人間だもの、相性だってもちろんある。
守ってくれるはずの彼らがいくらプロ集団とはいえ、被害者の気持ちなんて当事者でないと絶対にわかりっこない。

加害者とのLINEの文章が怖がってみえないだとか(はぁ???)、名誉毀損にあたる卑猥なLINEの文章をリストアップせよとか(そんなの二度と見たくないっての!)、国の制度だから仕方がないとか…
被害者のメンタルケアなど何一つ考えられていない。
警察や弁護士はカウンセラーじゃないもんね。。


そしてストーカー被害とは、警察に駆け込めば解決する、そんな単純な話で済むものではない。
加害者が逮捕された次に恐れることは、加害者からの復讐なのである。


そもそも。

被害者が本当に望んでいることは加害者の有罪判決ーー国家による法を犯したことに対しての償い行為ーーなのではなく、ただ罪を認めて一度でいいから心から謝罪してほしい、そしてもう金輪際関わらないで、それだけなのだ。


法律が追い付いていない現状と複雑化するSNS事情。
特に今回は舞台が小豆島という過疎地兼観光地なこともあり、個人情報筒抜けなの島民との距離感も問題をややこしくする。

加えて著者の場合は一応『公人』という立場とされ、個人情報が晒されているにも関わらず巨大掲示板の削除対象外外されたりと…

「はぁ??????」
本文中、何度この言葉が出てきただろうか。

とにかく、精神的にも金銭的にも時間的にも、生活がブチ壊しなのである。


本書も後半になってくると話が淡々とし専門的な話が多くなってくる。
それはつまり、警察や弁護士とのやり取りそのままのことなのだ。

聞き慣れない専門用語に複雑な適用条件。
不勉強ではお話にならない。
かと言って、ちょっと…頭に入らないって…ただでさえストーカーされて心がおかしくなっているのに。


今まで一体どれだけの尊い命がストーカーによって奪われてきただろうか。
そんな彼女(彼)たちの犠牲の上に成り立っているのが、ストーカー規制法なのだ。

人間関係が稀薄し他人との距離感が掴みにくくある今日、いつ誰が加害者になっても被害者になってもおかしくない。

ストーカー被害者本人の手記はなかなかないそうなので(最悪の場合は命を奪われてるもんね…)本書は貴重な体験談と言えるのではないだろうか。

ただし。
Amazonの本書レビューですら、すでにセカンドレイプになってるよ。。


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