2023年6/22【649】good 難易度3

人を信頼するとはどういうことだろう。

では逆に騙されるということは、つまり信用信頼していた相手から裏切られるということである。
騙すほうも悪いけれど、騙されるほうも悪いのか?

一向に撲滅する気配もなくむしろ年々巧妙になってくる特殊詐欺事件。
騙す人・騙される人の心理が知りたくて…
いやいや、ただ「女詐欺師ってなんだかカッコいい」という理由だけで読んでみた本書である。


そもそも、なぜ私(達)は女詐欺師を「なんだかカッコいい」と思ってしまうのだろう。
騙された当事者本人ですらも彼女達を称賛することが少なくないというではないか。

騙されていない私(達)からみれば、『誰かが騙された』というのはたぶん、『人の不幸は蜜の味』かつ『騙された人はマヌケ=騙されていない私はマヌケではない』という自己満足感を味わいたいだけなのではないだろうか。

騙されたのが富裕層やセレブたった場合、やはりどこか少なからず正直言って少しばかりいい気持ちがしないでもないだろうし(←回りくどい)、とりわけ詐欺師が女で騙されたのが男性だった場合、彼らは自らの失態を認めるよりも「騙されはしたがそれでもあの女は素晴らしかった」と相手を称える方が、これまた自己正当化に繋がるのではないだろうか。


人は誰しも多かれ少なかれこう思っているはずだ。
人から特別な存在だと思われたい、皆から一目置かれたいと(え、私だけ?)。
大事なのは名声と(なんたかんだで)お金。
本書に登場する女詐欺師たちは極端にその思いが強すぎる。

自分には特別な運命が用意されていると信じ、逮捕されようが検挙されようが何があろうと絶対に夢は諦めない。

ブランド品の鎧を身に纏い(結婚相手ももちろんただのブランド品)、「カーネギーの娘だ」と堂々と偽る度胸を持ち(カーネギー存命中にも関わらず)、死者もあの世も地獄も恐れず(そんなもの存在しなくてよっ!)、「偉大な男など存外せず、ほとんどの男は間抜け」だと悟り(数えきれない男と寝た結果ね)、ただただ自分自身に対してのみ心から忠実になる。

そのしぶとさ図太さはある意味で確かに称賛に値する。
ネバーネバーネバーギブアップ!
トライ!トライ!トライ!
なのである。


結局のところ、全てはパフォーマンス、演技なのだ。
一分の隙も与えないほど堂々と嘘をつき、ときには失神し同情を誘う。
『見せ方』こそが『事実』より遥かに大事。
『信用』に繋がるのは『見せ方』だけ。
彼女たちはそれを十分に承知している。
でないと、一体どうして19歳の貧しい黒人の娘が有名人たちをまんまと騙すことができようか?


本書に登場した女詐欺師たちは『世界を~』というよりは『ある時代のある国で一世を風靡し世間を賑わせた女詐欺事件』といった程度ではあったが、内容が内容なだけにそれでもなかなか面白かった。

詐欺師だけでなく、たぶん皆がこう思っている。

誰かを、何かを、信じたい。
いい夢を見ていたい。
楽して他人にすがっていたい。
楽して名声とお金が欲しい。
魅力を武器に誰かを操ってみたい。

それらを全て叶えてくれるのが、女詐欺師たちなのである。


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