11/21【590】good 難易度4

無実の罪でアラバマ州死刑囚監房に30年近く監禁されていたアンソニー・レイ・ヒントン氏、衝撃の半生。


「ショーシャンクに似てる」と思ったのが読了後の率直な感想。
スティーブン・キング原作映画【ショーシャンクの空に】。
脱獄こそしないものの、かなり似た話ではないか。


なんて感想を抱く私はきっと想像力が足りないんだと思う。
たぶん、映画以上の悲惨さ。
なにしろあちらはフィクションで、こちらは実話。
ショーシャンクには希望があったが、ヒントン氏の場合は絶望の連続だ。


28年間、冤罪で死刑囚監房に監禁。
ただ黒人というだけで、ただ弁護士を雇うお金がないというだけで。
こんな州ぐるみの非人道的人種差別が、つい40年前まで(10年前?今も?)自由の国アメリカで平然と行われていた(いる?)という事実には少なからずショックを受けた。


投獄当初は心を固く閉ざしていたものの、やがて自分の意識を変え、相手を憎むのではなく赦すことの大切さに気付くヒントン氏。
彼たった一人の小さな気持ちの変化は、やがて監房内にも広がり他の死刑囚たちの心をも変えていく。


憎しみからは何も生まれない。
過去も他人も変えられないけれど、自分の心だけは変えられる。

いくら精神的身体的暴力を受けようが、たとえ未来と自由を奪われようが、魂と人間性と信念と、そしてユーモラスは絶対に奪われない。


強いと思った。
30年間の監禁生活はとても一冊の本では言い表せ切れないだろう。
「強い」の一言で済まされるものでもない。

そんなヒントン氏を支えていたものは、愛する母と無二の親友。
全員が氏を殺人犯と決めつけるなかで、彼らだけが氏をただ無条件に信じてくれた。


監禁されている死刑囚には、親からの愛を得られずに育った者、親からの歪んだ愛情を受けた者、そして知的に障害があった者が多かったという(黒人が多かったのは言うまでもない)。

そしてヒントン氏同様、明らかな無実にもかかわらず、弁護士裁判官らの出世金銭目的のために不当に有罪とされた末に電気椅子に座らせられた者も少なくないという。


『死刑』という制度について、凶悪殺人犯と『家族』として過ごした氏だからこそ言える意見。
一理あるが…難しい問題である。


信じるものがあるということ。
氏の場合、それは『神』であった。
何かにすがることは良くも悪くも心の拠り所になるのだと改めて感じた。

某宗教団体のアレコレが取り沙汰されている今、これもなかなか難しく考えさせられた。


苦労の末、冤罪が証明されやっと娑婆に戻れた氏ではあったが、浦島太郎よろしく世の中の変化についていけない最後の章には笑ってしまった。
氏が普通の生活を普通に送れるようになるまでには、投獄されていた期間と同じかそれ以上の年月が必要なのかもしれない。


最後に、本書もまた、タイトルがおかしいと思う。

【奇妙な死刑囚】確かに平均的死刑囚からすれば希望を持ち続ける彼の姿は特異なのかもしれないけれど。奇妙、かなぁ?

原題は
【THE SUN DOES SHINE】
「陽は輝く」。
これは氏が実に30年目ぶりに刑務所の外に出たときに発した第一声である。


『すべては選択ひとつで変わるのだ』

どんなときにも希望を持ち続けていたい。

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