2022年7/21【559・560】good 難易度2
珍論文コレクターでもあるお笑い芸人・サンキュータツオ氏選りすぐりの『ヘンな論文』紹介本。
ノーベル賞がある。
『人々を笑わせ、そして考えさせてくれる』イグノーベル賞というものもある。
本書で紹介されている論文もイグノーベル賞…いや~それにしてはあまりにも個人的且つくだらなすぎる内容が多いかな。
浮気男の頭の中、猫の癒し効果、元近鉄ファンの生態、縄文時代の栗のサイズ、かぐや姫の爺さんは何歳か…
そんなの、
どうでもいいーー(叫び)!
のだけれども。
どれもこれも、いたって大真面目でそれはそれは立派な学術論文なのである。
そしてその研究結果から導き出される考察が、深い。
サンキュータツオ氏のまとめも、上手い。
学ぶということ。
それは『今までわからなかったことを知りたい』という純粋な欲求。
実験とは。
『こうではない』という可能性の排除こそに膨大な時間と労力がかかるもの。
そして学術研究とは。
古今東西時空を超えて「同じような疑問を持った人が過去にもいたんだ!」という感動と共感を抱くことであり、過去の研究者と対話することでもあり、「もう先に論文になってたよ…」とガッカリすることでもある。
ううーん、深い!
本書でも度々サンキュータツオ氏が述べているが、とにかく「こんなくだらないことに人生の貴重な時間を全力でかけている人がいるんだ」という驚き、その一言である。
もしかすると単なる卒業論文にすぎないのかもしれない。
だが大半は、利益や義務感からではなく、ただ純粋な『知への探求心』から書かれているように思う。
でもさ~
『片手袋』?だから何なの?
『鍼灸』が漫画にどれだけ出てくるか調べて何になるの?
『床山』にアンケートを取って、だからどうした?
なんだけども、とにかくいちいち学術的に大真面目に回りくどく漢字多めに専門用語を使って『論文』にされているところが面白い。
『追いかけてくるもの論文』では『百キロババア、走るばあさん、走るおばあさん、ジャンプばば、ジャンピング婆、コツコツばあさん』などとエクセルで表にまとめてあって思わず吹き出してしまった。
『「坊っちゃん」と瀬戸内航路論文』では、あまりにも細かすぎる執念(疑問?)と信じられない行動力、そして執筆者の熱い思いに、思わず感動すら覚えてしまった。
世の中にはヘンな人がいるもんだなぁ。
というか。
変な人、変な論文だなんて。
それは『私』の価値観に過ぎないのであって、やってる本人から言わせれば大きなお世話だろう。
アインシュタインが光について考えました。
だからどうした?
ではないはずだ。
おっぱいの揺れとブラのずれについて深く考察しました。
だからどうした?
でなく、そこから私達の生活を豊かにそして快適になる新商品が生まれてくるのである。
今の時代、SNSやブログなんかでどれだけでも情報発信ができるのに。
学会に所属し、査定を通り、最終的には極々一部の人の目にしか触れる機会のない『論文』。
本書で取り上げてもらえて日の目を浴びて、本当によかったね!と言ってあげたい。
そしてここでも思う。
「一体何のためにこんなことしてるんだろう…」
「あの苦労は一体なんだったんだろう…」
「こんなのただの自己満足じゃん!」
なんてよく落ち込む私ではあるが、
「やりたいなら、やればいい!」
「人生に無駄なことなどひとつもない!」
そうやって背中を押された気分になれた良書であった。
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