2022年5/13【540】very good 難易度2

マリーアントワネットが好きである。
あのゴージャス極まりない生活は、ある種の憧れだ。

フランス王妃として頂点に君臨し続け
「パンがないならケーキをお食べっ!」
と言ってのける傍若無人ぶり。
悪女すぎる!面白い!

…と、昔は思っていた。


マリーアントワネットの衣装部屋。
彼女が着ていた当時最高級の贅を尽くした豪華絢爛きらびやかな衣装の数々。

そういうのを期待して読んだ本だったがそうではなく、彼女の意外な一面や当時の服飾やヴェルサイユ事情なんかを『衣装』を通して見てみよう、というなかなか奥の深い本であった。


特に、母マリア・テレジアから彼女に送られてくる多くのダメ出しの手紙や、服の図面、衣装目録帳、アントワネットが最期に着ていた汚れた下着、当時の漂白のやり方(想像を絶する面倒くささ!)、朝起きてからのアントワネットのルーティンなど、面白く興味深い話と写真が満載。
なかなかマニアックな内容である。


歴史というものは(現代の報道やニュースだってそうだけれども)、語り手によっていかようにでも印象を操作することができる。

「パンがないなら~」のセリフだって、民衆の生活を知る機会もなかった無知ゆえの素朴な発言だったとか。

生涯に3冊しか本を読まず乗馬に明け暮れ『馬にまたがる』という破廉恥極まりない肖像画を描かせたという逸話も、当時の状況を鑑みればものすごく大胆なことを堂々とやっていたことの裏返し。

巨額の税金を使ってプチトリアノンをつくり、農村ごっこにうつつを抜かしていた話からでさえ、見方を変えれば彼女の悲痛な想いが伝わってきそうではないか。

『美しさや幸せとは宝石や宮殿の中にあるのではなく、自然の壮大さや景色の移り変わりこそが、本当の美しさであり心の安らぎなのだ』と。


彼女が本心でどう感じていたのかは知るよしもない。
だが、『王妃』である彼女の生活のために費やされていた巨額の税金、衣装、それゆえに発展していった『レース』等の国家機密レベルの服飾技術、そしてそこから想像する彼女の『思い』は、王妃としてでなく同じ一人の女性として思いを馳せたとき、とても身近な存在に見えてきたし少し切ない気分になった。


できる光が強ければ強いほど、その後ろにできる影も強くなる。

そんな彼女か時代を超えて愛される理由がわかる気がした。

一つの時代に生きた、一人の女性から生まれた、一つの歴史。
不思議な後読感が残った一冊。


面白かったのが、当時の麗美な靴の上に履く麗美な外履き(オーバーシューズ)、『パタン』の存在。
麗美なパタンの上に履く麗美なパタン、の上に履く麗美なパタン…
無限。


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