2021年 4/25【432】普通 難易度3

以前読んだ小説【倒錯のロンド】の主人公。


のらりくらりと言い訳を続け、何でも人のせいにして自分は一向にペンを取ろうとしない、そんなミステリー作家志望の彼を見て(読んで)いて、せっかちな私は心底イライラした。
「はよ、書けやっ!!」

これはいくらなんでも小説の世界の話だろうと思っていたけれど。
ところがまぁビックリ。
大作家先生方の姿、そのまんまだったのね!

作家に漫画家。
頭の中でゼロから物語を創作し、〆切目指して黙々とペンを進め(最近は少し違うのかもしれないけれど)、報酬を受け取る職業。

湧き出るイメージ、止まらない手。
気が付いたらあっと言う間に数十時間。
…なーんてこっちの勝手な思い込み。

〆切に翻弄された文章ばかりを集めてあるとはいえ、皆さん想像以上に『文章を書く』ことが嫌いで、嫌々仕事をしていて、嘘や言い訳ばかり考えている(笑)!

大作家先生も、夏休み終了間際の小学生も、なんら違わない。
『原稿が遅れている言い訳を考えていて、原稿を書く暇がない』と嘆き、『書けなかったら干される』という恐怖に耐え、書くことが大嫌いなのに書かずにいられない自分の境遇を怨めしく思う。

ほうほうのていで〆切までに脱稿したと思いきや
「〆切を守るなんて小作家のやること。編集部をハラハラさせてこと、大作家なのだ」
と言われる始末。

そんな作家と編集者のリアルな駆け引きを見て思う。

一つの作品が生まれるには、人間同士の心理合戦や相手との信頼関係があってこそ。
『彼』のために、やってあげたい。
『彼』がいたから、書くことができた。

確かに人間関係は面倒なことも多いけれど『原稿というものはどんなに世の中が変わっても、筆者と編集者の心の通いあいから生まれるのだ。』
同様に、きっと人生も。


一方で『〆切は必ず守る』というタイプが存在する。
夏休みの宿題は7月中に終わらせる私も、どちらかと言えばこちらのタイプ。

そしてその方々が揃いも揃って
『〆切を守るのは、私が小心者だから』
と自己分析しているのには納得。

そうです、出来ないヤツだと思われるのが、怖いのです。

じゃ『〆切』なんて無ければいいのか?
それがそうでもないらしい。

『自由という名の不自由』。
『何でもいい』が一番困る。
〆切のお陰で本来以上のパワーが発揮できることもあるし、終了間際になって初めて自分の無意識の深部に到達できることも、ある。


本書を読んで思ったこと。
「できない!できない!」
そうやってテンパっている限り、絶対に出来ない。出来っこない。

現状を変えるためにも、まず事実を冷静に受け止める。足掻かない。
その次に気分転換。ええいままよで流されてみる。
そしたらきっと、それまで見えなかった何かが見えてくる。


悟空が満月を見て巨大化したときだって、作者自身がビックリしてたもんね。
もしあのとき鳥山明が煮詰まっていなかったら…
世界は変わっていたのかも。


紹介されていた80人程の作家のうち、私が知っているのは5人程。
無知のせいで面白さが満喫できなかったことだけが、とっても残念である。


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