2020年 9/28【377】very good 難易度3

弟を殺した彼。
下された判決は、死刑。
でも、死なないで欲しい。


もしも愛する人を誰かに殺されたら。

殺した相手を一生涯恨み続けるだろう。
そして心に深い傷を負い、マスコミや世間からの心ない仕打ち(たとえそれが善意からのものであっても)に耐え、金銭的にも精神的にも身体的にも、ボロボロになる。

加害者を恨み続ける人生。
「何故自分がこんな目に」と苦悩し続ける人生。

殺してやりたい!
死刑にしてやりたい!
確かにそう思うだろう。

だが、加害者が死刑となってこの世からいなくなれば、それで全てが解決するのか。
事件以来壊されてしまった被害者遺族の人生は、元に戻るのか。


月並みな感想だけれども、『犯罪(殺人)』がどれだけ周りの人を不幸にするのかということ、愛されて法に守られるのは『加害者』で、見捨てられるのは『被害者』の方だということを、本書を読んで改めて痛感した。


憎悪の気持ちは、相手ではなく自分を破壊していく。
加害者を赦し、憎しみを忘れなければ、自分の家族までもが壊れていく。

弟を殺された著者の原田さんは言う。

『犯罪に巻き込まれ、崖から落とされた僕たち被害者遺族。
僕が求めているのは、加害者である彼を奈落の底に突き落とすことではなく、僕が崖の上に這い上がることなのです。』


そのために原田さんが悩みもがいて唯一希望を見出だしたこと。
それは、加害者と直接会って話をすることだった。


彼を死刑にしないでくれと言っていることと、彼のしたことを認め赦すこととは、全く別物だ。

幾つもの矛盾する感情を抱え、悩み迷い苦しみながら、自分と、彼と、司法制度に立ち向かう著者。


被害者遺族はどうなるのか、死刑制度とはどういうものなのか。
赦しとは?償いとは?更正とは?
様々な問いを投げ掛けられた。

そして、やっぱり無知はダメだなと。
知らないことで損をすることが多すぎる。


以前の自分にもう戻れないのなら。
もう戻れないのだから。
せめて自分の体験をどこかに繋いでいきたい。
止まっていないで、後ろを振り返ってばかりいないで。
まずは受け止めて、前を向いて歩いていく。

著者である原田さんのその姿に感銘を受けた一冊。


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