2020年 5/23【338】good 難易度1


石を積み重ねて巨大な空間を造ってしまうゴシック建築の最高峰『大聖堂』。
石の天井なんてどうやって作るの!?
何トンもある壁をどうやって支えるの!?


12~14世紀にヨーロッパで発展した大聖堂建築。
携わる専門職は採石・彫刻・石工・大工・鍜冶屋・屋根・ガラス…等々多岐にわたる。

使う道具はノミ・コンパス・このぎり・斧・かんな…そんなものすごく原始的な道具ばかり。
(石工にコンパス…フリーメーソンだフリーメーソン!)


資金不足や技術上の難問題にぶつかり、完成まで数十年~長いもので200年程度かかることも。

それでも構わない。
何世代も受け継がれる、死んでもなを受け継がれる、強い意志。


大聖堂を建てる。
神に感謝するために、神を讃えるために。

末長く街の人々に神のご加護が得られるように。
大切な人が笑顔で、天寿を全うするその日まで幸せに暮らせるように。


我らが生きているうちに完成することなどないことくらい、初めからわかっている。
我らに匹敵する技術者がいなくなると嘆くのではなく、いつか、これから生まれてくる子供たちが、私たちを越えてさらなる高みへと登りつめ、きっと完成させてくれる。

何の心配もいらぬ。
いつでも安心して人生の幕を引けば良いではないか。


大聖堂建築に名を残すのは設計者や司祭等ほんの一部の有力者のみ。

しかしこの巨大な大聖堂の、それを作るための道具を作るための、取るに足らないたった一本の釘がなかったら、それらを作った鍜冶屋がいなかったら、この大聖堂は完成しないのだ。

鍜冶屋と柱…じゃなくて石工(フリーメーソンだよフリーメーソン)、どちらが偉いかではない。
お互いがお互いを必要とし、それぞれの場所で文字通りで命をかけて戦っているのだ。


この時代、大掛かりで精密に測定できる機械があるわけでもなく、簡単な梃子・車輪・水平機とそれまで培ってきたノウハウだけでここまでのものを作りだしたのかと思うと驚くばかり。


石だけで作られた豪華絢爛な建築様式一つ一つにちゃんとした建築工学的意味があるというのに驚かせられた。
それ故の、その当時の技術の最先端がソレだったが故の!この様式なのだ。

これぞ芸術が生まれる奇跡である。

ううーん、大聖堂好きには何とも言えない感慨深い気分になれる一冊であった。


一人一人が全力を尽くしてやりきる。
皆で一つの大きな目標に向かって命をかける。

他人との関わりの中で生きる、たとへそれで悩み苦しむことがあろうとも。
それぞれを必要とし、必要とされながら。

一人でできることなんてほんのこれっぽっち。
だから人は力を合わせて頑張るんだ。

それこそが、古今東西変わらない人間の尊さ美しさなんだな、と思った。


…いつの間にやら違う本の書評?になっている気がしないでもないが。

梅の柄の巾着袋に涙した20巻発売と、完結記念でした。



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