2020年 4/16【329】普通
難易度4


世界最大最高の英語辞典であるオックスフォード英語大辞典『OED』編纂に人生を捧げた、二人の天才の奇想天外な物語。


16~17世紀のイギリス社交界ではカツラや衣装そして『言葉』そのものにさえ、とにかくあらゆるものを華やかで仰々しく飾ることが流行した。

シェイクスピアの戯曲が非常に難解だというのもそういう時代背景があったためであり、さらに当時は『辞書』というものが存在しなかったがゆえに選ぶ言葉がはたして適切なものだったのか、シェイクスピア本人すらも確かめる術がなかったのだ。
(なるほどね~)


少しずつ時代が下り、科学者や物理学者が様々な基準を定義し始める。
そこで文壇の巨匠たちも考えた。
重さや長さや大きさの定義が重要なら、我々イギリス国家の言語だって同じように重要なのではないか?

英語を現代文明世界の共通語にすべく、ひいては『神』つまりキリスト教を世界中に発展させるため、全英単語一つ一つの成り立ち、例文、定義をつくる=『辞書を作る』という途方もない試み。


何百人もの協力者(篤志文献閲覧者)と共に構成される巨大プロジェクト。
ネット全盛の今でさえ、お互いに顔を合わせていてでさえ、全員の意思統一は難しいというのに。

通信手段は手紙のみ、得体の知れない何百人もの有志達との共同作業、そして立ちはだかる何十万もの単語。
A~Bの項目だけでさえ出版されるまで9年間かかっている。


編纂そのものよりも、篤志文献閲覧者との事務処理――

協力者への稀少本郵送作業や、ネコババ等のトラブル処理、一つ一つの質問に一つ一つ手紙で回答したり――

の方が大変・面倒・無意味な時間が掛かりすぎる。
よくまぁこんな偉業をやり遂げたなと感心するしかない。


そんな、貧しい家庭に生まれ並外れた努力によって言語学者となった編纂主幹・マレー博士のもとに現れた謎の協力者・マイナー博士。

20年間文通のみでの共同作業ではあったが、大変有能なマイナー博士にマレー博士はどうしても会って話をしたいと彼を訪れるのたが…

そこにいたのは
精神病院の独房に20年間隔離されている一人の精神病患者だった。


些細な偶然が重なりあって、もちろんそこには言葉にできない程の不幸や苦しみ悲しみも含まれるのだが、結果、思いもよらぬ副産物、ときには人類の至宝までもが生み出されることがある。

ひとつの殺人事件が起き、犠牲になったある男の存在がなければ、この『OED』が完成することはなかった。



『OED』の収録語数約41万語、完成まで費やされた期間、なんと70年。

絡み合う人生の不思議と醍醐味、そして執念の賜物にただただ驚愕とした一冊。


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