2019年 11/23【297】Excellent!!
難易度5


2,3,5,7,11,13,17,19,23…

古代ギリシャの時代から現代まで、数学者を魅了して止まない素数
1と自分以外では割り切れない数字。
それがどうした?


数学者は曖昧さを嫌い、全てをきっちり定義し証明したがる。
『数学』は物、つまり物理的実体のない、いわば精神の産物・抽象的概念の学問だ。
だからこそ『証明』がないと砂上の楼閣になってしまう。

嗚呼それなのに、次に現れる素数を求める公式がなかなかどうして見つけられない。
不規則に現れる素数のリズムは全くの無秩序なのだ。

本書は、素数が奏でる音楽を求め、素数の謎ひいては《リーマン予想》に挑んだ天才達と数の神秘の物語である!


素朴な疑問。
そんなの調べて何か役立つの?

答えはyes。
素数がなくては現代の生活は破綻する。
クレジットカード含む現代のインターネットeビジネスは、この素数がその謎の性質ゆえに暗号に使われ、安全性が保たれているのだ。


登場人物は、古代ギリシャ人からオイラー先生、ガウス、そしてリーマンへ。

時代が下るにつれ、
ラマヌジャン(女神が夢の中で公式を教えてくれるという数学の秘技を授かった人)、
チューリング(リーマン予想解決の機械を作ることこそ叶わなかったもののドイツ軍の暗号エニグマを解読し第二次世界大戦の終結に貢献)、
ゲーデル(矛盾しないことは証明できない??の不完全性定理)
ダイアコニス(趣味の手品が高じて確率論に興味を持ち数学者となる)
等々、天才達のオンパレード

個人的には、過去に全く別ジャンルで読んできた本に出てきた彼らが本書で集結したのが、またまた驚きであった。


その中で少しずつ明らかになる予想だにしなかった素数の性質。

発見に次ぐ発見は、大まかにしか理解できない分を差し引いても、まるで第一級のミステリー小説を読んでいるようだ。


音楽と数学と自然界と宇宙と完全と。
それぞれが奏でる旋律が、複雑にしかし見事に絡み合い、やがて一つの壮大な音楽が奏でられ調和する。

このことを発見した天才達の驚きようを想像すると、高校数学で挫折した私ですら、このドラマチックな数学の世界には大興奮せずにはいられなかった。

また本書の後半で語られる、リーマン予想解読→素数解読→eビジネス破綻の話。

フェルマーの最終定理もポアンカレ予想も証明された。
リーマン予想も近い将来証明される日がくるのでは?!
でもそうなると現代の暗号の安全性は破綻する?
どうなるのか?!
 
著者や登場する数学者が、いたるところで数学を音楽に例えている点もとても印象的な本書。


当時の人類で最も天才だったであろう人達が何年もかけて考え抜いた末に導きだした公式を、過程をすっ飛ばして結果だけ教えられたって、理解できるわけがない。

本書のように、そこに至る歴史と天才達の苦悩を教えてくれたら、難しいけど面白い数学に、皆もっと興味を持てるのに。

と、教育のあり方に疑問を感じながら本書を閉じた私であった。


Prime number 
素数。
最も重要な数。
なんと美しい表現だろうか。
そして本書のタイトルも美しい。


「パスワードにフィボナッチ数列を使ってまーす♪」
とか言ってみたい。
バルトークです。


《2020年追記》
本書は「何か音楽の面白い本ないかなー」と探っていたときに出会いました。
音楽の本だと思いきや、ところがどっこい数学の話ので驚きましたが、あらゆるところで音楽と数学がリンクしているのが面白かったです。
また読みたくなってきた✨