生理も始まらない幼い子に貧血なんかある筈がない！ と思われている方、いらっしゃいますか？

もしもそう思っているとしたら、それは大間違いです。この間違いに気付けば、この先、子供たちの無事な成長と健康を守ることができます。

私たち大人と違って、新生児から18才位までの子は急成長の日々が続きます。その成長に伴って、血管の中を流れる血液の量は増えるのですが、往々にして、赤血球数やヘモグロビン濃度は体の大きさに見合った分だけ増えている、とは思えません。

下に年齢別平均フェリチン値の表を掲げます。

新生児のフェリチンが100を超えていることに注目してください。これは、胎児期には母体から胎盤経由で胎児に栄養補給されているので、貯蔵鉄は健康値に届いているのです。言い換えれば、脳や神経をはじめとした、臓器全ての成長に鉄の関与が欠かせない、と言うことなのです。

そして、生まれて6ヶ月後には、フェリチンが急激に一桁へと落ち込んでいます。これは、身長・体重が半年で2倍以上に増えたのに対して、造血はしているけれども酸素運搬のヘモグロビンを増やさなければいけないのに鉄が足りなくなってしまう。その為に、貯蔵鉄のフェリチンをヘモグロビンに供給して、フェリチンが100→5に急落したのです。

神様はそれを見越して、新生児には貯蔵の鉄をいっぱい持たせて、この世に送り出してくれたのでしょう。

また、胎児への栄養供給は胎盤経由ですが、母体から栄養を取りすぎちゃったので「お腹の赤ちゃ～ん、栄養を返して～」と云う、やりとりができないのです。胎盤とは、親から胎児への一方通行の道なのです。

そのために栄養失調で母体が死んでしまうと、胎児は成長できずに、お腹の中で死んでしまいます。その危険を察知して、余りにも低栄養状態になった母体を救うためにも、流産や死産が起きるのかもしれません。

妊娠中のお母さん、一所懸命栄養を摂りましょうね。

さて、乳飲み子にサプリメント飲みなさい、といってもそれは無理。出産後は溢れるほどの栄養を母乳で飲ませるのが一番適しています。実際に、分子整合医学を学んだ方たちや、分子整合医たちは、赤ちゃんにそうしています。

ここで少し貯蔵鉄について説明しておきます。その前に、医学の教科書には、人の身体には貯蔵鉄の量が1,000mgほど存在する、と明記しており、この低下は鉄欠乏性貧血である、と説明しています。臨床の現場では、この部分が無視されていることにも問題があるのではないだろうか。

フェリチンは全ての細胞に存在する蛋白で、鉄を細胞内に貯蔵し、鉄が必要な場合は速やかに利用できるように調節しています。

血中にも微量が存在し、血清フェリチンとして測定できます。血清鉄が血清中に存在する鉄の量を表すのに対し、血清フェリチンは貯蔵鉄の量を反映して増減し、血清フェリチン1ng/mLは貯蔵鉄8～10mgに相当します。

体内で鉄が減少していくと潜在的鉄欠乏状態から鉄欠乏性貧血へと進展していきます。このとき貯蔵鉄は早い段階から利用されて減少しますが、血清鉄は貯蔵鉄からの補給により、比較的末期まで低下しません。したがって、血清フェリチン値は早期に低下し、その状態では血清鉄値は低下しないことから、鉄欠乏状態を早期に診断するためには血清フェリチン測定は有用なのです。また、血清鉄には日内変動があるため、血清鉄単独では鉄の過不足の指標とはならず、血清フェリチンとの組合せ測定は有用です。
　

ところで、血清フェリチン値は悪性腫瘍、肝障害、心筋梗塞、感染症、炎症などで貯蔵鉄量とは無関係に上昇します。鉄欠乏状態の患者でもこれらの疾患がある場合は、血清フェリチンの低下を認めないことがあります。分子整合医学を学ぶものは、常にこれを意識して数値を観察しています。

学術的論文では、出生時から1年間では体重、血液量とも3倍になり、ヘモグロビン量も2倍に増加するので、その間、大人の貧血患者を超える相当量の(ヘム)鉄補給が必要となる。未熟児に対してですが、米国小児科学会栄養委員会は、生後2ヶ月から1年間、2mg/kg/日の鉄を摂取することを勧めています。(生後2ヶ月で体重5kgならば、10mg/日。1才児が10kgならば、20mg/日　と云う大量のヘム鉄摂取を勧めている、と云うことです。)

ミシガン大学のヒト成長・発達センター小児科学、及び、伝染性疾患のベッシー・ロゾフ教授らは、健康な正期産乳児は生後1年間の鉄補給が、発達・行動上、有益であるとする研究結果を「Pediatrics ペディアトリクス」誌に発表しました。それによると、１才の時点で、鉄補給群は貧血が少なく、社会・身体環境に対して、より好ましい反応を示すが、鉄非補給群は情報処理がより遅く、人との相互作用的な関係に問題を起こし易かった、と報告しています。

　脳神経発達に最も重要なこの時期に、脳への酸素供給が不足してしまいますと、医師が貧血と認めない軽度の貧血のままでも、やがて、(幼児期の鉄欠乏性貧血は)小児の行動や発達を障害します。

鉄欠乏性貧血が進行する様子を図で表したものがあります。血清フェリチンが減り、血清鉄が減って、次には、赤血球が減りはじめて、やがて、筋肉や皮膚などにある組織鉄が少なくなっていきます。鉄欠乏性貧血は、いきなり赤血球が少なくなる訳ではありません。

　・・・ということは、貧血改善の順番として赤血球が徐々に増え始め、次には血清鉄が増えて、それらが満足すると貯蔵鉄が上昇してくる、というわけなのです。

従って、ヘモグロビンが13や14に上昇したからといって、貧血が治った、と思うのは間違いなのです。

乳幼児・小児の貧血