私は子供の頃から虚弱体質だったらしい。
風邪を引きやすい、熱を出す、朝起きられない、・・・etc.
リンパ節もあちこち腫らして、首、鼠径部、腋下、顎下、などリンパ節が腫れる度に痛みが出て、病院通いをして手術を2度経験している。当時は悪い処があると、その原因も確かめずに、切り取ってしまうのが治療でした。その傾向は今の医療でもそうなのかもしれない。
4、5歳くらいまでは、昔の2階建て木造校舎のような処(戦争引揚者住宅)に暮らしていた。広くて長い廊下がまっすぐ伸びていて、2階に上がる階段が其処にあった。
ある時、祖母が私の脇を通り抜けて、2階にある自分たちの部屋へと階段を登っていった。いつもだったら、「トシ坊 おいで。」 と声を掛けるのだがその時は無言でスーっと通り過ぎていった。
隣に居た母ちゃんに「おばあちゃんが今ここを通ったよ。」と伝えると、「何を言ってるんだい。おばあちゃんは外で洗い物しているよ。」と言う。
母親の言う意味が分からなくて、確かめようと外を覗きに行くと、確かにお祖母ちゃんは外流しの前で洗い物をしている。
私が3歳の時だった。
今で言うと、生霊(いきりょう)を見た、と言うことになるのだろうか・・・。
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小学校1年生の時、廊下の突き当たりの教室で授業を受けていた。戸は開け放しで、其処から弘子ちゃんが手を振っているのだ。弘子ちゃんって、近所の子で、皆でよく遊んでいる子です。
(なんで此処にいるの?) と思った。60年も前の時代です。この頃は、先生の言うことを聞かない子は悪い子。授業中に遊び回っている子は不良。そんな観念がありましたから、弘子ちゃんが此処に来る筈がなくて、私は不思議でならなかった。
授業が終わるまで、ずっと開け放しの戸の方を凝視していた。弘子ちゃんは袋小路の廊下に居るはずなのです。
就業のベルが鳴ると、先生よりも早く廊下に出て、弘子ちゃんを探したのですが、弘子ちゃんだけではなく誰も居ない??
弘子ちゃんが消えてしまった・・・。何なのだ?
(後で弘子ちゃんに確かめると、「授業中だもん、行ってないよ」、と変な顔をしながら答える。)
これも生霊だったのか?
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20代半ばでした。
当時、スナックが全盛の頃で、会社帰りに数人で飲み歩くのが私の習慣になっていました。スナックというのは、風俗営業許可を取らず、キャバレーではなく、クラブでもない、カウンターの中には女の子がいて、女子の接待も受けずに気軽に酒を飲める飲食店のことです。
其処に入浸る若者が多かったのです。流行りとはいえ、若き集いとはそういうものなのでしょう。その中に、飲み仲間になったご住職がいました。彼は、小銭を手に握り締めて「今日はこれで飲ませてくれる~?」 と言いながら、カウンターの上にチャリ-ンと100円玉、10円玉、などをばら撒いた。彼特有のパフォーマンスだったのだと思う。
「生臭だなぁ~ 坊さんは。賽銭箱から盗んできたの?」
と皆にからかわれる。
飲み上がって2次会への運びとなるが、坊さんは金がない、という。それじゃ~、お寺の本堂で飲もう、と言うことになって持ち寄った酒で宴会が始まった。和気藹々とした雰囲気で飲み続けているうちに酒も切れて、真夜中だし、もうお開きにしたいが、行く宛もなく、結局、ここに泊まっていくことになった。
板の間の本堂で、座布団を枕にしてここで寝ることにした。
寺の本堂で気持ちよく寝入ると、出てきたんですよ~。
髷を結った侍が3人。私と天井の中間あたりに浮かんで、じっと私を見ている。
その表情は、怒りも、悲しみもなく、実に静かな顔だった。
私もただ見つめているだけで、その情景には何も違和感はなかった。そのうちに侍たちはスッ-と消えてしまった。
きっと成仏した霊だったのだろう。
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その数年後に、私は勤めていた会社を辞めて、そのお寺のすぐ隣のアパートに引っ越した。そのアパートの隣の部屋に住んでいた女性と気が合い、スケッチブックを持って写生に出かけたり、夜はお酒を飲みに出たり、近い存在の人になっていった。
そうなった切っ掛けは、引越し後に電報電話局(今のNTT)から工事に来る時間帯が、私の仕事都合で留守になるので、図々しく隣の女性に留守番をお願いしたことだった。
快諾してくれたことに謝意を伝えて、緑茶を入れて雑談したことから互いの部屋を行ったり来たりするようになった。
そうして隣室の女性は、その数ヵ月後に私の妻になった。正確には、この時点では同棲生活です。
これは、タイトルの「私の不思議体験」ではありません。「必然の出逢い」だったのかもしれない。不思議体験はこのあと起こりました。
私の借りた部屋は仕事場となり、妻の部屋が住まいとなったのですが、寝ていると、寝室の白いドアに明るい人影が立った。その姿は美しい女性であるのが判りました。微笑みを浮かべて、慈愛に満ちた優しい顔で、語りかけるように私を見つめているのです。
私はその表情に見とれていた。
何分の時間が経っただろうか、輪郭がぼやけて徐々に消えていきます。
「待ってぇ・・・」 と心の中で叫んでいました。
でも、「あぁ~ 消えてしまった。」
誰だったのだろうか?
その後何日間か、私は、また現れてくれないかな、と願っていましたが、2度と出てくることはなかった。
もしもその女性の表情が、恨めしそうな顔だったら私は寝ている妻を叩き起したかもしれない。怪談話のお岩さんのような姿だったら、声にもならない叫び声をあげていたかもしれない。
優しい顔で現れたその方とお話してみたい、と、当時そう思っていた。
だって、その優しい笑顔に魅了されて、至福感さえ味わったのですから。
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私は子供の頃から、ある恐怖を感じていた。
夜中、寝ていると突然キーーンと言う金属音が響いて、まもなく体が動かなくなり、声もでなくなるのです。多い時は年に数十回、そうした金縛り状態に陥っていた。
時には、布団の上から人が伸し掛るような重たさも感じることもあった。
寝入ると、突然ふくらはぎが吊り、「痛てぇ~」 と悲鳴を上げて目覚めることも日常茶飯事でした。
こむら返りです。
もう少し聞いてい戴きたい。