イタリアTVのCM出演依頼で、日本人でありながらエスキモー役をやることになった。  

朝、オーディションに向かうと、アジア人ぽい女性が一人だけ座っていた。お呼びがかかるまでしばらく待って、オーディションを受けたのは、グイドとその人だけだった。  

入り口で、名前、年齢、靴のサイズなどを書き込むところがあり、あの女性のほうが先に書き込んだので、グイドが後で書き込むとき、名前を見てはじめて、日本人でないことを知り、インタビューに答えているのを聞いて、中国人とフィリピン人のハーフで南米生まれだということがわかった。  

どうやら、彼女が「芸者」をやり、具井戸(グイド)がエスキモーになるようだ。アジア人の顔をしているというだけでも、いろんな民族の役ができる。

だから役者はやめられない。  


なんでも興味を持つ具井戸は、エスキモーと言う民族に突然興味を持ち、彼らがいったいどういう民族なのかをネットで調べてみた。  

エスキモーは、ベーリング海峡を渡ってアメリカ大陸に到着したアメリカインディアンのようなアジア系民族では、アメリカ大陸へ最後に渡ったと考えられている。だからこそ、その海峡の近くに留まったまま、主にアラスカ、グリーンランド、そして少数シベリアにも分布する。 彼らには、独特の風俗を持っていることは、広く知られている。


1、 権力者の尺度は女性で決まっていた。女性を通じて人を動かす影響力を持っている者がそれに値した。

2、 結婚は一夫一妻、一夫多妻、多夫一妻と様々。性交渉により、お互いに充足した時に結婚が成り立つとされた。だから、離婚は簡単に成立した。

3、 性に関しては、オープンであり、子どもに隠れて性行為をすることも、子どもがセックスについていろいろと実験をするのを止めることもなく、純潔を尊重する習慣もない。  


極限の寒さの中で子孫を繁栄させることが困難なこの環境が、このようなメンタリティーを生んだのだろう。  


民俗学の研究では、日本人などのアジア人が、欧米人から見て、アーモンド形の目をしているというのが、すでにシンボルともなっているが、それだけではなく、「体毛が少ない」「顔が広く、鼻が低い」などの特徴は、実は氷河期の時代に寒い地方に閉ざされていた民族がルーツだと考えられている。

だとしたら、そのまま寒い地方に残ったのがエスキモーだとしたら、我々の先祖が、たまたまその地方にとどまっていたとしたら、今頃、彼らのように生きていることになる。 そう、我々それぞれが、どこで、どんな暮らしをして行くかで、子孫の運命が決まるのだ。「バック・トゥー・ザ・フューチャー」や「ドラえもん」のタイムマシーンがそれを教えてくれる。


我々は「日本人」であり、またアジア系の民族のことをもっと知ると、実は「日本」が複数民族であり、それぞれ違ったルーツを持って、列島の中で、いつの間にか、統一国家で同じ言葉を話して生きてきたけれども、誰かが国境を引いて分けられたアジア系人種のルーツと実態を知ると「もしかしたら、我々の親戚があちらではぜんぜん違った生活をしているのではないだろうか」というパラレルワールドを想像してみたりもする。現代社会で常識だと思われていることが、研究者たちの調べで大変興味深い真相が飛び出すかもしれない。 


具井戸は、古代ローマ人の先祖と日本人の先祖は同じではなかったか、とまで想像を広げてしまうくらいなのである。