イタリアが日本にすっかり知られてしまう時勢では、まだまだ珍しい物を探し、目が離せない国として、日本で、さらにイタリア志向が定着してもらわなくちゃならない。

  そこで、登場するのが秘境サルデーニャだ。この島は、トスカーナやラツィオの西の沖にあり、他のイタリア人と民族として、かなり遠い(現在のカザキスタン辺りから渡来して来たともいわれる)し、独特の言語、独特の方言を持つ。世界的に知られていることと言えば、イタリアの誘拐産業の「人質保管部門」を担当してきたのは、遊牧が盛んで、また地形が複雑なため、捜査が困難だと言うことも理由だそうだ。

  古代ローマ人さえ傘下に入れられず、蛮族としてローマ化されなかった内陸の地方があるそうだ。

  この島のある地方では、今でもカタロニア語(イベリア半島の言語)を話す集落があるのは、スペイン征服の歴史とその影響が窺える。


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  謎いっぱいの秘境サルデーニャへは、まだ足を運んだことない著者だが、近所にサルデーニャ出身の女性が住んでいて、彼女の家での料理教室を申し込んだら、快く引き受けてくれたのだ。

  彼女いわく「サルデーニャは常に貧しかった。それでも、サルデーニャ人はサルデーニャ人あることをひと時も忘れることがない。もし、島から出ることがあるとしたら、それは、仕方なくそうせざる終えない場合だ」という。それを悲しそうに言うこともなく、当たり前のことを言っているという堂々とした話し方だった。


  この地方の代表的な食べ物がこの写真のPani frattau(pane della misicaとも言うらしい)と言うパンの一種で、見ただけなら有名なピッツァや前回紹介したピアディーナ にも似ている。しかし、他の二つと比べ断然パリパリして硬いもので、その音が音楽(musica)みたいだと言うことかもしれない。


  普通の主婦は、このパンをパン屋さんで買って料理に使う。しかし、ミラノでも、よほどよく揃っているパン屋さんでないと手に入らない。食べ方は、まずパンをお湯につけ少し軟らかくする。ここではホールトマトとペコリーノというチーズを乗せて、そのまま手でつかんでバリバリ頂く。


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  さすがサルデーニャ女性はサルデーニャにこだわる。メインは、Agnello in verde(子羊肉のグリーンソース煮)と言って、調理時間は1時間半にも及ぶ。オイルでガーリックとカットしたパセリを炒め、肉をよく煮る。塩コショウで味付けし、白ワインのアルコールを飛ばしながら注ぎ、ポテトとそれから、あればアーティチョークを添え、さらに煮て、味をなじませる。


  頑固者だが、一度気に入ったら一生面倒見てくれる一途なサルデーニャ人と一緒に食事をしたら、もう病みつきになるだろう。