戦いに命をかけた、超世の3傑が遺した吟句には、悩める現代人の魂を救うヒントが潜んでいます。
家族を養い、我が身を守ることが価値の判断基準として最重点であり、人の権利や差別なぞ構っていられないという時代から、2000年近くを経た今、差別を受けない、平等な扱いを要求する権利こそが最重要と考えられる時代となりました。
パワハラの権化、信長ですら500年前に制裁を受けています。
以下の3傑は、戦いの時代にあって、冷酷非情な行動をしつつ、一面では愛すべき人情を持ちあわせていました。
戦後80年の日本、平和ドップリが続いたので、これからは、弱い者が強い者をいじめる「逆ハラ」の流れが加速することになるでしょう。
メンタルの弱い人、金や才能に縁のない人、一炊の夢のような短い人生の中で、自分の愛するものを大切に、安心して生きていきましょう。
1)楚の項羽(B.C232-B.C.202)
漢軍・諸侯連合に包囲され、敵の四方から聞こえてくる楚の歌。
我が故郷、楚の民も漢に支配されることになったか、という窮地にあって、
三度吟ずる魂の嘆き、愛する虞姫(虞美人)も傍らで唱和する。
「力拔山兮気蓋世 時不利兮騅不逝
騅不逝兮可奈何 虞兮虞兮奈若何」
(訳)
私の力は山を抜き、気は世を覆うほどであるけれど、時勢が味方しない。
愛馬の騅も疲れて進まない。騅が進まないのに、どうしようか。
虞よ、虞よ、お前をどうしたらよいのか!
2)魏の曹操(A.D.155-A.D.220)
側室13人を愛した曹操は、広く人材を求める人物だった。
赤壁の戦いに敗れ、撤退はしたが、詩歌を愛し、楽天的な性癖でもある。
66歳で他界、世に遺した短歌行がコレ、人生 幾何。
「對酒當歌 人生幾何 譬如朝露 去日苦多
慨當以慷 憂思難忘 何以解憂 唯有杜康」
(訳)
酒に對いては當に歌ふべし。人生幾何というのか。
譬えば朝露のようなものだ、去りにし日々は苦はなはだ多く、
慨して当に以て慷すべきも、幽思は忘れ難い。
何を以て憂いを解こうか。惟だ杜康(お酒)有るのみだよ。
3)尾張の信長(1534-1582)
11人の側室と21人の子供をもった信長も、光秀勢に包囲され、
炎の中で自刃して、ひとり最期を迎える間際には、おそらく彼は、
お気に入りの幸若舞「敦盛」を、一差し舞ったのではないか。
「人間50年、化天のうちを比ぶれば、夢幻の如くなり。
一度生 を享け 滅せぬもののあるべきか」
(訳)
人間世界の50年は天界の一日だ。天の時の流れに比べたら、
人の一生はまさに、一炊の夢や幻のようなもの。
一度この世に生を受けて、滅びないものなどあるはずがない。
曹操の漢詩「人生幾何」にメロディをつけて歌にしました。
酒に向かいては、まさに歌うべし。 ●試聴はコチラ 「人生幾何」