
----この家の深窓の佳人と玄徳とが、いつのまにか、春宵の秘語を楽しむ仲になっているのを目撃して、関羽は、非常なおどろきと狼狽をおぼえた。
三国志 桃園の巻 「岳南の佳人」の一節に登場する芙蓉娘は、劉備玄徳の義弟、張飛の元主家鴻家のお嬢様で、玄徳がほのかに恋想っている。
関羽と張飛はともに、玄徳と義盟を結び、天下の塗炭を救い、永遠の平和と民福を計ろうと軍を決起すべきこの時期に、リーダーは恋などささやいている場合か!
旅立ちの前、義弟たちは残念至極に案じ、思い切って玄徳に問います。
「---ですが、お名残惜しくありませんか、この家の深窓の佳人に」
玄徳は微笑のうちにも、幾分か羞恥の色をたたえながら、
「否とよ、恋は路傍の花」
と答えた。
「さすがは」
と関羽も、自分の取越し苦労を打消し、すっかり眉をひらいた。
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三国志8巻を再読して、私も壮大な気分になります。
「風は天地の呼吸なり」
「やんぬる哉」