2024年1月23日告示・同1月28日投票の川越町長選のレポート改め彦治観察日記です。
選挙自体は、現職が無投票当選…でおかしくなかったところ、彦治が現れてしまいました。
彦治の立候補会見などは、金城ガンヂさんが詳細に取材してくださっているので、これをご覧になると良いかと思います。
0.背景
人口約1万5000人で面積は8.73㎢という小規模な町です。
四日市近辺の中京工業地帯の一角なだけあり、伊勢湾岸には火力発電所もあるなど工業も発展しているようであるほか、桑名市と四日市市のそばで、近鉄に乗れば名古屋にも40分くらいで行ける、都市近郊の町ということで、住宅も相当数密集しています。
こういう町だと選挙戦があってもおかしくなさそうです。しかし、この15年は町長選は行われておらず、今回も高齢現職が無投票当選しそうだったため、彦治の格好の餌食にされてしまいました。
というわけで、今回の立候補者です。
城田まさゆき(69) 現職
小西ひこじ (52) 新人
1.城田まさゆき候補
(選挙ポスター)
(1)候補の紹介
(2)主な政策
・地域の防災・減災・防犯力強化
・生涯活躍できるまちづくり
・子育て支援の実施
・デジタル技術を活用した行政サービス向上
(3)選挙戦の展開
今回が初選挙ということで、名前連呼の選挙カーをグルグル回す活動のようです。
本人初の選挙というだけでなく、町レベルで見ても2009年以来15年ぶりの選挙戦ということで、相手も彦治なので、選挙戦略等は特に練られていない感じでした。
とはいえ、選挙公報のスカスカっぷりについては、彦治と並べてもスカスカに見えるレベルなのはまずいような…
ウグイスも、彦治が突然出てきたので、近所のおばちゃんに急遽手伝ってもらっているのではないかと思われました。まあ、これも彦治相手なのでやむを得ないでしょう。
(踏切待ちしてるところで手を振ってもらった)
2.小西ひこじ
(い つ も の)
(1)候補の紹介
(2)主な政策
・全ての町民を守る防災政策
・個性を伸ばす新しい教育
・財源を自ら確保すべく町長が奔走
・町長退職金を町民に還元
・行政サービスの見直し
・政策を公募(筆者注:本当です())
(3)選挙戦の展開
前回の須坂市長選から中1日という、野球の中継ぎ投手レベルの間隔で出馬してきました。どう考えても川越町のための政策を練っている時間はなく、手当たり次第出ている感が否めません。
例のごとく、ほぼデザイン使い回しのポスターを貼るだけ貼って伊丹に帰ったようなので、選挙戦と言ってもさほど書くことがありません()
(ごちゃごちゃ書いてあるがあまり中身はない)
3.考察等
(1)結果
結果は以下の通り。
当 城田まさゆき 3,459票
落 小西ひこじ 774票
(投票率:34.97%)
残念ながら、彦治に供託金が返ってきてしまい、かつ、ポスター代その他の公費負担請求ができることになってしまいました。
(2)考察
(a)知られていない公費負担制度
選挙は、「お金のかからない選挙のため、また、候補者間の選挙運動の機会均等を図るため」(下記総務省HP)、一定の行為について、公費、つまり税金から支払ってもらえる制度が採用されています。
総務省がわかりやすく表にしてくれているので、下表をご覧いただきたいのですが、「△印は、都道府県又は市町村の条例により公営で行うことができるもの」とされています。そして、全国各自治体の条例で、供託金没収ラインを超えれば、ポスターやビラ・選挙カーの公費負担が行われるよう定められています。
(出典:総務省「選挙公営」(黄色塗りは筆者加工))
ある程度の票を取れば、供託金が返ってくるという話を聞いたことがある人は一定数いそうですが、公費負担制度についてはなかなか知られていないと思います。
こういう状況なものだから、公費負担制度を悪用利用したのがN国です。
(動画の方は5分22秒くらいから。ホリエモンチャンネルの再生数増やしたくない人は注意。)
もっとも、彦治は、今のところN国のように公費負担制度を用いた金儲けをしているのか真偽不明です。しかし、「彦治が供託金ラインを超えると、彦治と数年来関係のある、元N国の人が代表とされる事業に税金から金が入る」のは事実です。
「変な候補が出てきても、落選させれば大して変わらないんでしょ」と思われる方がいるかもしれませんが、単に落選させるだけでは落とし穴があることを、有権者全員心しておくべきではないでしょうか。
(b)選挙にかかる費用
川越町の令和5年度予算を見てみましょう。(↓の「令和5年度一般会計予算書」の121ページを見てください)
「町長選挙費」として、1530万8000円が計上されています。予算なので実際にかかったお金ではありませんが、選挙を1回行うには、川越町のような人口・面積の比較的小さい自治体でも、これだけのお金がかかります。
民主主義を健全に機能させるために選挙は重要です。また、「立候補の自由は、選挙権の自由な行使と表裏の関係にあり、自由かつ公正な選挙を維持するうえで、きわめて重要である」(最判昭和43年12月4刑集22巻13号1425頁)ものです。
こうしたことから、「徳川埋蔵金を発掘して財政をウハウハにする」などのぶっ飛んだ主張であったとしても、多様な意見が出てくる中で、有権者が自由により良いと思うものを選べるようにすること自体に意味があります。
お金がかかるとしても、選挙の実施を否定してはならず、泡沫候補だろうと被選挙権は保障されなければなりません。
しかし、彦治の場合、「どこの自治体でも言えそうなこと」(財源確保など)の使い回しや、「自治体名をGoogle検索すれば素人でも10分で思いつきそうなこと」(今回でいえば一般的な津波対策)しか主張していません。
それどころか、ポスターだけ貼って伊丹に帰ってしまうようなところからすると、彦治には自分の主張を知ってもらう気があるともいえません。
有権者が選挙権を行使できる機会があるのが望ましいと一般的に言えるとしても、彦治の立候補の場合、税金の無駄遣いというほかないのではないでしょうか。
(c)明日からできる彦治対策
今回、町長選にしては珍しく、中日新聞が有権者アンケートを取っていました。
この記事で注目したいのは、以下の記載です。
「『投票した際に一番参考にしたものは何ですか』という問いでは、半数近くが『選挙公報』と答えた。」
「その他」が何なのかは不明ですが、選挙公報の記載がかなり重要であることがわかります。
彦治相手の場合、討論会とか街頭演説とかは期待できないので、これらで差別化することはできず、特に選挙公報のウェイトが重いのだと思います。
今回の城田候補の選挙公報は、一見彦治よりも抽象的かつスカスカで、これが彦治の跋扈を許す一因になったと思います。
町長選レベルだと、候補者において、選挙のためにデザイナーに依頼する経済的余裕はないのかもしれません。しかし、今後は、国政選挙の選挙公報などから、使いやすそうかつデザイン性のあるフレームを拝借する(簡単なのならパワポでもできます)などして、ある程度しっかりした選挙公報を作ることは必要になってきます。
(3)雑感
無投票当選が続いたり、その結果高齢現職が多選を重ね続けたりするのが望ましくないのは、その通りであり、彦治の言い分はその点だけ切り取ればもっともなようにも見えます。
上記中日新聞のアンケートで、若年層がかなりの割合彦治に入れてしまったのも、やはり高齢現職の多選に抵抗があるからでしょう(彦治の行いを知っているのは、まだ一部の選挙マニアくらいです)。
しかし、彦治が公費負担制度を悪用しているかどうかは不明ですが、それを置いておいても、どう考えても個別の市町村に無関心であり、有権者に伝えたいことがないと思われる人間が、無駄に立候補することは、先述の内容からも望ましくないことです。
彦治が出ることで、一応批判票は可視化されることに意義があるという意見もあるかもしれません。しかし、彦治のせいで現職が、例えば大阪における吉村知事よりも高い得票率を取ってしまうと、むしろ積極的に支持されているとの勘違いにも結びつかないでしょうか?
なかなか彦治的なるものへの特効薬的な解決策はありません。しかし、一介の彦治ウォッチャーとして、今後も大阪から行きやすい範囲で彦治が現れたら、随時警鐘を鳴らし、少しでも彦治の問題点が検索に出てくるように努めます。
(四日市で食べた昼ごはんが美味しかったのが唯一の救い())
追伸)前町長死亡に伴い、現職が立候補・当選したそうなので、その点修正しました(1/29)