2024年4月14日告示・同4月21日投票の大東市長選のレポートです。
現議席4人に対して5人立候補するという、維新が(大阪ではよくあることですが)拡大戦略に出ています。これが吉と出るか凶と出るかあたりが、常識的な見どころと思います。
もっとも、一部界隈からは、元N国候補だったり、排外系極右候補だったりが出ていたので、その方が注目されていました。

なお、大東市長選も同日程で行われているので、そちらもどうぞ(宣伝)。

目次
1.市議選は大阪維新の会が完勝
2.安定の公明党
3.共産党の善戦
3.大阪自民の弱さ
4.国民民主党の苦戦
5.極右勢力は敗退
6.無所属いろいろ
7.考察等


1.市議選は大阪維新の会が完勝

(オペラパークスペイン広場でビラ配りしていた中村候補。写真外左側には安田候補もいた)


維新は5人とも選挙カーをぐるぐる回していたり、駅立ちを積極的に行っていたりしており、大阪維新によく見られる活動を行っていました。


今回印象的だったのが、新人の田中候補で、住道駅前の広場で展開する時、本人かボランティア定かではありませんが、「声出していきましょう!!」と言っていました。グラウンド以外の街中では初めて聞きました。こういう体育会的に存在をアピールしていくのは、中選挙区で埋もれないためには大切なのかもしれません。


あと、大東市長選レポートにも書きましたが、行財政改革は重要と位置付けつつも、「身を切る改革」一本足打法からの脱却が進んでいます。ビラや選挙公報の項目レベルで「身を切る改革」と記載しているのは1人と、政策の打ち出し方を変えてきているように思います。中村候補の条例制定やバイオマス発電の実績の話や、安田候補のシングルマザーとしての経験の話など、個別具体的な話もしっかりアピールできているように思いました。


これも大東市長選レポートの方にも書いたので、こちらでは省略しますが、面で展開して、漏らさず通行人にアピールできるようにしている、維新の地上戦の体制は、流石であると思いました。

(駅の出口からバスロータリーにかけて面で展開している)


住道駅前に維新候補の選挙カーが取っ替え引っ替え現れていたので、共食いで厳しい結果になる人も出るかと思ったのですが、そこは大阪維新の強さを見せつけました。


2.安定の公明党
最近、維新絶対倒すマンと化している公明党ですが、4人擁立で余裕を持って4人とも当選させており、流石の安定感を見せていました。

数字で見ても、興味深い結果が出ています。


2020大東市議選 :9,187票(投票率38.68%)

2022参院比例公明:8,374票(投票率48.37%)

2024大東市議選 :8,627票(投票率39.70%)


公明党は、全国的に支持母体の創価学会の会員が高齢化し、得票が減る傾向にありますが、大東市では参院比例からは積み増し、前回市議選からも約6%減に抑えており、健闘していることが窺えます。

3.共産党の善戦

(最終日のあらさき候補(と山下参議院議員))


あらさき候補は、前回の2,076票から2,468票へと、得票数を約19%積み増しており、共産党候補では珍しい票の推移を見せました。一般的な共産党候補と異なり票を伸ばした理由については、シングルマザーとしての経験と子育て世代への負担軽減の主張がマッチしたこと、市長選も合わせて介護サービスの改善を訴えた点が、あらさき候補の看護師・介護士としての経験とマッチしたことなど、伸ばす要素は考えられます。もっとも、票を伸ばした理由は不明確です(誰か思い当たる節があったら教えてください)。


一方、天野候補は、票を1,610票から1,314票と減らしました。こちらも要因の分析までは至っていませんが、選挙公報の推移を見ると、2020年のものより2024年のものがスカスカなので、こういったところが作用しているのかと推測します。


(初日の第一声の後握手回りする天野候補)


共産党は支持者の高齢化が著しいことから、基本的に前回選挙から10%くらいは得票数を減らすのですが、大東市では以下のように、前回選挙よりも積み増すという善戦ぶりを見せました。

2020大東市議選 :3,686票(投票率38.68%)

2022参院比例共産:3,126票(投票率48.37%)

2024大東市議選 :3,782票(投票率39.70%)


市長候補に共産系の候補を立てたシナジー効果があるかもしれませんが、あらさき候補の票の積み増した要因を分析すると、共産党の選挙運動の参考になるかもしれません。

4.大阪自民の弱さ

(撮影に応じてくれたかのう候補)


大阪自民は、公認候補として北村候補、推薦候補として中河候補とかのう候補を擁立していました。しかし、当選したのはブービーで北村候補だけであり、推薦候補の2人は落選してしまいました。

選挙カーはかなり回していたように思われますし、北村候補は現職、中河候補は世襲、かのう候補も前回に続いての出馬ということで、苦戦の理由は活動量・期間の問題ではありません。


ここで、なぜ苦戦するのか、その理由が垣間見える点を見ていきましょう。


かのう候補の選挙カーが住道駅前ロータリーで駐車していたのですが、その時あいつき候補らが演説しており、川口とか蕨のクルド人が云々とか朝鮮人が云々とか喋っていました。下の写真からも明らかですが、かのう候補とあいつき候補はイメージカラーが赤で共通しており、こんなところで10分以上もたむろしていると、かのう候補が極右の一味と誤解されても仕方ありません。

この時、かのう陣営がとるべきだったのは、さっさと選挙カーを引っ込めるの一択だったと思います。

(あいつき候補の演説時、かのう候補の選挙カーが10分以上たむろしていた)


また、北村候補は、ポスター貼りの効率があまり良くなかったように思われ、こうした点も選挙に強くないことを窺わせています。

(初日だったとはいえ、住道駅前の超一等地の掲示板に一人だけ貼られていない)


その他、こんなことは一般的な有権者が気にするとではないと思いますが、かのう候補は林英臣政経塾の出身らしいです。

https://x.com/uemurayoshifumi/status/1779337575636836768?s=46

林英臣政経塾といってピンとくる人には説明不要と思いますが、ご存知でない方に理解してもらうとすれば、こういうことです。ドン。


北村候補も、「大東市の未来を喜利ひらく」という当て字を使っているところで、何か私のアンテナがピコピコ反応しました。

そこで、北村候補のHPを見て見たのですが、座右の銘の1つに、「理想世界は為に生きる世界である」と書かれています。

これを調べると、グーグル先生的には、自民党としてはセンシティブなあの団体の創設者の言葉としてヒットします。問題のない出典があるのかもしれず、私にキリスト教の知識がないところ、なんとも言い難いのですが、誤解を招くような記載をHPに挙げてしまうのは、あまりセンスがよろしくありません。


なかなか選挙に弱そうな要素が見て取れるあたり、厳しい戦いにならざるを得なかったのではないでしょうか?


5.国民民主党の苦戦

(オペラパークスペイン広場で演説するみずおち候補)


みずおち候補は、元樽床伸二議員秘書で、現在国民民主党公認・連合推薦候補として6期目を目指して出馬しました。

最終演説では相当人が集まっており、演説・ビラ・選挙公報の政策も、数値の調査等含め具体性が高いものであり、市長が変わることに対する意見も述べていたので、当選がかなり固そうに思われましたが、結果を見ると思いの外苦戦していました。

(連合推薦だけあり、支援者・聴衆がしっかり集まっていた)


東大阪市議選でもそうだったのですが、「(立憲・国民)民主党」の看板がついてしまうと、自民党と同様に大阪ではあまり伸びないのかもしれません。


6.極右勢力は敗退

(住道駅前で選挙運動中のあいつき候補)


「移民政策から国民を守る党」というきな臭いアレな名前の政治団体から出馬してきた、なかなか独特なファッションをしているのが、あいつき候補です。政治団体名で明らかですが、外国人排斥系の極右候補です。
差別的なので引用しませんが、川口市とか蕨市のクルド人に関するヘイトだったり、その他外国人による犯罪を殊更に強調した話をしていました。また、外国人生活保護の廃止などを通して、外国人より日本人が暮らしやすい国にするのだと、排外主義が強く、聞いていてしんどい内容を主張していました。
特に、住道駅前のベンチで、おそらく南アジア系と思われるお兄さんが、なんとも言えない表情で街宣を見つめていた時は、何やってんだこの人たちという思いになりました。


応援に入っていた人もなかなか香ばしく、荒巻靖彦氏や川東大了氏などが入っていたようです(名前を検索すれば、どういう系の人が察してもらえると思います)。

(知る人ぞ知る荒巻靖彦氏)


もっとも、選挙運動としては、人足が充実しており、ビラ配りも駅の出口をしっかり押さえるなどしており、ポイントを押さえていました。また、街宣がものすごい爆音だったので、嫌でも存在は認知されたのではないかと思われます(流石にあの音量は嫌われそうですが)。

(陣営の人足は充実していた)


ちなみに、陣営のボランティアさんに「移民政策から国民を守る党ってN国と関係あるんですか?」と聞いたところ、ボランティアさんは「N国と関係はないんですけど、(あいつき候補は)立花さんとお友達なんです。」と言っていました。何か察しました()

(大東市内を歩いていて見かけた石碑)


7.無所属いろいろ
自民系以外の(実質)無所属については、かなり明暗が分かれましたので、どういう感じだったのか見てみましょう。

(1)うまくいった例

(握手回りをする品川候補)


みずおち候補と似た経歴(元樽床秘書、連合推薦)ながら、堂々の2位当選を果たしたのが品川候補です。

みずおち候補よりも活発に動き回っていた印象で、このような明るさは選挙においてプラスなのでしょう。


(同じ樽床秘書・連合推薦のみずおち候補よりも同じ場所で聴衆が多かった)


士気高く選挙戦を展開していたのは、さわだ候補も同様でした。さわだ候補は市議4期・府議1期を務めた元職です。2020年の大東市長選に落選したため、4年ぶりに市政に復帰しようと立候補したようです。元職だけあり支援者はしっかりいたようです。さわだ候補は、前回市長選から一貫して老朽化した建物の整備などを主張していますが、確かに築年数の長そうな建物は多そうだったので、こうした点も評価されたのではないでしょうか。

(交差点で行き交う車に手を振るさわだ候補)


みつしろ候補も、2,145票取り、安定圏で当選しています。街頭演説は名前連呼多めの内容で、当選が危ないのではないかと思いましたが、どうも普段から市議会での活動を駅頭で配布するなど、地道な活動を続けており、こうした面で評価されたのではないかと思われます。

(住道駅前で演説するみつしろ候補)


(2)ダメだった例
ここからは、「移民政策から国民を守る党」のあいつき候補に負けてしまった候補をご紹介します。
簡単にまとめると、大東市で極右がまあまあ伸びたというより、こりゃ極右より弱くても仕方ないという内容です。

(1)神田直候補

(神田候補の選挙ポスター)


神田候補は、かつてN国から出馬して墨田区議会議員になり、その後N国を除名されて自民党に移籍し、2023年の墨田区議選では落選しました。今回、神田候補は、会計に関する知識があることを武器にして、大東市で無所属として立候補するに至りました。最近流行りのステルスN国かと、N国界隈をウォッチしている人から注目されていました。

もっとも、神田候補は、N国脱会者にしては極めて珍しく、N国にいたことを人生の汚点として反省しているようです。
私が話を聞いた時も、「真人間になってやり直します。」と話していたので、本当に反省しているように思います。現に、選挙戦は孤独な戦いを展開し、何らかの迷惑行為を働くこともなかったようですし、ステルスN国にありがちな、N国関係者が運動員として活動するという事態もみられませんでした。


ちだいさんのキャスでも、神田候補に哀愁が漂っていたという話がありましたが、個人的に1番哀愁を感じたのが、次の写真の状況でした。

(仲間がビラ配りしている?いいえ、チョコザップのアルバイトです())


個人的には迷惑行為・脱法行為(違法ではないが不適切なサムシング)を繰り広げなければ、文句を言う気はないので、今後の動向は不明ですが、ご活躍を祈念します。

(2)わたなべ進太郎候補

(維新に寄せていった感のあるポスター)


わたなべ候補は、最年少候補として、多分維新に擬態しにいった選挙ポスターを掲げて、単独で活動していました。
住道駅前の通路を押さえるのはいいのですが、1人でやっていること、事前吹き込みのループ音源かと思ったほど、一定のペースで機械的に「投票に行きましょう」という呼びかけを繰り返すだけだったことから、支持を伸ばすのは厳しかったように思います。
ちなみに、ポスターには、「議員報酬と平均月給の差額を自主返納します!」と書かれていますが、公選法199条の2第2号の寄付禁止に抵触するので、できません()

(投票を呼びかけるわたなべ候補)


(3)片岡しんいち候補

(街中に貼られていた選挙ポスター)


片岡候補も、野崎駅の改札前を中心に、孤独な戦いを展開していた1人です。
野崎駅で中学生・高校生に声をかけて無視されていたなど、ある意味神田候補以上の哀愁漂う選挙戦を広げていました。
また、「写真よろしいですか?」と聞くと「写真はちょっと…」と断られてしまいました。このように、片岡候補については、ネットで広めてよいのか非常に躊躇わせてしまうところもあり、やはり支持が広がらなかったのではないでしょうか?
(まあ街中に貼ってあった選挙ポスターは載せてもいいでしょう。)

8.考察等
(1)結果
結果は、以下の大東市HPをご覧ください(たくさん打ち込むの面倒なので丸投げ)
(a)維新の勢いは続く
同日の市長選で維新候補が敗れたことは、インパクトがあったようです。

こうしたことから、維新の勢いにブレーキがかかったのではないかという意見もあったようです。
たしかに、前回2020年の大東市議選では、ワンツースリーフィニッシュを決めており、トップの石垣さんは3837票取っていたので、市議選でも勢いが衰えたように見えるかもしれません。
しかし、維新は、市議選では5人全員当選し、強さを見せつけました。このような市議選の結果からは、維新にブレーキがかかったとはいえないことがわかります(もっとも、大阪であっても、万博などを利用して支持拡大ができたわけでもない、とは言えるかもしれません)。

客観的な数字で見ても、このことはわかります。


2020大東市議選 :12,062票(投票率38.68%)

2022参院比例維新:18,674票(投票率48.37%)

2024大東市議選 :11,206票(投票率39.70%)


大東市の有権者数は約96,000人であるところ、前回市議選から856票減、参院比例から7,468票減であれば、今回の新人候補の擁立時期が遅かったなどの事情も加味すると、まだまだ維新の衰退ということはできないものといえます。


(b)依然として大阪自民は壊滅的
国政政党の公認・推薦を受けていて落選した候補はいずれも自民で、当選できた自民党公認候補もブービーという、大阪自民の弱さと自民党への逆風が明らかに出た選挙でした。

個人の選挙戦のまずさについては上記の通りですが、それだけでは説明できないと思われます。同日の大東市長選や、他候補の結果を見ても、非維新の壊滅というより、「自民党」の看板が大阪では特にマイナスに働いているのではないでしょうか?
まあ大阪自民はヤバいポンコツぶりを発揮してることがあるのは確かですし、さらに、アレだけ吉村知事に「腹たってしょうがないですよ、当時の知事さん。誰だか言いませんけど…太田房江さん!」ってネガキャンやられたらそりゃ効果あるわなあとも思うわけで…

(c)女性候補の寡占状態
安田候補は、中村候補のツイートによると、情勢が危ういとのことでしたが、蓋を開ければトップ当選でした。
また、共産のあらさき候補は2,468票、公明の杉本候補は2,197票獲得しており、やはり上位当選しています。

今回の大東市議選は、女性候補者数が23人中3人であり、13%と低調でした。
もちろん候補者本人の努力や実績があってこその得票ですが、女性候補に期待する票が、少ない女性候補に集中する傾向はやはりあるのではないでしょうか(この点に着目したのが以下)。
(3)雑感
無所属の明暗を見るに、数もさることながら、性別の多様性や年齢の幅広さも含めた、人足の重要性を改めて感じさせられました(上記の候補以外にも、当選者中のブービーメーカーの小南候補も、最終日に野崎駅の近くを自転車で1人で動いていました)。

市議選は、維新が負けたという市長選に比べると、注目されない結果になりました。もっとも、他山の石とすべき内容はまずまず含まれており、参考になる事例なのではないでしょうか。