その矢先、一台の車が止まってくれた。

『大丈夫か!?
今救急車を呼んだからな!』

人間の善意を感じられたが、
次々に車が止まり、住人達も家から出て来た。


『まるで見世物だ…』


僕はそう呟き、笑ってしまった。



野次馬。



煩わしい事象や、
自分が当事者になる事や、
ましてや事故者と直接関わるなどと云う、
面倒に巻き込まれる事を良しとしないのだ。



僕は、人の善意に救われたが、
人の悪意で人間を嫌悪した。









もう二度と彼に関わるものか!


僕はその時 心に誓った。



しかし、彼は笑いながらまた現れた…





『どうすれば居なくなってくれる?』


僕は問いた


『俺にはお前が必要だ。
お前にも俺が必要だろう?』


笑いながら彼は答えた




『必要なもんか!

お前は僕や他者を傷つけて、楽しんでいるだけじゃないか!』


僕は声を荒げた


『否、お前は俺を必要としている。
子供の時から、1人じゃ何も出来なかったろう?
俺が居なかったら友達も仲間も作れなかったくせに偉そうな事を言うなよ。』


彼は続けた

『親父の事にしてもそうだろう?
俺が居なきゃ親父と話も出来やしない。

母親の事も同様だ。
俺が憎んで、恨んでやらなきゃ、
お前は一生机の下から出れなかっただろう?』




僕は何も言えなかった…



『俺はお前で、お前は俺だ。
お前に出来ない事を俺が代わりにやってるだけの話だ。
お前の心はあの時死んだんだ。
母親に捨てられたあの日、
あの時既にお前なんて存在は消えて無くなってるんだよ!』


『自分が本物だと思うなよ?
お前は俺の中の善意だ。
お前は俺の事を自分の中の悪意だと決め付けているがそれは違う。


実在してるのは俺の方で、お前は俺自身の一部なんだよ。


考えてみろ、今までお前が自分で何かした事があるか?


お前はいつも見てるだけ。

怒りも、悲しみも、寂しさも、喜びも、感じるだけで自分からは何もしていなかった。


お前に俺は理解出来ない。

何故ならお前は、全てを誰かや何かのせいにして逃げてるだけだから。


手を汚し、人を傷つけ、自分も傷つき、痛みを知る。


異常なのは俺じゃなく、
お前だ!


現実を受け入れず、拒絶して逃げてるだけだろう?』









そうだ…


僕は逃げていた…


全てから…


自分自身からも…