ビジョナリーな日々 『戦略財務コンサルの日記 』
Amebaでブログを始めよう!
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 最初次のページへ >>

中小企業【アフターコロナ】の資金繰り!《返済据置の功罪》③基礎知識編

アフターコロナの中小企業経営において、別枠⁈で調達したコロナ資金の取扱い方法の違いによって、その後の中小企業運営は大きな違いが生まれます。新型コロナウィルスの影響による損益の赤字に対する補填のみに利用した会社と、新たな事業への投資へ当てた会社では、その後の会社の財務状況に対する資金注入の効果・効能が全く別な意味を持ってしまいます。

借入過多 = 負の遺産

期せずして調達することができた事業資金が企業財務の観点から見て、会社の価値を高めるために使われたのか?それとも価値を貶めてしまうのか?それは資金の使われ方によって判断がつきます。
もちろんコロナ前の会社の財務状況も大きく関連しますので、それぞれの企業においてコロナ資金が会社に与える影響は大きな差がありますが、基本的な考え方はどの会社も同じです。それは、コロナ資金として金融機関から調達した資金が会社の価値、事業の価値を高めるために効果的に使われたかどうかです。単なる損失の補填のみにその資金が流用されたのなら、それは会社の価値を下げてしまう支出であり、コロナ資金を調達するために発生した負債は貸借対照表上の更なる負債の増加となり、負の遺産(負の資産=負債)となり今期の決算書上では借入過多の企業となってしまい、翌期以降も早急な業績改善が見られない場合、借入過多であることからの脱却は当面できないことになってしまいます。

 

 

据置期間のリスク

セーフティネットを初めとする緊急事態における制度融資が危険な所は、その資金の性格上必要なことではありますが、多くの場合、返済の据置期間が設定されていることです。もちろん非常時の資金繰り対策としては、大変有効で役にたつ素晴らしい制度ではありますが、一番の問題は、当然のこととなりますが、据置期間中は借入残高が減少しないということです。これは、前述しましたが、もし仮に早急な業績改善が見られずに借入過多から脱却できない場合、平行してコロナ融資分の借入は借入残高が減らない為、貸借対照表上の負債の全体に対する割合(総資産に対する借入額)を正常値に改善させることが困難であることを示しています。

企業財務の重要性

これらはあくまでも決算書もしくは残高試算表(これらを財務諸表といいます)の数字の問題であって、経営上にはさほど影響がなさそうに感じられるかもしれません。そもそも毎月の月次段階で試算表を定期的にチェックする必要性もそれほど感じられないかもしれません。しかし、この財務諸表の数値の比率(財務指標といいます)を最優先で注目している人たちが存在します。それが金融機関です。企業財務の健全化ほど、対金融機関との関係づくりに有効な施策はありません。

多くの経営者は決算書が完成したら『営業利益』を気にします。税務署や税理士さん、会計士さんは、『当期利益』を気にします。しかし金融機関は、『経常利益』を最も重要視します。そしてそれに合わせて、年間売上(年商)と減価償却費、貸借対照表の財務指標すべてを熟考します。事項以降で、企業財務の重要性と、その具体的な説明に入りたいと思います。

中小企業【アフターコロナ】の資金繰り!《別枠という罠》②基礎知識編

別枠という罠

新型コロナウィルス対策の制度融資を利用した多くの経営者は融資の申込手続きの段階で、金融機関の担当者等から「これは別枠ですから」と何度も何度も念を押されるように説明を受けています。

結論から申しますと、別枠は単なる名称であって本質的な別枠ではありません。緊急事態における支援策として特別な制度融資ですので、融資額や、融資条件については、通常の枠とは異なる別枠と捉えることは出来ます。

しかし融資を受けた企業において、その企業の財務上の評価を決定した時に金融機関等が設定する融資限度額(融資枠)に対しては別枠ではありません。融資限度額は通常の融資額と新型コロナの制度融資の別枠と呼ばれる枠の合算した額が新型コロナの制度融資の貸付時には、その企業の融資限度額となります。しかしアフターコロナになると、融資限度額は上記の特別枠(通常枠+別枠)から、通常の融資額に自動的に減額されます。

分かりやすく説明すると、新型コロナ対策の制度融資による融資額の決定は、通常の資金使途を問わない融資枠(運転資金)に対して、別枠として設定されているため、通常の融資を受ける場合よりは融資額が増える(別枠)傾向にありますが、コロナ後はその増えた枠が元に戻ります

 

 

具体的に言うと、資金使途を問われない融資枠(運転資金)は通常の融資制度においては月商の1~2か月分が限度額となりますが、新型コロナ対策の制度融資の場合は、月商の4~5か月程度まで限度額が広がる傾向が多く見受けられました。文字通り、融資額が通常枠より増加していので別枠と呼ばれます。コロナ融資じゃないと借りることが出来なかった融資額なので、平常時におけるその融資申込企業が金融機関から調達できる資金総額に対しては実力以上の調達となり通常融資限度額を大幅に上回る通算借入残高となりますので、言い換えると平常時とは別枠の資金調達となります。

また金利に関しては、通常は公定歩合を基準とした基準金利に対して、その企業の財務状況を加味して決定を通常はしますが、新型コロナウィルスの対策融資に関しては、要件を満たした企業は業績を問わず、実質無金利の制度を利用することが可能でした。通常金利が適用されない融資という意味で別枠と捉えることも出来ます。

そして、すべての新型コロナウィルス対策の制度融資が一巡して、実質的には大半の企業がこれ以上のコロナ融資を受けることが出来なくなり、制度自体が形骸化、もしくは実質利用不可制度となった今、大部分の中小企業経営者にとって、新型コロナウィルス対策の制度融資により得た恩恵(通常枠を超えての運転資金の調達)は大きな、とても大きな足かせとなり、未曾有経済危機に晒されている現在においては実力以上の負債となりリカバリーすることが難しい負の遺産として貸借対照表において財務指標を圧迫します。

本来なら将来的に調達することが出来たであろう事業資金の不用意な先食いというのが新型コロナウィルス対策の制度融資による調達資金であることになります。

 

中小企業【アフターコロナ】の資金繰り! 《追加融資不可》①基礎知識編

新型コロナウィル対策の各制度融資を利用している場合、原則として当面の間は

追加融資を受けることは難しいというお話を前回しました。新型コロナウィルス

の蔓延に関しては、政府を含めとりまくすべての人々がその終息時期の予測がつかず、

希望的観測のみで初期対応を重ね続けて、そして最終的には当初想定を大幅に超えて、

経済活動に対する悪影響の記録を日々更新し続けているのが現状です。

 

[追加融資が困難となった背景]

おそらく政府としては当初半年から1年以内での完全終息を目論んでいたのではないでしょうか?

なので新型コロナ対策の制度融資に関しても、制度開始時点から最初の半年くらいまでは、

融資申込企業の実力以上の融資額をほぼノーチェックで決済し続けていた節があります。

 

 

各銀行の担当者だけでなく政府系金融機関まで、これは通常の融資枠とは別枠なので、

出来るだけ多めの金額で申込みをしてみましょう!という感じで新型コロナウィルス対策の

制度融資の販売拡大(そう文字通り販売です)を推進し続けていました。
 

  1. まず申込をしてみましょう

  2. 実質無金利の制度が出来ましたので全体を借換しましょう

  3. もう少し枠がとれそうなので、再度全体増額で借換しましょう
     

上記の流れで気が付けば普段だと融資されないような金額が、そんなに手間をかけずに

いつのまにか条件と融資額が微妙に改善されながら増えていったというのが大半の

中小企業経営者の感想ではないでしょうか?

しかし、この通常の枠ではない別枠という言葉は鵜呑みにしてはいけない非常に

危険な言葉です。今後の企業財務を改善する為には、その呪縛から逃れることが

【アフターコロナ】の資金繰り!に於いて最も重要な対応策となります。

新型コロナウィルスの制度融資だけでなく通常の事業資金調達に関しても、

一切の事業資金の追加融資が困難になったのは、魔法の言葉「別枠融資」

原因があることはお察しいただけると思います。

 

1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 最初次のページへ >>