ベイリンが周囲を気にすることも無く、憂鬱な思いで馬をあちこち走らせている間に、1人の騎士がぴったりと彼の後をつけていた。





それはアイルランドの騎士、ランサーだった。

彼もまたベイリン同様、アヴァロンの乙女の剣を所有したいと望んでいて、ベイリンに奇襲をかけようとしていた。

ランサーはいつも策略を練っていた。





ベイリンはとても質素な身なりをしていた。

彼はチュニックを着て、ソフト・ブーツに裾を入れたズボンをはいていた。

剣以外には革の盾しか持っていなかった。








一方ランサーは、つま先から頭のてっぺんまで武装して、ベイリンの後を馬でつけていた。

彼は、高価な兜、くさりかたびらの上には胸当てを身につけ、革手袋をはめ、拍車の付いたブーツをはいていた。




また彼は十分な大きさの盾の後に、すっぽり自分の姿を隠していた。


彼は剣の達人を自負していたが、その上槍を手にしていた。





ベイリンが何度も考えにふけりながら、コナラの林を駆け抜けていたとき、そのアイルランドの騎士は、ベイリンに追いつくため馬にムチを打って叫んだ。

「止まって武器を捨てよ!

さもないと命の保障は無いぞ!!」





この言葉でベイリンは馬を止め、追跡者を見るため振り返り、こう答えた。

「俺はそう簡単には降参しないぞ、騎士さんよ、

おまえの顔をおがませてもくれないのに。

この剣はフェアな戦いで勝ち取るべきであろう!」





「私は緑の丘の島、アイルランドから来たランサーだ。

おまえがアヴァロンの乙女に対して行った侮辱を晴らしに来たのだ」





アイルランドの騎士はそう言いながら、既に槍のねらいを定め、ベイリンに突進して行った。


槍がものすごい力で革の盾を貫いたとき、ベイリンは腕の力だけでその一撃をかわした。




ランサーは地面に転がり、立ち上がる前にベイリンは彼を組敷いた。


新しい剣を敵に向かって使うのは、これが初めてだった。




彼は突然容赦ない激怒に取り付かれ、考えもなく剣を振り下ろした。


ランサーが息を引き取ったと気がつくまで、つかの間必要だった。




森の小道にギャロップで1人の騎手(それは女性だった!)が、到着したのはそのときだった。


「ああ、、あなたは何てことをしてくれたの?」彼女は叫んだ。

「私がどれだけランサー卿を愛していたかも知らないで!!」





ベイリンが答えようとしたとき、目の前に今1度、流血シーンが繰り広げられた。


その女性は馬から降りると、地面にじっと見据えた先にランサーの剣を見つけて、その上に自分の全体重をかけて横たわった。


そうして、彼女の身体は愛する人のそばの草わらに横たえた。








つづく