A'sW3-55 天馬とともに(1)
「徹さん、今 船橋法典駅から、競馬場に入りました。パドックってどの辺です?」
「結構あるよぉ。コースを縦断してきて」
「茜ちゃん、よくすぐに、この『ハイセイコー像』が分かったね。凄いや」
「ハァハァ。もうどうしたんですか、この前の木曜日に、いきなり中山競馬場行こうって…」
「いやぁね。どうしても見てほしいレース、と言うか、お馬さんがいてね」
「私、中山競馬場 初めてだったから、迷っちゃいましたよ」
「俺も、茜ちゃんがどうやったら一番早くココまで来れるか分からなかったから、とりあえず武蔵野線ぐるっとまわるコースしか分からなかった」
2人は中山競馬場のスタンドに入った。
「なんか、いろいろ乗り替わり、って放送が流れてますね」
「あのね…俺も昼過ぎに到着したから、そのレースは見てないんだけど……、4レースで大きな落馬事故があったらしいんだ。なんでも9頭落馬したらしい……」
「9頭…… 馬や騎手は、大丈夫なんですか?」
「分からない。とりあえず、騎手は怪我してる人がいるから、乗り替わりが出てるみたい」
「そのせいかな……何か空気が重いような気がするんですけど」
「うん、間違えなく重い。。。」
9レースが始まるころ、瀬田徹は山下茜をパドックに連れ出した。
「レースは見ないんですか?」
「もう、次のレースの馬が周回しているはずなんでね」
「あの9番が、俺が注目している『ジャミール』。僕が注目している馬なんだ」
「へぇ。どうしてですか?」
「昔ね、僕が大好きだったステイゴールドっていう馬の仔で、注目株の馬なんだ。ココを勝って、大きな舞台に行って欲しいな」
「ステイゴールドって…有馬記念を勝ったドリームジャーニーと同じお父さんなんですか?」
「お、詳しくなってるね! そういうこと。俺はステイゴールドLOVE、だからね」
「じゃあ、ドリームジャーニーの弟なんですね」
「残念ながら、違うんだ。競走馬の場合、お母さんが一緒だと兄弟っていうんだよ」
「へぇー、なんでなんですか?」
「まぁ、人間が決めたことなんだけど。だってディープインパクトなんて、1年に140頭も種付けしてるからね。お父さん基準だと、とんでもない数の兄弟数になっちゃうから」
「ふーん」
「とにかく。この馬ね、初勝利をあげてから、3着を外したことがないんだ。成績が安定している。ココは1番人気、
今のところ2.2倍だけど、確実に勝ちあがってほしいね」
「私も応援しますね」
2人は馬券を購入し、スタンド前に出た。
中山10レース、迎春ステークス(芝2500m、1600万下条件)。
レースは、徹の応援するジャミールが2着に3/4馬身の差をつけ、快勝。明け4歳で準OPを勝ち、オープン入りを果たした。単勝の最終的な配当は210円。
「徹さん、やりましたね!」
「言ったろ、ココは勝つって。嬉しいなァ。今まで関東で見られなかったからね。
それよりも次のメインレース、茜ちゃんに見てもらいたかったんだ。急いでパドック行くよ!」



