A'sW3-33 JC直接対決(1)
2009年11月29日。徹は不可思議で、不可解な気持ちだった。ジャパンカップ開催日、徹は茜を誘ったが、外せない用事があるとの事だったので、久々の1人ケイバになるはずだった。それが、前夜の皇騎からの電話で一変する。
「明日、昼の1時になってしまいますが、一緒に競馬観戦できませんかねぇ?」
「はぁ??? ゆかりは?」
「残念というか、私1人です。まぁ男だけでも2人で見る方が競馬も面白いですし。あ、茜さんいますかね」
「茜は来れないらしい、とは聞いている」
「ンフフフ、今回はその方が好都合かもしれません。とくかく、一緒に競馬を楽しみましょう」
午後1時、待ち合わせ場所はローズガーデンの女神像の前。徹は、ゆかりとの待ち合わせ場所を皇騎に指定されたことが腹立たしかったが、おとなしく待つことにした。
遅れること10分、とくに急ぐ様子もなく、皇騎は現れた。
「いやはや、私が指定した時刻に遅刻して申し訳ないですねェ」
「中原さん、アナタと2人で競馬観戦するなんて、思ってもいませんでしたよ」
「ンマァ、話があったんで、大きなレースもあったんで、今日が良いかなと思いまして。しかし国際GⅠ。すでにだいぶ混んできてますねェ」
2人はスタンドには行かず、ローズガーデンの中のベンチに腰を下ろした。
「ゆかりさんの近況、聞きました?」
「ゆかりがどうしたって??」
「その様子では聞いてないようですね。私はヘンに思いましたよゥ、前回のゲームの結果発表が木曜日になったことを。すぐに電話をしました。風邪をこじらせた、と言ってました」
「ゆかりが…風邪を… 俺もヘンに思ったんだけど、つい忙しくて」
「言い訳になりませんね。本当に恋人だったら、急いで駆け付けるでしょう? たとえ風邪がうつっても。愛する人の異常には気付かないとねェ」
「あのゲームの『ご褒美』が終わってから、どうも気が抜けてしまって」
「あのゲームと関連していなかったら、会ってはいけないんですか? アレは完ぺきに統制されたゲームではないんですよォ。とはいえ、私も会ってないので、偉そうなことは言えませんけどねェ」
徹は、返す言葉が出てこなかった。唇をぐっと噛みしめる。
「瀬田さん、二度目にお会いする私が言うのは失礼ですが、少し鈍感ではないですか? もしかして、茜さんのことも気づいてないのでは?」
「本当に失礼だな。。 茜?」
「茜さんは、貴方が好きですよ。1か月前、数時間見ただけで分かりましたよォ、私にはねッ」
徹は、何も感じていなかったわけではなかった。浦和で、徹は酔っ払っていたが、茜の視線は常に感じていた。
だが、現段階では茜はただの気のしれた友達であり、気になっているのは、あくまでゆかりだ。
「茜は関係ない! だいたい俺と茜の仲が、アンタに何の関係があるんだ?」
「大ありですよォ。瀬田さんと茜さんが結ばれる。そうすれば私は気兼ねなく、ゆかりさんは私を選ぶことができる」
「冗談も程々にしないと、許さないぞ」
徹はすくっと立ち上がり、両拳を固めた。だが皇騎は気にすることもなく、話を続けた。
「マァ、お怒りになるのは分からないでもない。今の貴方が黙って引き下がるとは、私も思っていない。でも貴方と私はライバルですよォ。相手をけん制するのは当然ですよネ」
「アンタに何か強みがあるのか? 俺は、アンタより前からゆかりを知っている」
「貴方が、ゆかりさんのことをどれくらい知っているかは、この際問わないことにしましょう。
私には、自慢になってしまいますが、財力があります。彼女の状況はご存じですよね? 仕事がなくなり、実家に半ば強制的に連れ戻され、親御さんから早期の結婚を嘱望されています。彼女の実家を調べましたが、ナカナカの名家のようです。気が早いと言われるかもしれませんが、私と結婚することが彼女の幸せに思えてならないのですよォ」
徹は立ったまま、皇騎を見て凄んだ。
「んなこと言ったって、俺は引き下がらないぞ」
「ンフフフ、それでこそライバルです。ただ、貴方はノンビリ屋のようですね。出会ってから1年以上の月日があったのに、恋人にはなれなかった。もう、今のゆかりさんは、そんな悠長なコトは言ってられないと思いますね。
ゲームは今日を含めてあと5戦となりましたが、我々の戦いも、これから短期決戦になると思いますよォ」
徹は何も言わずに、皇騎を睨み続けた。
だが、心の中では挫けそうな気分だった。徹は皇騎の言葉に対しても恐怖を感じたが、それ以上に皇騎の姿にオーラのようなものを感じた。
立っている徹と、座っている皇騎。だが、座っている皇騎の顔が上に見えるような錯覚まで起こしてしまった。
徹は目を何度もこすり、座っている皇騎を見下ろした。