A'sW3-30 浦和デート(1)
祝日の午前11時すぎ、JR南浦和駅に着いた徹。すでに茜は東口ロータリーにいた。
「おはよう、茜ちゃん。あ、ちょっと待って」
徹は、競馬新聞を購入。勝手を知っている茜に、バス乗り場まで連れていかれた。車中、徹は茜と他愛のない話をしていた。
「茜ちゃんはケイシュウね。俺は日刊。赤ペン持っちゃって、すっかり競馬に染まったね」
「う~ん、何の因果なのかしら。。。まさか浦和競馬場に2回も来るとは思ってませんでしたよ」
「今日、浦和を指定したのは、茜ちゃんだからね」
バスは5分ほどで浦和競馬場に到着した。
「なんか、雰囲気は船橋に似てるなぁ。大井や川崎に比べると、だけど」
茜は何も返せなかったが、そんな素振りは徹の目には全く入らなかった。徹は周りを見回しながら、スタンド横を通り抜け、ダートコースまで歩いていった。
「うわ、コースが近っ! やっぱりこじんまりしてるね」
「府中と比べるからですよ」
「まぁあそこは別格だからね。え? 左回りでゴールの手前に⑬、⑭のハロン棒? 1周1200mってことか」
徹がドンドン感想を口に出す。2回目の茜は、ただ聞いているだけだった。
「とりあえず、4レースやってみようかな。新聞見て考えようっと」
徹が新聞の中身に没頭している。茜も仕方なく、4レースの検討を始めた。
「うーん、分かんない。新聞の印通り買おうかなぁ」
「小回りダートって言うと、先行馬有利ってイメージがあるんだよね」
スタンドの中に入り、マークシートを手にして、すぐに記入をする徹。茜が不思議そうに見ていた。
「初めての競馬場で、すぐにマーク方法分かるんですか? 府中とは違うのに」
「南関東の競馬場は、マークシート共通だよ。あ、大井と川崎と船橋、そして浦和ね」
2人とも馬券を購入し、4レース、1400m戦を観戦しにコース側に戻った。
「私もダメです。やっぱりパドック見た方が良いですね」
「そりゃそうか。さすが、競馬通」
茜の顔が、若干赤くなった。
「一緒にきてほしい場所があるんですけど」
茜はそう言うと、スタンドを通り抜け、屋台村のような飲食店エリアに出た。
「ここね、ビールとともに、きゅうりは絶対食べてください。ね!」
「きゅうり? 茜ちゃん昼間から、ビール飲むの?」
「私は酎ハイ。焼き鳥とかもおいしいですから」
茜はいつの間にか、売り場で「きゅうり2本!」と注文していた。
徹は仕方なく、別の場所でビールと酎ハイを購入した。
振り返ると、茜が机を確保していた。
「ちょっと待ってください。焼き鳥と、かきあげも買ってきますから」
戻ってきた茜に、徹は声を掛けた。
「これは、新城の影響?」
「ハイ、きゅうりは そうです。新城さんのお勧め。でも私も仕事の付き合いとかで、焼き鳥屋とか行きますよ」
「へぇ。茜ちゃんも人づきあい大変そうだね」
「たまには昼間っからアルコールも欲しくなりますよ。でも今日は、デートってとこが嬉しいな。じゃ、乾杯しましょ」
突然出てきた「デート」という言葉に徹は戸惑いを感じたが、茜と紙コップをくっつけた。
「きゅうり、味噌につけると本当美味しい。これ、1本100円ですよ」
「茜ちゃん、オヤジ化してない?」
「ひどーい、その一言。これでも乙女ですからね」
「俺、このかき揚げ、めっちゃ好きだわ」
「あ、はぐらかされた。でも、それってなんか、いいカンジぃ」
茜が満面の笑みを浮かべて、酎ハイを飲んでいる。
ゆかりのことを切りだそうとしたが、そんな雰囲気ではなかった。
徹は競馬新聞を広げて、馬券の検討をすることにした。




