A'sW3-29 デートしよ
徹は土曜日も休日出勤を余儀なくされた。
せっかくの3連休をゆっくりすることはできず、また得意先に挨拶する必要が発生した為、休日にも関わらずスーツで出勤した。
18時に仕事を終え、帰りに東スポを買って、馬券と【ANGEL's WINE】について考えを張り巡らしていた。一方、疲労はピークに達し、翌日は自宅でTV観戦するかと考えていた。
寄り道せず真っすぐ帰宅した徹は、一昨日の深夜にスーパーで購入したボジョレー・ヌーボーのボトルを冷蔵庫から取り出し、残りを飲み始めた。少し冷えすぎていたが、かまわず飲んだ。
酔いが早くまわりだし、睡魔に襲われたころ、携帯電話が鳴った。「CALLING:山下 茜」と表示されている。
「もしもし~。こんばんは」
「あぁ、茜ちゃん。元気ィ?」
「元気ですよ。徹さん、酔ってます?」
「酔ってますよぉだ。ボジョレー、飲んでますぅ」
「ボージョレ・ヌーボーですよ。正しい発音は」
「ん? ワイン通のゆかりも『ボジョレー』って言ってたよ、この前」
「大学で第2外国語をフランス語にしてた私が言うんですから、間違えないですよ。ゆかりと話したんですか?」
「一昨日。ボジョレー、じゃなかった、ボージョレ・ヌーボーの解禁日の夜にね」
しばらく間があいた。溜息のような音が聞こえた後、茜の異様に明るい声が、徹の耳に入った。
「ねぇ徹、デートしよ」
コントのように、徹は口の中のワインを噴き出した。
「はぁ???!!!」
「何か不満? この前、デートに誘ったのは、徹だよ」
「ちょっと待て。なんだ、この突然の展開は」
「この前、突然デートに誘ったのは徹じゃない。今度は私から、デートのお誘い!」
「茜ちゃんも酔っ払ってるの??」
「アルコールは入ってるけど、真剣だよ。大丈夫。競馬場デートだから、徹の得意分野」
「俺、明日はゆっくりしようと思ってたんだけど…雨降って寒いって話だし…」
「違うよ。明後日。浦和競馬場だよ」
今度はつまみのチーズが喉に詰まった。咳きこむ徹。
「大丈夫??」
「なんとか。。。てゆーか、俺、浦和競馬場に行ったことないんだけど」
「大丈夫。私は行ったことあるから。明後日、休みだよね?」
徹は、2日前のゆかりとの会話を思い出した。ゆかりは、茜のことを気にしていた。茜の真意は分からなかったが、酔いも回り、徹はまともな判断ができそうにない。
「新城が一緒にいるとか、そんなことない?」
「ないない。休みなら、いいでしょ?」
「あー。行きましょう! 浦和まで!!」
「やったぁ! じゃあね、月曜日ね……」
待ち合わせの時間や場所まで指定され、電話は切られた。
5分後、浦和競馬場までの行き方が記載されたメールが、茜から届いた。
「茜ちゃんって、こんな子だったっけ?」
頭の中がハテナでいっぱいになったが、徹はもう、深く考えないことにした。