A'sW3-18 再会の秋天(4) | Bisah's Blanket 【馬龍DEN】

A'sW3-18 再会の秋天(4)

「もう、競馬しよ、ケイバ!」 ゆかりが痺れを切らしたように、声を上げた。4人はレストランを後にした。

____________


14:45。まだ準メインレースが発走してなかったが、パドックは既に人でごった返していた。

4人はスタンド3階から、パドックを見ることとした。天皇賞(秋)出走馬が、周回を始めた。
Visaa's Blanket【ANGEL's WINE】-パドック全景
Visaa's Blanket【ANGEL's WINE】-ウオッカ@パドック Visaa's Blanket【ANGEL's WINE】-カンパニー@パドック

皇騎は一眼レフのカメラを取り出し、シャッターを切り続けていた。アウトレットで買ったデジカメしかないは、差をつけられた気分になった。

____________


15:40。10万人を超す大観衆の中で、GⅠ ファンファーレが鳴る。ゆかりはともかく、皇騎もファンファーレに合わせて手を叩いていた。これまでの皇騎の姿を考えると、意外な気分になっただったが、自分も丸めた新聞で音を立てていた。


約2分後、決着はついた。1年前のような、10分を超す判定はない。8歳馬・カンパニーが、13度目のGⅠ挑戦にして、初の優勝。勝ち馬はウィニングランがマトモにできないほど、興奮していた。

Visaa's Blanket【ANGEL's WINE】-横典ジャンプオフ

「俺の夢・ドリームジャーニーは……掲示板に乗らなかった」 徹は肩を落とした。

「私もウオッカから馬連で流してたから、残念でしたぁ」 ゆかりは明るい声だったが、悲しげな顔をしていた。

「カンパニーの単勝、押さえてました。少々のプラスですな」 皇騎は落ち着いた声をしていた。

「あ…3連複 当たってる!」 茜が大きな声を上げた。

「もしかして、あの『ホースなんとか』の買い目?」

「そうです。もちろん、100円しか買ってないですけど」

「何ナニ? 『ホースなんとか』って」 ゆかりが、の会話に口を挟む。

「茜、あのゲームに積極的に参加するために、競馬予想サイトに金払ってるんだ。新城の『罠』にはまってね」

「フフフ、新城さん、また何か怪しい活動してるんですね。まぁ儲かったなら、OKでしょう」 皇騎は余裕の笑みだった。

____________


最終レース終了。風が強く吹き付け、日中の暑さから肌寒い空気が流れてきた。皇騎が、換金から戻ってきた。

「ゆかりさん、ごめん、今日はこの後は用事があるんだ」

「ええーーーーっ! せっかくの機会なのに…」 皇騎の言葉に ゆかりは大声を出し、肩を落とした。

「どうぞ、『残念賞』の邪魔者はオイトマしますので、3人で祝勝会?でもしたらどうですか」

「ううん、興樹がいないなら、今日はオシマイ」


は驚き、焦りを感じた。だが、言葉が出てこない。

「今日はね、レースがウオッカを巡っての牡馬の戦いだったと同様に、私という牝馬を巡っての、興樹と徹の熱い戦いが見たかった。馬券は興樹が僅差で勝ったみたいだけど、まぁ引き分けみたいね」

「ゆかり……」

「徹、悪いけど『ご褒美』はオシマイ。でも、楽しかった。生観戦は、やっぱりイイね」

「ゆかりさ、今日はお開きなのは分かった。でも、お願いがある。新しい携帯の番号と、アドレスを教えてくれないか?


ゆかりが黙っている。は続けて言った。

「俺はこのままだと、また『紫さん』としか話ができない。ゆかり、お前ともっと話がしたい。お願いだ」

「・・・・・・・・・・・・もちろん!」 にとっては長い沈黙に感じたが、ゆかりは明るい顔でOKの返事をくれた。

「それともう1つ」 徹は、今度は皇騎の方に向かって口を開いた。


「皇騎さん、貴方とも連絡先の交換がしたい。よく分からない因縁だけど、貴方とはライバルになったみたいだ。ライバル同士、情報交換したい」

「んー。何が狙いか分かりませんが、かまいませんよ。ただ仕事にも使う電話なので、できればメールで連絡ください」

「待って、私も皆さんと連絡先を交換させてください! ゆかりはもちろんだけど、皇騎さんも」

が突然割り込んできた。ゆかり皇騎も、そしてまでも驚いた顔をしたが、4人は携帯電話の連絡先を交換した。


「では、私は帰りますね。ゆかりさん、今日のゲームの結果更新、楽しみにしてますよ」 そう言って、皇騎は西門の方へ去っていった。

「私も…帰るね」 そう言うゆかりを呼び止められない、は自分自身に苛立ちを感じた。


「あ、そうそう、茜、ちょっとこっち来て」 ゆかりを呼び寄せ、耳打ちをしている。の顔が紅潮していくのが分かった。

「じゃ、連絡先も交換したことだし、また会えるとイイね」 そう言って立ち去ろうとしているゆかりに、は手を振ることしか、できなかった。必死の思いで、一言だけ口にすることができた。

「バイバイ、ゆかり」