A'sW3-14 言いだせなくて
徹は28日の午後から出社した。風邪は完治していなかったが、体調は徐々に戻りつつあった。
28日の夜、紫からのメッセージが徹に届いた。
「こんばんは♪
いよいよ今度の日曜だね~。秋の天皇賞。
去年のことを思い出すと、なんか1年ってあっという間の気分がする。あのレースは、凄かったね(^O^)
今年は牝馬1頭だけだけど、ウオッカ応援するよ。スカーレットちゃんのためにも、勝ってほしい。
で、肝心?(笑)の『ご褒美』だけど、朝11時待ち合わせでいいかな?
場所は……言わなくても分かるよね。楽しみにしてマース。
P.S. 【A'sW】、今はナナガイキに勝ってる~。このまま逃げ切ろうっと♪」
徹は返信に困った。伝えたいこと、聞きたいことがたくさんあった。
茜のこと、皇騎のこと、新城が言ってた【ANGEL's WINE】のもう1つの狙いのこと……
そもそも、ゆかりが何故 姿を消したのか…
文章がまとまらず、体調のこともあって、返信せずにその日は就寝した。
翌日、出勤途中の電車の中で、携帯電話から返信を紫に送信した。
「昨日は即レスできなくてゴメン。ゲーム同様に俺、ちょっと体調崩してて。
でも秋天に向けて調整していきます。あの伝説のレースから1年。でも俺には長い1年だったよ。
だって、ゆかりがいないんだもん。スカーレットが引退きめたくらいから、ゆかりと逢ってない。
11月1日。念願のダイワスカーレット、じゃなかった、間野ゆかり様に逢える。
レースも もちろんだけど、『ご褒美』めっちゃ楽しみです。
待ち合わせの件は了解。勝利の女神がほほ笑むこと期待しちゃいます。ではでは~」
……結局、何も書けなかった。携帯電話で長文を書くことが苦痛であることもあったが、結局 頭の整理ができなかったのが徹の本心だ。
「逢ったら、直接聞いてみよう」と徹は自分に言い聞かせた。言い聞かせないと、11月1日にも何も分からない、とうことになりそうだと思う、弱気の自分に負けそうだったからだ。