A'sW3-9 茜と府中にて(3)
「あ、当たってる! ④番のお馬さん、来たんだ~」
「え? ムードインディゴ買ってたの? 何がいくら当たったの?」
「馬連で、100円。一応、『ホースグリッター』の推奨馬で5点、買ったんです」
府中牝馬ステークス。茜は、胡散臭いサイトのおかげで約50倍を的中させた。
続いて、京都の秋華賞。レッドディザイアとブエナビスタの歴史に残る7センチ差の決着…にミソがついた。
ブエナビスタの3着降着。茜は降着の理由が分かっていなかったが、馬券不的中。
「俺は3連単当たったよ~。でもなんか、後味の悪いレースだなぁ」
「ブエナビスタって、3冠かかってたんでしょ?」
「あら、本当に勉強してるんだね。まぁ降着なくても2着だったから、3冠はダメだったけどね」
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東京競馬場を後にした徹と茜は、京王線の府中駅近くにある喫茶店に入った。
2人とも収支はプラスだったが、茜がお酒を飲む気分ではないと言うので、ひとまず喫茶店にした。
喫茶店では、徹が先生として 競馬の講義を茜に対して行った。
テーマは「進路妨害による降着、失格」。
1991年の天皇賞(秋)におけるメジロマックイーン、1996年エリザベス女王杯のヒシアマゾン、2001年の京都大賞典におけるステイゴールド、そして2006年エリザベス女王杯のカワカミプリンセスを代表例として挙げた。
茜は、競馬マニアの長い講釈を、メモこそしなかったものの、大学の講義をマジメに聴く学生のように、真剣に耳を傾けていた。
1時間を超える講義を終えてしゃべり疲れた徹は、茜を近くのラーメン屋に誘った。
「デートの〆がラーメンってムードないよね。でもココのラーメン、美味しいでしょ」
「ハイ、こってりしてるけど、そんなにしつこくないですね」
「タメ口でいいよ、デートなんだから」
ラーメンを完食した徹は、隣の茜を見て後悔した。茜はまだ、半分しか食べられていなかった。相手に合わせる配慮のない自分を、心の中で責めた。
そんなことは気にせず、マイペースで麺を啜っていた茜が、徹に話しかけた。
「そういえば、ゆかりと行動を一緒にしているヘンな男がいるって、言ってましたよね。その人は、皇騎さんらしいですよ」
「コウキ? 誰?」
「あの【ANGEL's WINE】で、この前まで私、というかユーカリと最下位争いしていた人。新城さんがこの前、メッセージをくれました」
「何者なの? 新城が何故、そんなこと知ってるの?」
「さぁ…多くは語りたくないって、詳しくは教えてもらえなかったんですけど。。。」
スープを飲み始めた茜から視線を外した徹。
皇騎……また謎の人物が増えた。
ゆかりとの関係は? 新城との関係は?
いくら思案しても答えは出てこない。いつの間にか茜は食べ終わっていた。ラーメン屋を出て、2人は2週間後の再会を確認しあって、それぞれの帰路に向かっていった。