A'sW2-61 中山で最終決戦
9月最終日の激務を終え、一人外食で夜のお腹を満たした徹は、帰宅が0時を回っていた。
デジタル時計は既に10月1日を示していた。
徹はPCでSNSを見ていた。あの【ANGEL's WINE】スレッドも、とくに変化なし。ブラウザを閉じようとしたその時、メッセージを着信した。
「ロイス3さんが、あなたをチャットに招待しています。参加される場合はこちらへ」
そういえば、10月1日からSNSにチャット機能が付いたらしい。早い話、ログインしている人同士なら、片方が招待状を出し、相手が答えればチャットルームに入れる仕組みだった。
怪訝に思った徹だったが、チャットルームに入室した。
「やぁ、ナナガイキさん。できたばかりの機能だけど、少し話をしようよ」
「そんなに遅くまでつきあえませんよ、ロイス3さん」
「では手短に行こうか。偽者のマノユカリさんは分かった?」
「証拠はないけど、だいたい分かりましたよ。ゆかり、つまり紫さんの大学からの女友達。動機も不明ですが」
「こっちは名前も証拠もあるよ。ユーカリの正体は山下茜さんだね」
徹はキーボードを叩く手を少し止めた。なぜ、あのロイス3はユーカリの正体が分かったんだ? 徹ともゆかりとも1回しか会ったことのない人間が、何故、茜にたどり着くことができたんだ???
「僕は茜さんだと思ってますが、確証はありません。何か確証があるんですか? 教えてください」
「証拠はあるって。でも、ここでは教えられない。説明が長くなるからね」
「長くてもいいです。教えてください」
「夜が明けちゃうよ、こんなチャットでは。…それよりも提案がある。今度の日曜、中山競馬場に来ないか?」
「スプリンターズSの日ですか?」
「そう。そこで、話をするよ。ついでにあのゲームの第2ピリオド・トップ2、最終決戦を直で競おうではないか」
「……………いいですよ。先週も行ったけど。ゲームも気になるけど、茜のことがもっと気になるので……」
「商談成立。待ち合わせ時刻と場所は、追ってメールするよ。アドレス知ってるから、メールでイイよね」
「了解です」
「では、俺も寝るとするよ。じゃあね、瀬田さん。おやすみなさーい Zzzzzzz」
ロイス3のペースで一方的にチャットは終了した。ロイス3、相変わらず謎の多い男だ。しかし田無で会ったイメージでは、こちらに害を及ぼす人間ではない。徹は自宅から遠い中山に2週連続で行くことに乗り気ではなかったが、ここは行くしかないと考えることにした。