A'sW2-60 嘘のつけない女
「山下です。お会いしてから1ヶ月以上経ちましたが、ゆかりについて何か分かりましたでしょうか? 大学時代の仲間たちも心配していて…… 情報ありましたら教えてください」
茜とは、そろそろ話すべきころだと思った。返信はせずに、夜10時ごろに徹は茜の携帯電話に電話した。
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「ゆかりは元気みたいだよ。夏は新潟に行って、シルバーウィークは関西に行ってたみたい。なんか、新しい男友達ができたみたい。なんか厭になっちゃうよ」
「そうなんですか。元気なのは良かった。大学時代の友人に伝えますね。でも、ゆかりが新たに男友達を作るなんて、少し意外です」
「その男友達が何者なのか、分かってないんだけどね。まぁちゃんと俺達ちゃんとつきあってたわけではないしね。
ところで茜さんは、休日とか何しているの?」
「わ、私? 私のことはどうでもいいですから…」
「いや、ゆかりが居なくなって、淋しいのは茜さんも同じだろうからさ、聞かせてよ」
「私はとくに……インターネットにカキコミしたり、ちょっと勉強はじめたりしてますね」
「へぇー。何の勉強しているの?」
「いや、ちょっと、始めたばかりなので、言うのは、は、恥ずかしいです。明日早いので、そろそろ失礼しますね」
電話は一方的に切られた。
徹は思った。山下茜は基本的に嘘がつけない女だ。嘘をつくとき、必ず不器用になる。
間違えない。ユーカリの正体は山下茜だろう。
インターネットにカキコミするというのは【ANGEL's WINE】への投票のことだろうし、勉強とはおそらく、競馬に関して何らかの勉強をしているのだろう。ユーカリの投票スタイルが変わったのは、その勉強によるものだと思った。
だが…競馬ド素人の茜が、どのように勉強しているのか。そして何故【ANGEL's WINE】に参加し、ゆかりを名乗って徹に接触してきているのか。この2点については謎のままであった。