A'sW1-1 消息不明
―――――ゆかりは、どこへ行ってしまったのだろうか――――――
瀬田徹は、悲しみと淋しさと、やり場のない怒りなどのネガティヴな感情で、頭が混乱していた。
自分にとってかけがえのない存在となっていた間野ゆかりと、突然連絡が取れなくなったのだ。
約1年前に競馬を通して知り合った徹とゆかり。 2人で競馬場へ足しげく通い、競馬以外でも一緒に遊ぶことも増えていた。まだ告白はしていなかったが、徹にとってゆかりは恋人同然の存在だった。
だが、ゆかりは姿を消した。1人暮らしのアパートは突然もぬけの殻になっていた。携帯電話もつながらなくなっていた。
ゆかりは勤めていた会社も退職していた。共通の友人に連絡をとっても、居場所は分からなかった。
徹は、ゆかりと「恋人」になっていなかったことを悔やんだ。ゆかりの親族の連絡先を知らなかった。
家出人ではないので、警察をあてにすることはできない。徹はいくつかの探偵事務所、興信所を訪ねた。だが、扱いは「失踪人捜索」となり、手がかりも少ないことから、徹に依頼料を支払えるだけの金銭的余裕はなかったため、断念した。
ゆかりが姿を消してから約2か月。徹は迷走していた。仕事も手につかず、気を紛らわすために友人と飲みに行っても、八つ当たりをして喚き散らす醜態をさらしていた。
自力で探すことの限界を感じた徹は、ネットの掲示板に情報を求めるコトまでしていた。もちろん写真は掲載しなかったが、細かい情報まで掲載していた。しかりリアクションは冷やかしやウソに塗れたもので、徹はさらに落ち込んだ。
「僕とゆかりをつなぐもの…それは競馬しかない」
原点に立ち返った徹は、毎週土曜・日曜に競馬場で ゆかりを探しまわった。平日は、インターネット上の競馬コミュニティにゆかりが出入りしていないか、チェックしていた。しかし、ゆかりは競馬場に現れず、また無限の奥行きをもつインターネットの世界で、ゆかりらしき人物を見つけることは絶望的だった。