2022年1月に改正され、2024年1月から義務化された「電子帳簿保存法」は、企業の経理業務に大きな影響を与えています。この法律は、これまで紙で保存が義務付けられていた帳簿や書類の電子データでの保存を認めるものです。しかし、ただ単に電子化すれば良いというわけではなく、厳格な要件を満たす必要があります。特に、2024年からは「電子取引データ」の電子保存が完全に義務化され、紙媒体での保存が原則として認められなくなりました。これにより、多くの企業が対応に追われているのではないでしょうか。
「電子帳簿保存法」と聞くと、難解な法律だと感じるかもしれません。しかし、適切な理解と準備があれば、決して難しいものではありません。むしろ、この法律に適切に対応することで、経理業務の効率化やコスト削減、さらにはガバナンス強化といった多くのメリットを享受することができます。例えば、書類の検索性が向上したり、保管スペースが不要になったり、ペーパーレス化による印刷コストの削減なども期待できます。また、BCP(事業継続計画)の観点からも、災害時に紙の書類が失われるリスクを回避できるという利点もあります。
本記事では、バーチャルオフィスを利用して起業した事業者やこれから電子帳簿保存法への対応を検討している方や、すでに一部対応しているものの、さらに理解を深めたいと考えている方のために、電子帳簿保存法の基本から、対象となる書類の種類、そしてそれぞれの保存要件について、初心者でも分かりやすく、かつ専門的な視点から徹底的に解説していきます。特に、多くの企業が頭を悩ませているであろう電子取引データの保存要件については、詳しく掘り下げていきます。本記事を読み終える頃には、電子帳簿保存法への理解が深まり、自社でどのような対応が必要か、具体的なアクションプランを立てられるようになるでしょう。ぜひ、貴社の電子帳簿保存法への対応の一助としてご活用ください。
電子帳簿保存法とは?基本を押さえよう
電子帳簿保存法は、正式名称を「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」といい、企業の国税関係帳簿や国税関係書類を電子データとして保存することを認める法律です。この法律は、企業の経理業務のデジタル化を推進し、事務負担の軽減や効率化を図ることを目的としています。2022年1月の改正では、特に電子取引データの保存が義務化され、猶予期間を経て2024年1月からは完全に適用されています。この法律に対応することは、もはや企業の義務であり、適切な対応が求められます。電子化によって、従来の紙ベースの管理と比較して、書類の検索性の向上、保管コストの削減、紛失リスクの低減など、多くのメリットが期待できます。また、テレワークの普及により、物理的な書類のやり取りが困難になる中で、電子化されたデータは業務継続性の確保にも貢献します。
電子帳簿保存法の目的と対象者
電子帳簿保存法の目的
電子帳簿保存法の最大の目的は、企業の会計業務におけるペーパーレス化を促進し、業務効率を向上させることにあります。従来の紙媒体での帳簿や書類の保存は、保管スペースの確保や、必要な書類を探し出す作業に多大な時間とコストを要していました。電子化を進めることで、これらの物理的な制約から解放され、企業はより効率的な経営資源の配分が可能になります。また、税務調査時のデータ提出も容易になり、調査の迅速化にも貢献します。さらに、データの一元管理により、内部統制の強化にも繋がり、不正防止にも効果が期待できます。環境問題への意識が高まる中、紙の使用量を削減することは、企業のCSR(企業の社会的責任)の観点からも重要視されています。
電子帳簿保存法の対象となる事業者
電子帳簿保存法の対象は、法人、個人事業主を問わず、すべての事業者です。所得税法や法人税法に定められた国税関係帳簿や書類を作成・保存する義務がある事業者は、全てこの法律の適用を受けます。特に、2024年1月からは電子取引データの保存が完全に義務化されたため、電子メールで請求書や領収書を受け取ったり、クラウドサービス経由で取引を行ったりする全ての事業者が対象となります。これは、売上規模や事業形態に関わらず適用されるため、小規模な個人事業主であっても例外ではありません。電子帳簿保存法への対応は、もはや一部の大企業だけの問題ではなく、あらゆる規模の事業者が喫緊で取り組むべき課題となっています。適切なシステム導入や社内体制の整備が不可欠です。
3つの保存区分「電子帳簿等保存」「スキャナ保存」「電子取引データ保存」
電子帳簿保存法は、保存する書類の種類や作成方法によって、大きく「電子帳簿等保存」「スキャナ保存」「電子取引データ保存」の3つの保存区分に分けられます。それぞれの区分で求められる要件が異なるため、自社で取り扱う書類がどの区分に該当し、どのような要件を満たす必要があるのかを正確に理解することが、電子帳簿保存法への適切な対応の第一歩となります。これらの区分を理解することで、過剰な対応を避け、効率的なシステム導入や運用が可能になります。
電子帳簿等保存とは?
電子帳簿等保存とは、会計ソフトやERPシステムなど、電子的に作成した帳簿や書類を、データのまま保存することを指します。具体的には、仕訳帳、総勘定元帳などの主要な帳簿や、会計ソフトで作成した請求書、領収書などの書類が該当します。この区分で保存する場合、データの真実性(改ざんされていないこと)と可視性(すぐに内容を確認できること)を確保するための要件が求められます。例えば、訂正・削除履歴が残るシステムの利用や、検索機能の確保などが挙げられます。優良な電子帳簿として認められると、過少申告加算税の軽減措置などのメリットも享受できます。多くの企業が導入している会計ソフトは、すでにこれらの要件の一部を満たしている場合が多いですが、改めて自社のシステムが電子帳簿保存法の要件をクリアしているか確認が必要です。
スキャナ保存とは?
スキャナ保存とは、紙で受領または作成した書類をスキャナーで読み取り、画像データとして保存することを指します。具体的には、取引先から受け取った紙の請求書や領収書、契約書などが対象となります。スキャナ保存には、データの改ざん防止措置や、タイムスタンプの付与、検索機能の確保など、厳格な要件が課せられています。特に、重要書類(契約書、領収書など)と一般書類(検収書、見積書など)で要件が一部異なるため注意が必要です。スキャナ保存は、紙の書類を大量に扱う企業にとって、保管スペースの削減や業務効率化に大きく貢献します。しかし、要件が厳しいため、専用のシステム導入や社内体制の整備が不可欠となります。画像の解像度やカラーモード、保存形式などにも細かい規定があるため、導入前に確認が必要です。
電子取引データ保存とは?(2024年からの義務化)
電子取引データ保存とは、電子的に授受した取引情報をデータとして保存することを指します。これは、電子帳簿保存法の中でも最も多くの事業者に影響を与える区分であり、2024年1月1日からは原則として紙での保存が認められなくなり、電子データでの保存が完全に義務化されました。具体的には、電子メールで送られてきた請求書や領収書、ECサイトからダウンロードした購入履歴、クラウドサービス上で発行された利用明細、EDIシステムを介した取引データなどがこれに該当します。保存要件としては、データの真実性(改ざんされていないこと)と可視性(検索機能の確保など)が求められます。真実性の確保には、タイムスタンプの付与、訂正・削除履歴が残るシステムでの保存、または事務処理規定の整備といったいずれかの措置を講じる必要があります。また、検索要件については、日付、金額、取引先の3項目で検索できるようにすることが基本です。
電子帳簿保存法の対象となる「国税関係帳簿」の詳細
国税関係帳簿とは、税法に基づき作成・保存が義務付けられている帳簿のことで、企業の会計処理や税務申告の基礎となる重要な記録です。電子帳簿保存法では、これらの帳簿を電子データで保存する際の要件が定められています。適切に電子保存することで、紙の帳簿を保管する手間やスペースを削減し、効率的な業務運用が可能になります。また、税務調査の際にも、必要な情報を迅速に提示できるため、スムーズな対応が期待できます。
国税関係帳簿の定義と種類
国税関係帳簿は、企業の事業活動における全ての取引を記録し、財務状況を明確にするためのものです。これには、日々の取引を記録する主要簿と、特定の取引や資産を詳細に記録する補助簿が含まれます。これらの帳簿は、企業の財務健全性を証明し、税務申告の根拠となるため、正確かつ網羅的に記録し、適切に保存することが義務付けられています。電子化により、これらの帳簿の作成・管理がより効率的になります。
主要簿(仕訳帳、総勘定元帳)
主要簿は、企業の会計処理の根幹をなす帳簿であり、すべての取引が最初に記録される「仕訳帳」と、仕訳帳の取引を勘定科目ごとに集計し、企業の資産、負債、純資産、収益、費用を網羅的に把握するための「総勘定元帳」がこれに該当します。仕訳帳は、日付順にすべての取引を記録し、どのような取引が、いつ、いくらで行われたかを詳細に示します。総勘定元帳は、仕訳帳の記録を基に、各勘定科目の増減とその残高を記録し、最終的に貸借対照表や損益計算書を作成するための基礎情報となります。これらの主要簿は、企業の財務状況を正確に把握し、税務申告を行う上で不可欠な書類であり、電子帳簿保存法の「電子帳簿等保存」の対象となります。電子的に保存する場合、訂正・削除履歴の保存、相互関連性の確保、検索機能の確保などの要件を満たす必要があります。
補助簿(現金出納帳、売掛帳、買掛帳、固定資産台帳など)
補助簿は、主要簿の情報を補完し、特定の取引や資産の詳細を記録するための帳簿です。例えば、「現金出納帳」は現金の出入りを、「売掛帳」は売掛金の発生と回収状況を、「買掛帳」は買掛金の発生と支払い状況を、「固定資産台帳」は所有する固定資産の種類、取得価格、減価償却費などを詳細に記録します。これらの補助簿は、主要簿だけでは把握しきれない詳細な情報を管理し、企業の経営実態をより正確に把握するために不可欠です。電子帳簿保存法では、これらの補助簿も電子帳簿等保存の対象となります。主要簿と同様に、真実性や可視性を確保するための要件が適用されますが、補助簿は主要簿との関連性を保つことが重要です。電子化することで、必要な情報を迅速に参照できるようになり、業務効率が向上します。
優良な電子帳簿の要件とメリット
電子帳簿保存法では、特定の要件を満たした電子帳簿を「優良な電子帳簿」として位置づけ、その利用を奨励しています。優良な電子帳簿として認められることで、企業は税務上のメリットを享受できる可能性があります。この区分を目指すことは、単に法律に対応するだけでなく、経理業務の質を高める上でも有効な手段となります。
優良な電子帳簿の要件
優良な電子帳簿の要件は、以下の通りです。まず、訂正・削除履歴が残るシステムを利用していることが求められます。これは、データの改ざんを防ぎ、いつ、誰が、どのようにデータを修正したかを明確に追跡できるようにするためです。次に、相互関連性があることです。これは、帳簿と書類、あるいは複数の帳簿間でデータが紐付けられ、関連する情報を容易にたどれるようにすることを意味します。例えば、仕訳帳から関連する請求書や領収書に簡単にアクセスできるような状態です。さらに、検索機能が確保されていることが重要です。具体的には、日付、金額、取引先といった主要な項目で検索できるだけでなく、範囲指定や複数の条件を組み合わせて検索できる機能が必要です。最後に、システム関係書類(仕様書、操作マニュアルなど)を備え付けていることが挙げられます。これにより、システムの運用状況やデータの信頼性が客観的に証明されます。これらの要件を満たすことで、電子帳簿は信頼性の高い情報として認められます。
過少申告加算税の軽減措置について
優良な電子帳簿の要件を満たし、その旨を事前に税務署に届け出た事業者は、過少申告加算税の軽減措置を受けることができます。通常、税務調査で申告漏れなどが発覚し、修正申告を行った場合には、過少申告加算税が課せられます。しかし、優良な電子帳簿を使用している場合は、その加算税が5%軽減されます。これは、優良な電子帳簿がデータの信頼性を高め、正確な申告を促すものとして評価されているためです。この軽減措置は、万が一の事態に備える上でも大きなメリットとなります。優良な電子帳簿の導入は、単に法律に準拠するだけでなく、企業の税務リスクを軽減し、経営の安定に貢献する重要な取り組みと言えるでしょう。
電子帳簿保存法の対象となる「国税関係書類」の詳細
国税関係書類とは、国税に関する法律に基づき作成・保存が義務付けられている書類全般を指します。これには、企業の財務状況を示す決算関係書類や、日々の取引内容を証明する取引関係書類が含まれます。これらの書類も電子帳簿保存法の対象となり、定められた要件を満たすことで電子データでの保存が可能です。
国税関係書類の定義と種類
国税関係書類は、企業の財務状況や取引の実態を客観的に証明するための重要な書類です。これには、年度ごとの企業の成績を示す「決算関係書類」と、日々の商取引の詳細を記録する「取引関係書類」の二つの主要なカテゴリーがあります。これらの書類は、税務調査の際に企業の納税額が適切であることを証明するために不可欠であり、正確な作成と適切な保存が法律で義務付けられています。電子化は、これらの書類の管理を効率化し、必要な情報の迅速な検索を可能にします。
決算関係書類の具体例
貸借対照表、損益計算書、試算表、棚卸表など
決算関係書類とは、企業の会計期間における財務状況や経営成績を明らかにするための書類です。具体的には、「貸借対照表」は特定の時点での企業の資産、負債、純資産の状態を示し、「損益計算書」は会計期間中の収益と費用、そして純利益(または純損失)を示します。これらは企業の「成績表」とも言える非常に重要な書類です。また、決算前に仮の集計を行う「試算表」や、期末の在庫状況を詳細に記録する「棚卸表」なども決算関係書類に含まれます。これらの書類は、企業の財政状態と経営成績を外部に公表する際の根拠となるとともに、内部の経営判断にも不可欠な情報を提供します。電子帳簿保存法では、これらの決算関係書類も電子帳簿等保存の対象となり、真実性や可視性の確保といった要件を満たす必要があります。
取引関係書類の具体例
自社作成の控え(請求書、領収書、見積書など)
自社で作成する取引関係書類の控えとは、企業が取引相手に対して発行した書類の写しを指します。具体的には、商品やサービスの代金を請求するために発行する「請求書の控え」、顧客から現金を受け取った際に発行する「領収書の控え」、取引の前に提示する「見積書の控え」、商品の納品を証明する「納品書の控え」などが該当します。これらの控えは、自社の売上や収益を正確に計上し、将来の税務調査に備える上で非常に重要です。電子帳簿保存法では、これらの自社作成の控えも電子データで保存が可能です。特に、自社で作成したものをそのまま電子的に保存する場合、「電子帳簿等保存」の要件が適用されます。紙で作成し、その後スキャンして保存する場合は「スキャナ保存」の要件を満たす必要があります。
取引先から受領した書類(請求書、領収書、契約書など)
取引先から受領する書類とは、仕入先やサービス提供元など、他社から発行された書類を指します。これには、仕入れ代金やサービス利用料を請求される「請求書」、支払いを行った際に受け取る「領収書」、取引の条件を定める「契約書」、商品の検収を証明する「検収書」などが含まれます。これらの書類は、仕入れや経費の計上、債務の発生などを証明するために不可欠です。特に、2024年1月からは、これらの書類が電子データ(メール添付やクラウド経由など)で提供された場合、電子データでの保存が原則義務化されています(「電子取引データ保存」)。紙で受領した場合は、これまで通り紙での保存も可能ですが、スキャナで読み取って電子データとして保存することも可能です(「スキャナ保存」)。
重要書類と一般書類の区分
国税関係書類は、その重要性に応じて「重要書類」と「一般書類」に区分されます。この区分は、主にスキャナ保存を行う際の要件の厳格さに影響します。重要書類とは、契約書や領収書など、資金や物の流れに直結し、不正が生じやすいとされる書類を指します。これらの書類は、金額の改ざんなどが容易にできてしまうため、スキャナ保存の際には特に厳格な要件(例:タイムスタンプの付与、定期的な検査、適正事務処理要件など)が課せられます。一方、一般書類とは、見積書や注文書など、資金や物の流れに直結しない書類を指します。これらの書類は、重要書類に比べてスキャナ保存の要件が緩和されています(例:タイムスタンプの付与が不要な場合がある)。自社でスキャナ保存を行う際は、これらの区分の理解が非常に重要であり、書類の種類に応じた適切な対応が求められます。
【重要】2024年義務化された「電子取引データ」の保存
2024年1月から完全に義務化された電子取引データの保存は、電子帳簿保存法の改正の中でも最も注目すべき変更点です。これにより、これまで紙に出力して保存することが認められていた電子的な取引情報が、原則として電子データのまま保存することが義務付けられました。これは、企業の経理業務だけでなく、日常的なビジネスコミュニケーション全般に影響を与えるため、全ての事業者が対応を急ぐ必要があります。
電子取引とは何か?
電子取引とは、取引情報が電子的に授受される取引全般を指します。これは、従来の紙ベースの取引とは異なり、デジタルデータとして情報がやり取りされる形態を網羅しています。インターネットの普及に伴い、現在では多くの企業が日常的に電子取引を行っており、その範囲は非常に広範です。
電子メールでのやり取り
最も一般的な電子取引の一つが、電子メールでのやり取りです。例えば、取引先から請求書がPDFファイルでメールに添付されて送られてきたり、見積書や納品書がPDFでやり取りされたりするケースがこれに該当します。また、メール本文に取引内容が記載されている場合も、そのメール自体が電子取引データとして保存の対象となる可能性があります。特に、メールに添付されたファイルだけでなく、メール本文のやり取りも取引内容を証明する重要な証拠となることがあるため、注意が必要です。これらのメールは、単に保存するだけでなく、後から検索できるような状態に保つ必要があります。
クラウドサービスを介したやり取り
近年、急速に普及しているのがクラウドサービスを介した取引情報のやり取りです。例えば、会計ソフトや請求書発行システムなどのクラウドサービス上で請求書や領収書が発行・受領される場合や、ファイル共有サービスを通じて契約書などのデータが授受されるケースが該当します。これらのサービスは、データの管理や共有が容易であるため多くの企業で利用されていますが、同時に電子帳簿保存法の対象となるデータが発生していることを認識する必要があります。クラウドサービスによっては、電子帳簿保存法の要件を満たす機能が標準で備わっている場合もありますが、自社で利用しているサービスが要件を満たしているか、またどのような運用が必要かを確認することが重要です。
EDIシステム(電子データ交換)
**EDIシステム(Electronic Data Interchange)**とは、企業間で商取引データを電子的に交換するためのシステムです。受発注、出荷、請求、支払いなどの情報を定型化された形式でやり取りすることで、業務の効率化とコスト削減を図ります。例えば、大手企業と取引を行う際に、専用のEDIシステムを通じて発注書や納品書、請求書などのデータが自動的に送受信されることがあります。これらのEDIシステムを介した取引データも、当然ながら電子帳簿保存法の電子取引データ保存の対象となります。EDIシステムは大量のデータを効率的に処理するため、保存要件を満たすためのシステム連携や設定が特に重要となります。
Webサイトからのダウンロード(ECサイト、クレジットカード明細など)
Webサイトからダウンロードする形式の取引情報も、電子取引データの対象となります。例えば、Amazonや楽天市場などのECサイトで商品を購入した際の注文履歴や領収データ、オンライン決済サービス(PayPalなど)の利用明細、クレジットカード会社のWebサイトからダウンロードする利用明細、携帯電話会社や電力会社などのWebサイトで確認できる利用料金明細などがこれに該当します。これらの情報は、多くの場合、WebブラウザからPDF形式などでダウンロードできますが、ダウンロードした時点で電子取引データとして保存義務が発生します。ダウンロードし忘れたり、ダウンロードしたものの保存要件を満たさずに保管したりしないよう、注意が必要です。定期的なダウンロードと適切な方法での保存が求められます。
電子取引データの保存要件
電子取引データの保存には、データの「真実性の確保」と「可視性の確保」という二つの大きな要件が求められます。これらの要件を満たすことで、保存された電子データが、紙の書類と同様に、信頼できる証拠として認められるようになります。
真実性の確保(改ざん防止)
真実性の確保とは、保存された電子データが、作成または受領した時の内容と全く同じであり、改ざんや削除が行われていないことを証明するための要件です。この真実性を確保するためには、以下のいずれかの措置を講じる必要があります。1つ目は、タイムスタンプを付与することです。これにより、データが存在した時刻と、それ以降に改ざんされていないことが証明されます。2つ目は、訂正・削除履歴が残る、または訂正・削除ができないシステムで保存することです。クラウド型の会計システムなどがこれに該当します。3つ目は、訂正・削除の防止に関する事務処理規程を定めて運用することです。これは、組織内で電子データの取り扱いに関する明確なルールを定め、それに従って運用することで、人為的な改ざんを防ぐものです。例えば、電子データの授受から保存までの手順、訂正・削除が必要になった場合の承認プロセスなどを文書化し、全従業員に周知徹底します。このうち、いずれか一つ以上の要件を満たせば良いとされています。
可視性の確保(検索機能、ディスプレイ・プリンタ備付け)
可視性の確保とは、保存された電子データが、必要な時にいつでも、誰でも確認でき、容易に検索できる状態にあることを指します。具体的には、まずディスプレイやプリンターを設置し、保存されたデータをすぐに確認・出力できる環境を整える必要があります。これは、税務調査時などに、税務署員がデータの内容をその場で確認できるようにするためです。次に、最も重要な要件の一つが検索機能の確保です。保存された電子データは、以下の3つの項目で検索できるようにする必要があります。1つ目は取引年月日(日付)、2つ目は取引金額、3つ目は取引先です。これらの項目で検索できるだけでなく、範囲指定(例:2024年4月1日から4月30日までの取引)や、複数の条件を組み合わせて検索(例:A社との取引で金額が10,000円以上のもの)できる機能も求められます。これらの検索要件を満たすためには、ファイル名に規則性を持たせる、または専用の文書管理システムなどを導入することが有効です。
要件緩和措置(猶予期間)について
電子取引データの保存義務化にあたり、中小企業などに配慮した要件緩和措置や猶予期間が設けられました。当初、2022年1月1日から電子取引データ保存が義務化される予定でしたが、多くの事業者が対応に困難を抱えている現状を鑑み、2023年12月31日までは猶予期間が設けられ、この期間中はやむを得ない事情がある場合に限り、紙での出力保存も認められていました。しかし、2024年1月1日からは原則として紙での保存は認められなくなり、電子データでの保存が完全義務化されました。ただし、基準期間の売上高が5,000万円以下の事業者など、小規模な事業者に対しては、検索要件の一部が免除されるなどの緩和措置があります。具体的には、税務調査の際にダウンロードの求めに応じれば、検索要件の全てを満たす必要はありません。この緩和措置は、あくまで特例であり、基本的な保存要件を満たす努力は継続して行う必要があります。自社がどの要件に該当するのか、最新の情報を確認し、適切な対応を進めることが重要です。
紙で作成・受領した書類の扱いとスキャナ保存の要件
電子帳簿保存法は、デジタルデータだけでなく、紙で作成または受領した書類の扱いについても規定しています。特に「スキャナ保存」の要件は厳格であり、適切に対応するためには細部まで理解しておく必要があります。紙の書類を電子化するメリットは大きいですが、同時にその信頼性を担保するための措置が求められます。
スキャナ保存の対象となる書類
スキャナ保存の対象となるのは、紙で作成し、または取引先から紙で受領した国税関係書類です。具体的には、自社で作成した紙の請求書や領収書の控え、取引先から受け取った紙の請求書、領収書、契約書、見積書、納品書などが該当します。これらの書類は、原本をスキャンして画像データとして保存することで、紙の原本を廃棄することが可能になります(ただし、重要書類の場合は、一定期間の原本保存義務があるケースもあります)。スキャナ保存は、紙の書類の保管スペースを削減し、書類の検索性を向上させる点で非常に有効な手段ですが、データの真実性を確保するための厳格な要件を満たす必要があります。
スキャナ保存の厳格な要件
スキャナ保存は、電子帳簿保存法の中でも特に厳格な要件が課せられています。これは、紙の書類を画像データに変換する過程で、改ざんや不備が生じるリスクがあるため、その真実性を極めて高いレベルで確保する必要があるからです。
解像度、階調、ファイル形式
スキャナ保存において、画像データの品質は非常に重要です。具体的には、解像度は「200dpi以上」であることが求められています。これは、書類の文字や印影が鮮明に読み取れるようにするためです。また、階調は「カラー画像の場合は256階調以上(フルカラー)」が推奨されていますが、白黒でも保存可能です。白黒の場合でも、判読性が確保されている必要があります。ファイル形式については、一般的な「JPEG、PDF」などが認められています。PDF形式は、複数の画像を一枚のファイルにまとめやすく、閲覧環境も広いため、多く利用されています。スキャンした画像データがこれらの技術的要件を満たしていることを確認することが、スキャナ保存の第一歩となります。低品質なスキャンでは、要件を満たさないだけでなく、後々の税務調査などで問題となる可能性があるため注意が必要です。
タイムスタンプの付与
スキャナ保存したデータには、タイムスタンプの付与が義務付けられています。タイムスタンプとは、特定の時刻にその電子データが存在していたこと、そしてそれ以降に改ざんされていないことを証明する技術です。スキャンしたデータには、その入力期間(原則7営業日以内)にタイムスタンプを付与する必要があります。これにより、スキャンされたデータがいつ、どのような内容で存在したかが客観的に証明され、データの真実性が担保されます。タイムスタンプの付与は、外部の信頼できるタイムスタンプ局(時刻認証業務認定事業者)のサービスを利用するのが一般的です。このタイムスタンプが付与されていることで、万が一データの内容に疑義が生じた場合でも、その正当性を証明する強力な証拠となります。
検索機能の確保
スキャナ保存された電子データについても、検索機能の確保が求められます。これは、大量の電子データの中から必要な書類を迅速に探し出せるようにするためです。具体的には、取引年月日、取引金額、取引先の3つの項目で検索できる必要があります。さらに、日付や金額の範囲指定、複数の条件を組み合わせて検索できることも求められます。例えば、「2024年1月1日から3月31日までの期間で、株式会社Aからの10,000円以上の領収書」といった具体的な検索が可能な状態を指します。この検索機能を確保するためには、ファイル名に規則性を持たせてこれらの情報を付加するか、専用の文書管理システムやスキャナ保存対応システムを導入することが不可欠です。適切な検索機能がないと、税務調査時に必要な書類を提示できず、問題となる可能性があります。
関連書類との関連付け
スキャナ保存したデータは、関連する他の書類や帳簿との関連付けが求められます。これは、例えば、スキャンした領収書データが、どの仕訳に対応しているのか、どの請求書に対応しているのかといった、会計処理における一連の流れを追跡できるようにすることを意味します。具体的には、スキャンデータと会計システム上の仕訳データが紐付けられていることや、関連する取引の詳細情報に容易にアクセスできる状態が理想です。この関連付けが適切に行われていることで、データの信頼性が向上し、税務調査時にもスムーズな説明が可能になります。多くのスキャナ保存対応システムは、この関連付け機能を備えており、経理業務の効率化にも貢献します。
電子帳簿保存法の対象外となる書類と注意点
電子帳簿保存法は、すべての書類を電子保存の対象としているわけではありません。法律の対象外となる書類や、適用を受ける上で特に注意すべき点もあります。これらの点を理解しておくことで、不必要な対応を避け、より効率的に電子帳簿保存法に対応することができます。
手書きで作成した国税関係帳簿・書類
電子帳簿保存法は、原則として電子計算機(パソコンなど)を使用して作成された帳簿や書類の電子保存に関する規定です。そのため、手書きで作成した帳簿や書類は、電子帳簿保存法の直接の対象外となります。例えば、昔ながらの手書きの現金出納帳や、手書きで作成した領収書、請求書などは、これまで通り紙で保存することが可能です。ただし、手書きで作成したものを後からスキャンして電子データとして保存する場合は、スキャナ保存の要件を満たす必要があります。この場合、原本の紙は破棄できる可能性もありますが、その要件は厳格です。将来的なペーパーレス化や業務効率化を考慮すると、可能な限り電子的な方法で帳簿や書類を作成することが推奨されます。
国税関係書類以外の社内文書など
電子帳簿保存法が対象とするのは、「国税関係帳簿」と「国税関係書類」に限定されます。したがって、国税に関係のない社内文書(例:日報、議事録、社内通達、人事評価シートなど)は、電子帳簿保存法の直接の対象外となります。これらの書類は、各企業の社内規程や文書管理方針に基づいて、任意で電子化・保存を行うことになります。もちろん、これらの社内文書を電子化することで、業務効率化や情報共有の促進といったメリットは享受できますが、電子帳簿保存法で定められているような厳格な保存要件を満たす義務はありません。ただし、訴訟などの際に証拠となる可能性のある文書は、別途、法的要件を満たした上で保存することが求められる場合があります。
電子帳簿保存法に対応しない場合の罰則
電子帳簿保存法への対応は、もはや義務であり、無視することはできません。特に、電子取引データの保存が2024年1月1日から完全に義務化されたため、これに対応しない場合は、以下のような罰則や不利益を被る可能性があります。まず、税務調査において、保存すべき電子データが提示できない場合、青色申告の承認取り消しを受ける可能性があります。青色申告の承認が取り消されると、所得控除などの税制上の優遇措置が受けられなくなり、税負担が増加する可能性があります。次に、追徴課税の対象となる場合があります。データが適切に保存されていないことで、税務署が取引の実態を把握できず、経費の否認や売上の過少申告とみなされ、過少申告加算税や重加算税が課される可能性があります。最悪の場合、会社法違反や消費税法違反といった別の法律に抵触する可能性も出てきます。電子帳簿保存法への適切な対応は、単なる事務手続きではなく、企業の存続にも関わる重要な経営課題と言えるでしょう。
電子帳簿保存法への対応ステップとシステム導入
電子帳簿保存法への対応は、段階的に進めることが重要です。まずは現状を把握し、必要な要件を理解した上で、適切なシステム導入や社内体制の整備を進めていく必要があります。
現状の書類管理状況の把握
電子帳簿保存法に対応するための最初のステップは、自社で現在、どのような国税関係帳簿や国税関係書類、そして電子取引データをどのように作成、受領し、保存しているかを詳細に把握することです。具体的には、紙で保存している書類の種類と量、電子データで受領している取引情報の媒体(メール、クラウドサービス、EDIなど)、そしてそれらがどのように管理されているか(ファイルサーバー、各PC内など)を洗い出します。この現状把握を行うことで、どの書類がどの保存区分に該当し、どのような要件を満たす必要があるのか、具体的な課題が見えてきます。紙の書類が多い場合はスキャナ保存の検討、電子取引データが多い場合は保存要件を満たすためのシステムや運用方法の検討が必要になるでしょう。
保存区分の決定と保存要件の確認
現状把握に基づき、洗い出した個々の書類や取引データが、電子帳簿保存法のどの保存区分(電子帳簿等保存、スキャナ保存、電子取引データ保存)に該当するのかを明確に分類します。そして、それぞれの区分で求められる具体的な保存要件(真実性、可視性、検索要件など)を確認します。例えば、自社で会計ソフトを使って作成している帳簿は「電子帳簿等保存」、取引先から紙で受け取る領収書は「スキャナ保存」、メールで受け取る請求書は「電子取引データ保存」といった具合に分類します。この段階で、各要件の詳細を理解し、自社で足りない部分や、新たに導入が必要なシステムなどを特定します。要件の確認は、国税庁のウェブサイトや、電子帳簿保存法に関するガイドラインなどを参考にすると良いでしょう。
必要なシステムの導入検討
電子帳簿保存法の要件を効率的に満たすためには、適切なシステムの導入が不可欠です。全ての要件を手作業で満たすのは現実的ではありません。自社の状況に合わせて、以下のようなシステムの導入を検討します。
会計システム
既に多くの企業で導入されている会計システムは、電子帳簿保存法対応の要となります。特に、電子的に作成された仕訳帳や総勘定元帳などの国税関係帳簿を保存する際には、電子帳簿保存法の「電子帳簿等保存」の要件を満たす必要があります。最新の会計システムの中には、タイムスタンプ連携機能や、訂正・削除履歴の管理機能、検索機能などが標準で搭載されており、優良な電子帳簿の要件を満たしやすいように設計されているものも多くあります。自社の会計システムが電子帳簿保存法に対応しているか、最新バージョンであるかなどを確認し、必要に応じてバージョンアップや新しいシステムへの移行を検討しましょう。クラウド型の会計システムであれば、法令改正にも迅速に対応できるメリットがあります。
文書管理システム
文書管理システムは、請求書や領収書などの国税関係書類や電子取引データを効率的に保存・管理する上で非常に有効です。特に、スキャナ保存や電子取引データ保存の要件(タイムスタンプの付与、検索機能、改ざん防止など)を満たすために特化した機能を備えているものが多くあります。例えば、自動でファイル名を付与したり、AI-OCRで情報を読み取って検索メタデータとして付与したりする機能は、可視性確保のための検索要件を満たす上で役立ちます。また、データのアクセス権限管理や履歴管理機能は、真実性確保に貢献します。文書管理システムを導入することで、紙の書類のスキャンから電子データの取り込み、一元管理、そして必要な際の検索・出力までをスムーズに行うことが可能になります。
スキャナ保存対応システム
紙の書類が多い企業にとって、スキャナ保存対応システムは必須とも言えるでしょう。これは、紙の領収書や請求書などを電子データとして正確に読み込み、電子帳簿保存法のスキャナ保存要件を満たす形で保存するためのシステムです。具体的には、高解像度でのスキャン機能、タイムスタンプの自動付与機能、訂正・削除履歴の管理機能、検索機能などを備えています。中には、スマートフォンで撮影した画像も取り込めるアプリを提供しているベンダーもあります。スキャナ保存対応システムを選ぶ際には、自社のスキャン量や必要な機能、費用対効果などを考慮して慎重に検討することが重要です。適切なシステムを導入することで、紙の書類の保管コストや手間を大幅に削減し、業務効率を向上させることができます。
社内規程の整備と従業員への周知・教育
電子帳簿保存法に対応するためには、システムの導入だけでなく、社内規程の整備と従業員への周知・教育が非常に重要です。いくら優れたシステムを導入しても、それを適切に運用するルールがなければ、法律の要件を満たすことはできません。例えば、電子取引データを受領した際の保存手順、スキャナ保存を行う際のルール、訂正・削除が発生した場合の承認プロセスなどを明確に定めた事務処理規程を作成します。この規程は、国税庁のウェブサイトで公開されているひな形を参考に作成すると良いでしょう。規程を作成したら、全従業員、特に経理担当者や営業担当者など、国税関係帳簿・書類や電子取引データの作成・授受に関わる全ての従業員に対して、その内容を周知徹底し、具体的な操作方法や注意点について教育を行います。定期的な研修やマニュアルの配布なども有効です。従業員一人ひとりが電子帳簿保存法の重要性を理解し、ルールを遵守することで、企業全体のコンプライアンス体制が強化されます。
最後に
本記事では、電子帳簿保存法の基本から、対象となる書類の種類、そしてそれぞれの保存区分ごとの詳細な要件、さらにはバーチャルオフィスが電子帳簿保存法対応にどのように役立つかについて、包括的に解説してきました。2024年1月から電子取引データの保存が義務化されたことで、この法律への適切な対応は、すべての事業者にとって避けては通れない課題となっています。
電子帳簿保存法への対応は、一見複雑に思えるかもしれませんが、段階的に取り組むことで着実に進めることができます。まずは自社の現状を把握し、どのような書類やデータが対象となるのか、そしてどの保存要件を満たす必要があるのかを正確に理解することが重要です。その上で、必要に応じて会計システムや文書管理システム、スキャナ保存対応システムなどの導入を検討し、社内規程の整備と従業員への教育を徹底していくことが成功の鍵となります。
電子化を進めることは、単なる法令遵守に留まらず、経理業務の効率化、コスト削減、ガバナンス強化、さらにはBCP対策といった多くのメリットを企業にもたらします。この機会に、ぜひ貴社の経理業務のデジタル化を推進し、より強固な経営基盤を築いてください。本記事が、貴社の電子帳簿保存法への理解を深め、具体的な対応の一助となれば幸いです。