今回ご紹介いたしますのは、イラストレーターのさいとうなおきさんによる、自分の作品をより評価してもらう方法についての話です。イラストだけでなく、他の表現でも、自分の作品を世に出している人は、期待したほど評価を得られず悩む事があります。

世の中には、すぐに評価される人となかなか評価されない人がいます。その違いはどこにあるかというと、3つのPを意識しているかどうかにあります。このPとは、プレゼントのことです。


①誰に何をプレゼントすべきか、②いつプレゼントすべきか、③自分がプレゼントすべきか、という三つのポイントがあります。一つ目の「誰に何をプレゼントすべきか」は、三つの中で最重要の項目です。

これを考慮しないと、そもそも見ている人が表現を受け取ってくれません。例えば、男子中学生をターゲットにしたイラストを描く場合、甘酸っぱい青春や血沸き肉躍る戦い、可愛い女の子などが受け入れられると想定できます。
 

 



しかし、パステルカラーの可愛い動物のイラストなどは、あまり男子中学生には受けないでしょう。例外的に、可愛い動物のイラストを好む男子中学生がいるかもしれませんし、想定外のターゲット層に評価されることもあります。

しかし、多くの場合はうまくいきません。ターゲット層をきちんと考えていないと、自分が何を表現したいのかと、相手が何を求めているのかが、ごちゃ混ぜになってしまい、ちぐはぐでミスマッチな表現をしてしまいます。


例えば、男子中学生をターゲットにする場合、男子中学生全体をイメージするのではなく、自分の身の回りにいるような友達、兄弟、親戚などをイメージして、その人を喜ばせる作品作りをすれば良いようです。

ぼんやりとした対象をターゲットにしてしまうと、パステルカラーの可愛い絵になってしまったり、子供っぽくなってしまったり、作品がターゲットに受けない表現になってしまった時に、「こういう絵が好きな男子中学生もいるだろう」と思ってしまいます。





その結果、自分が想定していた相手に届きづらい表現になってしまいます。特定の個人をターゲットにして作品作りをすると、自分の目的がその人に喜んでもらうことになるため、妥協せずに作品作りができるようになります。

ターゲットは、実在の人物を思い浮かべてもいいし、架空の人物を思い浮かべてもいいそうです。マーケティングの世界では、「ペルソナ」という架空の人物の設定を細かく決めて、その人に喜ばれるものを提供する方法があります。


あるデパートでは、20代や30代の女性を対象にした商品を作る場合、名前、年齢、職業、家族構成、住んでいるところ、趣味、普段やっていることなど細かく設定し、架空の女性のプロフィールを作り上げます。

こうした細かな設定により、効率よくユーザーが求める商品を提供できるようになります。イラストを描く際も同様で、自分が何を伝えたいかはもちろん重要ですが、自分が作品を伝えたい相手が何を欲しがっているか、何に興味を持っているかを考えることが大切です。


二つ目のPは、いつプレゼントすべきかを考えることです。例えば、ハロウィンのイラストを正月に投稿すると、それを見た人はハロウィンの気分ではないので心に引っかかることはありません。いいねやリツイートも伸びません。

そこまで極端ではなくても、ターゲットとなる人たちがTwitterを見ていない時間帯に投稿してしまうと言う間違いはやりがちです。一枚の絵を作り上げるのは大変な作業なので、出来上がったらすぐにみんなに見せたくて投稿したくなってしまいます。


しかし、ターゲットの事を考えると、出来上がった時間に投稿すると言うのは間違いです。例えば、ターゲットを男子中学生と想定しているのに、夜中の2時や3時にイラストを投稿してしまうと、男子中学生は寝ている時間帯なのでイラストを見ることができません。

皮肉交じりのネタを投稿するときには見る人の心に余裕のある週末にするとか、逆に週の初めにはみんなが元気になれるようなネタを投稿するとか、夜はみんなが疲れているから、心がほっこりするようなクスッと笑えるネタを投稿するなど、様々な作戦を立てるのが良いようです。





ターゲットとする人たちの気分と作品のメッセージがぴったり合った時、作品が伝わる範囲が変わります。「こんな作品が見たい気分だった」「あるある」「みんなもこれを見て」と広く拡散されるのは、タイミングの問題が大きかったりします。

それは頭でわかっていても、作品が出来上がるとついつい嬉しくなって投稿するのが我慢できなくなる人がいます。そういう人には予約投稿が便利です。さいとうさんはTwitterの予約投稿機能を使っているそうです。


予約投稿することで、早く投稿したいという気持ちをいったん落ち着かせることができます。Twitterの予約投稿はスマホからはできませんが、パソコンからはできます。

三つ目のPは、自分がプレゼントすべきかです。私がそれを伝えるべきなのか、私がそれを描くべきなのか、それを考えることが重要だという意味です。これを見誤ると、反感を持たれたり怒りを買ったり、炎上してしまうことがあります。


別の言い方をすると、見ている人の納得感を得られるかが重要です。全く好きでもない作品の二次創作を描いた時、作品を見た人はかなりの確率で、描いた人の作品に対する愛情の無さを見抜きます。

好きじゃなさや適当さの方が相手に伝わってしまい、反感を持たれてしまいます。人気作品の二次創作を描いて目立ちたいだけだと思われます。


どのくらい好きなら二次創作を描いてもいいのかという議論は置いておいて、今ここで問題となるのは本当にまったくその作品に興味がなかった場合です。また、自分がかかわってきた仕事や立場も影響します。

ある程度年齢を重ねた人が人生のほろ苦さを表現するのは受け入れられても、高校生や中学生が人生はこういうものという表現をしていたら、見てる人の大半は「お前みたいな若造に言われたくない」と思ってしまいます。





作品に込められたメッセージが素晴らしい物であっても、描いた人がそれを描くのにふさわしい立場の人でなければ、相手はメッセージを受け取りにくくなります。

見ず知らずの誰ともわからない人に、「結婚してください」とダイヤモンドの指輪を送られたら怖いだけです。ダイヤモンドの指輪は素晴らしいプレゼントですが、パートナーでも何でもない人から送られても、納得感がないから受け取ってもらえないのです。


自分がその作品を投稿すべきかどうかの判断基準は、「その作品が好きかどうか」「自分の仕事や立場を考える」「自分の生い立ちなどを考える」ことで、作品のメッセージがより相手に深く伝わるかが決まります。

さいとうさんは、30歳くらいになるまで3つのPを意識することがなかったそうです。そして、作品が評価されないことに悩んでいたそうです。そんなある日、長年付き合った彼女に振られてしまい、「あなたに貰ったプレゼント一つも嬉しくなかった」と言われてしまったそうです。


深く落ち込んださいとうさんは、ある事に気づきました。それは、相手が何が欲しくてどんなことに興味があって、何をしてほしい気分なのか全く考えずに、自分があげたいものを自分が好きな時にあげていたということです。

彼氏であるという立場からギリギリプレゼントを受け取ってもらう事は出来ていたのですが、その立場に甘えて自分が送ったものなら何でも嬉しいはずだと思っていたそうです。


この経験から、さいとうさんは作品を作るときも同じことを考えるようになりました。誰に向けて描くか、その人は何が欲しいのか、いつそのプレゼントを渡してほしいのか、深く考えたことがなかったと、目からウロコがボロボロと落ちる経験をしました。

3つのPを意識するようになり、徐々に表現することと受け取った人の反応が噛み合うようになり、評価されたという実感を感じられるようになったそうです。彼女からの一言はつらいものでしたが、今では感謝しているそうです。





「誰に何をプレゼントすべきか」について。私は今ブログを書く活動を続けていて、以前は趣味でイラストを描いていたこともありました。また絵を投稿したいと思いながら、全然できてないのですが。今年こそは絵を完成させたいです。

私はこれまで、文章やイラストをインターネット上に投稿するときに、誰に向けてプレゼントするかなんて一度も考えたことはありませんでした。ツイッターでの投稿もそうです。


その時、書きたい事を書いて、描きたい絵を描いて、「誰かの心に引っかからないかなー」といい加減な気持ちでネットの海に漂流させていました。当然あまり反応はもらえませんでした。

自分に実力がないから仕方がないんだと思っていましたが、もう少し工夫すれば反応が増えるかもしれないですね。その前に作品作りですが。


「いつプレゼントすべきか」について。これも全然考えたことがありませんでした。自分が投稿しやすいときにすればいいと思っていたのです。インターネットにあげておけば、いつか誰かが見つけてくれると思っていました。

でも今ネットの流れはすごく早いから、変な時間に上げてしまうと流れて見えなくなってしまうのです。たまーに何年も前の投稿にいいねをつけてくれる人もいますが、リアルタイムで人がいる時間に流したほうがいいのでしょうね。


「自分がプレゼントすべきか」について。これは作品をよく知らない人が、適当な二次創作を描いて影で文句を言われているのを何度も見た事があるので、多少、慎重にはなっていたのですが、判断基準をもらえたので良かったです。

「その作品が好きかどうか」「自分の仕事や立場を考える」「自分の生い立ちなどを考える」これらを心に刻みます。また、「その作品を描いてもいい人間になる」という、努力をすることも大事かなと思いました。