今回ご紹介いたしますのは、イラストレーターのさいとうなおきさんによる、絵の見栄えをよくする方法についての動画です。

動画では、相談者のイラストをプロの技術で修正しながら、相談者の悩みを解決していきます。

 

 

今回の作品は彼岸花を背景にした女性のイラストです。

相談者の悩みは、顔を目立たせたくて背景に大きな彼岸花を置いたものの、完成した絵のインパクトがいまいち足りないというものでした。

 



さいとうなおきさんは、顔周りに派手な色を集中させてインパクトを持たせようとするアイデアは的確だとして褒めつつも、

何故かインパクトが足りないと言うのも間違いない事実だと指摘します。


絵を描く際には、論理をあまり考えず直感的に描く方法と、理屈でロジカルに考えながら描く方法の2つがあり、相談者は後者のタイプです。

どちらの方法が優れているとは言えず、どちらの方法でスタートしても良い絵を仕上げることができるそうです。





ただし、一つ気をつけてほしい点は、後者の方法で絵を描く際には「感覚を置き去りにしないこと」だそうです。

相談者は理屈で考えたアイデアを試した結果、完成した絵に対して何故かインパクトが足りないと感じました。


さいとうなおきさんは、理屈が合っているのに心が違うと感じた場合、心が正しいと言います。

理屈で考えて描いた絵に心が満足していないなら、心が満足するまで問題を解決する必要があります。


絵の修正では、まず、頭を小さくしてイラストの女性の頭身を上げました。元のイラストでは頭の大きさに対して体が小さく、幼い印象になっていました。

演出や女性の服装など大人っぽい雰囲気のイラストに、子供のような頭身が合っていませんでした。


さらに、顔と体の傾きを調節しました。元の絵では両目の高さと肩のラインがほぼ平行になっていましたが、首を傾けることでポーズに動きが生まれました。

絵にインパクトを持たせたい場合、コントラポストと言って、片足に体重をかけるような体の傾きを意識すると良いそうです。





さらに、まだ少し子供っぽさが残っているため、肩幅を広げました。

可愛い女の子を描こうとすると、体の華奢さを出すために必要以上に体を小さくして頭が大きくなってしまいがちです。


次は光の演出についてです。元のイラストにインパクトがあまり感じられなかったのは、背景の彼岸花の怪しい光と女性のライティングがミスマッチだからです。

さいとうなおきさんは女性の顔の半分と体の正面に紫色の影を落としました。


完全に逆光にしてしまうと必要以上に怖く見えてしまうため、顔の半分には光が当たっているようにしたそうです。

さらに、暗い色で影を追加して立体感を強調し、ハイライトの色も変えました。元のイラストでは手前から当たっている黄色い光がハイライトになっていました。


しかし、黄色には健康的なイメージがあります。このイラストにおいては健康的よりもミステリアスの方がイメージに合います。

そのため、黄色は強調せず、髪の毛のハイライトを淡い赤身のオレンジに変え、肌の色をピンク寄りに変えました。





黒い衣装に影だけを入れていくと全体的に黒く潰れてしまうため、光の当たっている部分に明るい灰色を入れて立体感を強調しました。

そして女性の全体に後ろから差し込む強烈な赤のリムライトを入れ、背景に馴染みつつも女性の姿を引き立たせる効果が生まれました。


彼岸花の花言葉から、イラストの女性の、手前に立っている人物に対する強い感情を表現したそうです。

口元に置いている手のしわや凹凸を、線も影も使って描くとごつごつした印象になるため、線を省略して影だけで表現し、女性の柔らかい手を表現しました。


さらに、女性の目が大きくて子供っぽい顔に見えるため、絵の印象に合わせて大人っぽい顔立ちに変えました。

修正後の女性の顔は、さいとうなおきさんの趣味が入ってしまったそうですが、目を小さくし大人っぽい顔立ちにして挑発的な表情になりました。


目元の印象を強くするために赤いアイラインを入れ、唇に赤みを足してより大人っぽい印象に仕上げました。

最後に、背景の彼岸花の修正についてです。





さいとうなおきさんは、元のイラストの彼岸花がおしべとめしべがかなり太く描かれているため、パッと見たときに彼岸花に見えないと指摘しました。

彼は本物の彼岸花を観察しながら絵を描くことを勧めています。


修正では、周りのおしべとめしべを消して、花びらを赤で描きなおし、おしべとめしべは細い線で描きました。

彼岸花は一つの花に6枚の花弁があり、おしべが6本、めしべが1本です。


花の構造を知識として持っていることは無駄ではありませんが、ここで大切なのは知識よりも花の柔らかさであり、彼岸花らしく見えるかどうかです。

正確に描くよりも全体の印象を見て描くほうが良いそうです。


元のイラストと修正後を比べてみると、印象がガラリと変わりました。影と光が濃くなり、イラストの持つ妖しさがさらに増しました。

特に驚いたのは、原色に近い派手な赤色でリムライトを入れる工程です。あんな派手な色を入れているのに不自然にならず、女性の印象をより強くしました。