重音テト(かさねテト)は、2008年4月1日のエイプリルフールに、2ちゃんねるVIP板から、架空のVOCALOIDキャラクターとして生まれました。

このジョークは、VOCALOID製品のブームを皮肉ったパロディでした。
 

 

 


当時のニコニコ動画では、「初音ミク」といった『キャラクター・ボーカル・シリーズ』のVOCALOID製品を使用した動画が人気を集めていました。

「CVシリーズ」には「初音ミク」を含む第1弾から第2弾の「鏡音リン・レン」までが発表されていましたが、第3弾の製品の詳細はまだ公開されていませんでした。


そのため、2008年のエイプリルフールが近づいた3月30日未明、2ちゃんねるのVIP板利用者たちの間で、ニコニコ動画のユーザーをからかおうという企画が持ち上がりました。

彼らは架空のVOCALOIDを考案し、そのエイプリルフールの日にユーザーを驚かせようと計画しました。





重音テトは、性別はキメラであり、年齢は31歳、身長は159.5cm、体重は47kgで、キメ台詞はドラえもんのセリフから取られた「君はじつに馬鹿だな」です。

髪の色は赤褐色でドリルみたいなツインテールが特徴的です。目の色は鮮血のような赤で、楕円形の垂れ目の形をしています。


彼女の服装は軍服で、好きなものはフランスパン、性格はツンデレで、得意なことはレンタルDVDの延長で、苦手なことは歌です。

このような彼女のプロフィールは、2ちゃんねるコミュニティ内で楽しみながら設定されていきました。

 

 

 


エイプリルフールまでには2日しか時間がなかったにもかかわらず、お祭り好きで知られるVIP板の利用者たちは次々と賛同し、

偽キャラクターのプロフィールやイラスト、デモソングを含む偽の投稿動画、紹介用ウェブサイトなどを秘密裏に用意しました。


そして、2008年4月1日のエイプリルフール当日、用意された動画がニコニコ動画に公開されました。


翌日には、この企画に引っかかったユーザーをからかうページも公開され、一連の流れが笑い飛ばされました。

数日後には、この出来事をまとめたネタばらし動画もニコニコ動画に投稿されました。





2008年3月、音声を切り貼りして歌声を生成するUTAUという音声合成ソフトウェアが登場しました。

このソフトウェアは音声データを収録すれば、どんな声でも歌わせることができる特徴を持っていました。


エイプリルフールの後、VIP板利用者の中からUTAUを使って重音テトの歌声を作ろうという動きが広がりました。

そして、重音テトのキャラクターを再利用する計画が進められました。




小山乃舞世という人物の音声データをもとに、重音テトの音声ライブラリがUTAU用に作成され、公開されました。

こうした経緯から、元はジョークだった重音テトは、実際に歌声を生成するための音声データを持つ存在となったのです。


その後、彼女の人気は衰えず、VOCALOIDと同じく歌えるバーチャルシンガーとして、主にニコニコ動画などで大きな支持を受けました。

当初はただのネタキャラとして存在していましたが、有志の手によって音源が制作され本当に歌えるキャラクターとして復活することになりました。





この意外な転機によって、重音テトは不死鳥のような存在となり、その人気とプロフィールを確立しました。

重音テトがUTAUで使用されたことは、UTAU自体の注目を高めるきっかけにもなりました。


音声提供者の小山乃舞世さんは、最初の設定では「小山 乃舞世(おやま のぶよ)」という名前でしたが、後に「小山乃 舞世(おやまの まよ)」に変更されました。

重音テトのキャラクターボイスは元々大山のぶ代という設定でしたが、不自然なため変更されました。


キャラクターデザインは「線」さんによって行われました。





重音テトは、初音ミクの派生キャラクターとしてVOCALOIDファンの中で人気を集めました。

VOCALOIDに興味を持ったばかりの人々から、「VOCALOIDの一人」として誤解されることもありました。

 


 


重音テトは、VOCALOIDに関連するキャラクターとして知名度がありますが、彼女はVOCALOIDとは異なる技術を用いた音源データを持つ独立した存在です。

そのため、キャラクターの商用利用においても異なる扱いとなっています。


2010年4月1日テトの生誕二周年記念日に、初音ミクの権利元であるクリプトン・フューチャー・メディア株式会社は、重音テトを公認のオリジナルキャラクターとして正式に許諾しました。

これにより、クリプトンが運営するコンテンツ投稿サイトピアプロでは、重音テトのキャラクターイラストを投稿することが可能となりました。

 

 

 


さらに、カラオケ楽曲への「重音テト」表記のアーティスト表示や、社による正式許諾キャラの証である「PCL」の許諾取得も行われました。

重音テトの商用利用の窓口はクリプトンが担当することとなりましたが、権利的にはクリプトン製のVOCALOIDとは独立したオリジナルキャラクターという位置づけです。


その権利は、ビジュアルデザインを手掛けた線さんと、音声ライブラリを提供した小山乃舞世さんの両名が所持しており、

彼らを中心とした有志メンバーで構成されている「重音テト・オフィシャルサークル『ツインドリル』」がその管理と運営を行っています。


したがって、権利に関してはクリプトン社に移行したわけではないため、注意が必要です。





2018年4月には重音テトの誕生10周年を迎えました。

この記念の節目に合わせて、公式フィギュア化や、オーケストラライブ「初音ミクシンフォニー2018-2019」への起用が発表されました。


2021年12月26日にはテキスト読み上げソフト「TALQu」用音源の正式公開が開始されました。

これにより、重音テトの声を利用してテキストを読み上げることが可能となりました。


2023年4月27日、誕生から15年を経た重音テトが、次世代歌声合成ソフトウェア「Synthesizer V AI 重音テト」として発売されました。

 

 

 


このニュースは、インターネット上で重音テトのファンから、驚きと感動を持って迎えられました。


Synthesizer V AI 重音テトは、小山乃舞世さんの声を元に制作された全く新しい歌声データベースであり、

歌声は子供らしくも大人らしくもあり、エイジレスでありながらまっすぐで魅力的なものです。


重音テトは、元々はエイプリルフールのジョークから生まれた存在でしたが、その歌声と個性的なキャラクターが広く受け入れられ、

初音ミクの派生キャラクターとして定着し、VOCALOIDファンから愛される存在となりました。