架空で書くぅ -181ページ目

意味わかると怖い話書いてみた

<意味がわかると怖い話>というのを読んでいて

ひとつアイデアが浮かんだので、文章にしてみました。


まぁ、似た落ちはどこにでもありそうなですが、

この文章・構成は自分で考えたものです。


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【死後の世界】



アパートの廊下で知人の男に声をかけられた。
同じ階に住んでいる住人で時々廊下ですれ違った時に

挨拶をする程度の付き合いだ。


「先日はご迷惑をおかけいたしました。」
そう言うと男は深々と頭を下げた。


「退院されたんですね。」

実はこの男、自殺をしようとアパート屋上から飛び降りたが、

下の植え込みに落ち意識不明のまま動けなくなっていた。

丁度俺は仕事から帰ってきた所で、彼を発見して救急車を

呼んだのだった。

かなりの大怪我を負っていたのでしばらく入院生活をして

いたが、今日無事退院できたらしい。


「ところであなたは死後の世界、いわゆる天国や地獄は

存在すると思いますか?」

男が唐突にそんな言葉を言ってきたので少々びっくりしたが、

「いや、死後の世界は<無>だと思いますよ。」と答えた。


死後の世界など信じていない。そんな宗教じみた話はナンセンスだ。
<死>は誰も避けては通れないことではあるが、現段階で証明

不可能な事について考えるよりも、今の俺にとってはこの一瞬を

どう生きるかという事のほうがよっぽど大切だ。


男はそんな俺の答えを否定するかのように

「死後の世界はあるんですよ。僕、病院へ担ぎこまれたとき臨死体験を
してあの世というものを見てきたんです。」


俺は黙って彼の言葉を聞いていた。


「それでひとつわかったことがあるんです。よく自殺者の魂は地獄に
 落ちるとかこの世を彷徨い続けるとか言いますが、実はそうでは
 なくて自殺をしても魂はちゃんと別世界にいけるんですよ。」

「僕が見た死後の世界は痛みも苦しみも感じない天国でした。」


そんな言葉を残し、彼は数日後ふたたび自殺をはかり、今度は本当に
帰らぬ人となってしまった。


それから何年かすぎ、俺もいよいよこの世とお別れするときがきた。


薄れゆく意識の中、一瞬あの男言葉を思い出したがすぐに取り消した。
このまま骨となり灰となって大地へ帰るのだ。これですべてが終わる。


    さようなら。 愛しの妻よ、我が子よ…。


もう体はピクリとも動かすことはできなかった。徐々にあたりが
暗くなっていく。しかし、俺の意識はいつになっても薄れて消える
ことはなかった。

「俺はまだ死んでいないのか? それともあの男が言っていたように
 死後の世界は存在していて、ここはその入り口なのか?」


暗闇に目が慣れてくると、どうやら先に道らしきものが続いている。


そいえば多くの臨死体験者の話では暗いトンネルを抜けるといきなり
眩しい光に包まれてお花畑や小川の流れる天国が目の前にひらけると
言っていたな。


ここに立ち止まっていても仕方がないので俺はこの暗闇の道を進んで
みることにした。


どれくらいの時間が経ったのだろう…?数日?数か月?数年?
行けども行けども暗い道はまだまだずっと先まで続いていて出口らしき
ものは見えてこない。


もう自分が死んでしまっていることは自覚している。無だと思っていたが
死後の世界は存在していた。だだそれだけのことだ。

それに前世で聞いた死後の世界の話が本当ならば、そのうちお迎えが

来て導いてくれるのだろう。


そんなことを考えながら歩き続けていると突如進行方向の先に眩しい

光が放たれた。


『死後の世界へようこそ。』光の中から何者かの声が聞こえてきた。


実際には言葉というよりも心の中に直接語りかけられている感じだ。
これでやっと天国といわれている場所へ行ける。 心底喜んだ。


しかしその直後、俺の心の声に答えるようにその光の中の者がふたたび

語りかけてきた。


『いいえ。あなたは天国へはいけません。』

「えっ!?じゃあ地獄へ行くのか?」

『いいえ。地獄にも行きません。』

「じゃあ、もう一度生まれ変わるのか?」

『いいえ。生まれ変わりません。』


『あなたに与えられた死後の世界はあなたが生前望んでいた通りの
 "無"の世界ですよ。』


そう言い終えると光は闇へと吸い込まれていった。