劇団ヴァージニティーpresents PARANOIR PARADISE

劇団ヴァージニティーpresents PARANOIR PARADISE

熊本からコメディ劇団設立を目論み中。
いつの間にか音楽関係の知人が増加中ですが、
当人は正に【ボエー】の似合う歌唱力。


テーマ:
 

加藤:では、やっぱり法人化が良いと。
 
ミコト:そうですね、加藤さんご自身の所得だと、
    今回で累進課税制度の上限に達してしまう以上、
    前年の利益率と成長率を維持できるようなら、
    法人格を有した方が間違いなく節税効果は高いです。
 
加藤:そうですか、妻ともしっかり話し合って検討してみます。
 
ミコト:個人所得だと累進課税で所得税のみで45%に達してしまいますからね。
    法人化することによって経費の幅も広がりますし、
    数年前に施行された法人税率の軽減によって、
    上手くいけば約27%の租税回避が見込めます。
 
加藤:なるほど。
 
ミコト:うちの会計事務所では行政書士の有資格者も数多いので、
    法人化届け出の手続きをご所望なら、何時でもお申し付けください。
 
加藤:ミコトさんも、お持ちなんですか?資格。
 
ミコト:ええ、一応。
 
加藤:そうですか、ではその時が来たら是非お願いします。
   さて、そろそろ打合せ開始から1時間だ。ちょっと休憩しませんか。
 
ミコト:はい。
 
加藤:あ、コーヒーでもご用意しますよ。
 
ミコト:ありがとうございます。
 
加藤:いやはや、しかし流石のお手並みですね。
 
ミコト:何が、ですか?
 
加藤:あなたの事ですよ。
 
ミコト:まあ、仕事ですので。
 
加藤:その若さでこれだけ優秀な方に、私は出会った事が無い。
 
ミコト:世の中広いですよ。私なんてまだまだ。
 
加藤:ストレスとか悩みとか、あるものですか?
 
ミコト:ええ、人並みには。
 
加藤:才女の悩みというのも面白そうですね。
   雑談ついでに教えてもらうことはできませんか。
 
ミコト:まあ、個人的な事なので。
 
加藤:まあそう仰らずに。
   解決の糸口なんて、日常生活の何気ない会話の中に落ちているものですよ。
 
ミコト:はあ・・・。
 
加藤:もしかしたら、貴女の悩みを解決する手段を私が持っている可能性だってある。
   全ての可能性はゼロではないですから。
 
ミコト:では、この場限りの秘密になさってくださいますか。
 
加藤:勿論。
 
ミコト:私、知らない言葉が出てくると、必ずネットで検索をかけてしまうんです。
 
加藤:知的探求心の旺盛な現代人ならごく普通の事ですよ。
   私も調べ物の時はネットを大いに活用します。
 
ミコト:でも、こないだ知った言葉を検索かけても、何も出てこないんです。
    そのせいで夜も全然眠れなくて。
 
加藤:ふーむ、何ですかそれは。
 
ミコト:げちょひょーん。
 
加藤:は?
 
ミコト:いえ、だから、【げちょひょーん】です。
 
加藤;何ですかそれは。
 
ミコト:解決、できますか?
 
加藤:う、うーん・・・。
 
ミコト:やっぱり、貴方もそうなんですね。
 
加藤:い、いや、流石に戸惑いますね。
 
ミコト:何故です。
 
加藤:ギャップが。
 
ミコト:ギャップ?
 
加藤:才女の風格漂わせる貴女から、そんな言葉が出てくるとは。
 
ミコト:そんな…ってことは、
   加藤さん、ご存じなんですか!?げちょひょーんのこと。
 
加藤:見当もつきません。
    ただ、美人が絶対口にしなさそうな単語のイメージではありますけどね。
 
ミコト:そうですよね・・・。
 
加藤:というか、何でそんな言葉が出てくるんですか。
 
ミコト:少し前なのですが、私の友人が何気に呟いた言葉なんです。
 
加藤:その友人に聞けばいいじゃないですか。
 
ミコト:今は無理なんです。色々ありまして。
    それに、自分自身で解決したいっていう変な欲が出ちゃったんです。
 
加藤:まあ、親密度の低い相手の方が相談しやすい加減があるのは分かりますが。
 
ミコト:最初は怒りにかまけて聞き流していたんですけど、
    冷静になってしまうとどうしても気になっちゃったんです。
 
加藤:記憶力の良さが裏目に出る例ですね。
 
ミコト:あれ以来私の頭の中には、げちょひょーんが棲み着いて離れないのです。
 
加藤:さっき流暢に仕事の話をしていた時も?
 
ミコト:油断すると無意識に出てたでしょうね、げちょひょーん。
 
加藤:ちょっと先ほどの話を、油断して話してみてくれませんか。
 
ミコト:からかい始めてません?
 
加藤:そんな事はないですよ、悩みの解決にはまず現状把握から。
   貴女の現状をきっちりと把握することが解決への道の一つです。
 
ミコト:加藤さんのげちょひょーんだと、
    今回のげちょひょーん制度では45げちょひょーんになってしまうんです。
 
加藤:もはや暗号ですな。
   何ですか、45げちょひょーんって。
 
ミコト:英語で言うとアイドルグループっぽくなりません?
 
加藤:なりませんよ。
 
ミコト:げちょひょーん48。
 
加藤:言わんでいいです。
 
ミコト:しかもですね、げちょひょーんが私の中で進化してきてるんです。
 
加藤:そんな物にまで進化論が適用されるんですか?
    きっとあの世で嘆いてますよ、ダーウィン。
 
ミコト:ええ、最初はただのげちょひょーんだったのですが、
    時々促音が追加されるんです。
 
加藤:促音?
 
ミコト:小さい【つ】の事です。
 
加藤:げっちょひょーん、ですか?
 
ミコト:いえ、げちょっひょーんです。
 
加藤:言いにくい!
 
ミコト:そうですか?
 
加藤:難しいですね。
 
ミコト:ただ、げちょっひょーんはどうも強めの感情を表しているようですので、
    日常の基本形は、結局げちょひょーんで落ち着くんです。
 
加藤:貴女の匙加減でしょうが。
 
ミコト:促音は基本発音しないので、
    もしかしたら時々げちょっひょーんではなくて、
    【げちょ】と【ひょーん】に分裂しているのではないかという不安もよぎります。
 
加藤:そこは冷静に分析パターンを構築してるんですね。
   ていうかちょっと待ってください。
   貴女に連呼されると、私の脳にまで住み着き始めましたよ。
 
ミコト:げちょひょーんが一匹、げちょひょーんが二匹…。
 
加藤:新たな展開を作るなー!
 
ミコト:夜寝るときに数えてみてください。
 
加藤:羊に謝って下さいよ!
 
ミコト:効果は真逆です。
 
加藤:気になって寝れなくなるよ!俺も!
 
ミコト:そんなに怒らないでくださいよ、そちらから聞いて来たくせに。
 
加藤:いや、私の想像の範疇を軽々と超えてきたもので・・・。
   失礼しました、では冷静になりましょう。
 
ミコト:げちょっ、げちょっ、げちょっ、げーちょひょーーーーん。
 
加藤:不意打ちでリズムに乗せないでくれ!
 
ミコト:失礼、脳内でこんな感じで毎日リフレインするんで、つい。
 
加藤:それはそれでお辛いでしょうけど。
 
ミコト:辛いです。
 
加藤:因みにそのお友達は、どういうシチュエーションでその言葉を発したのですか?
 
ミコト:同居人なんですけど、私の共通の友人と電話で会話している時に発してました。
 
加藤:ちょ、ちょっと待ってください。
 
ミコト:はい。
 
加藤:げちょひょーんの存在を知る人が、まだいるんですか?
 
ミコト:その共通の友人でおそらく最後だと思います。
 
加藤:その人には聞けないんですか?
 
ミコト:何か聞きにくいじゃないですか、近すぎる関係だと。
 
加藤:うん、まず貴女自身がそのお二人に確認することが最優先ですね。
 
ミコト:やっぱりそうですか。
 
加藤:まあ、私にできるアドバイスはこんなところですね。
 
ミコト:ありがとうございます、気持ちが前向きになりました。
 
加藤:せっかくですので、せめて寝不足解消だけでもお手伝いしますよ。
   睡眠薬でもお使いになりますか?
   こっそり処方してあげますよ。
 
ミコト:先生、それはいくら何でも、げちょひょーん法違反ですよ。
 
加藤:症状悪化してますって。
 

テーマ:
 
窓口:703番さーん。
 
秋野:はい。
 
窓口:住民票1通ですね。300円になります。
 
秋野:はいどうも。
 
(振り返ると、見慣れた顔を見つける)
 
秋野:あれ、おーい、佐藤!
 
??:・・・。
 
秋野:おい、佐藤ってば。
 
??:・・・。

(秋野、人違いかと思うもやっぱり間違ってないという表情)

秋野:おい、ショウ!
 
ショウ:お、何だ秋野か。久しぶりだな。
 
秋野:何だじゃないよ、反応してくれよ。
   人違いかと思ったじゃねえか。
 
ショウ:ああ、ごめん。前の名字で呼ばれてたから気づかなかったんだ。
 
秋野:え、今はもう佐藤じゃないのか?
 
ショウ:ああ、2か月前に変わっちゃったんだ。今は加藤。
 
秋野:あ、そうか。お前結婚したんだっけ。
   奥さんの家に婿養子になったのか。
 
ショウ:いや、ガチャで。
 
秋野:・・・???
 
(秋野、訝しがるような感じで)
 
秋野:あの、もう一回いいか?
 
ショウ:ガチャで加藤が出たんだよ。
 
秋野:ショウ、お前薬剤師だったよな。
 
ショウ:ああ。
 
秋野:その立場を利用して、ついに法を脱する薬まで扱い始めたか。
 
ショウ:人聞きの悪い事を言うな。
    名字ガチャを引いただけだよ。
 
秋野:名字ガチャ?
 
ショウ:ああ、1回30万円の名字ガチャだよ。
 
秋野:お前そんなのに30万円払ったの?
 
ショウ:悪いか。
 
秋野:悪いだろ。ていうか詐欺だろ。
 
ショウ:でも、もう住民票も保険証も加藤なんだよ、ほら。

(秋野に差し出す)

秋野:本当だ…。
 
ショウ:羨ましいか?ん?
 
秋野:確かに、30万円を無駄金にするお前は凄いよ。
 
ショウ:無駄じゃねえよ、佐藤が加藤に変わったんだぞ。
 
秋野:滑舌悪い奴からしたら何の変革も起きてねえよ。
   そもそもどこでそんなのやってんだよ。
 
ショウ:ここだよ。
 
秋野:役所!?
 
ショウ:区役所2階の区民課だよ。
 
秋野:身近すぎる!この真上かよ!
 
ショウ:激レアの姉小路(あねこうじ)とか勅使河原(てしがわら)とか狙ったんだけどな。
 
秋野:確かに元貴族っぽい感じの名前だけど。
 
ショウ:今日リベンジで挑戦するつもりだけどな。
 
秋野:地元に課金してることになるのか、これは。
 
ショウ:そうだな、あとは住民税納付額が100万超えると1回無料。
 
秋野:それは何課金勢に分類されるんだ。
   そもそも確率ってどうなってんだよそのガチャ。
 
ショウ:加藤が出る確率は、1億2000万分の89万くらいだな。
 
秋野:約分してくれ。
 
ショウ:日本の名字数と確率がリンクしてるんだよ、比率を崩さないようにな。
 
秋野:どういうことだ?
 
ショウ;ちなみに佐藤は1億2000万分の約189万。
 
秋野:ということは・・・佐藤って全国に1.5%もいるの?
 
ショウ:自分で約分できるじゃねえか。
 
秋野:ちなみに、お前の狙ってる激レア名字ってどのくらい?
 
ショウ:公表値では40人くらいらしいけど。
 
秋野:バカだ、お前はバカだ。
 
ショウ:でもな、勅使河原はみんなの憧れだろ?
 
秋野:せいぜい合コンで最初ちょっと盛り上がるくらいしか想像がつかん。
 
ショウ:確かに勅使河原レベルになると幾ら課金すればいいか分かんねえから、
    とりあえずは京極辺りで妥協するかもしれないけどな。
 
秋野:謝れ、全国の京極さんに謝れ。
   京極や勅使河原を引く前に、絶対に佐藤に戻ると思うけどな。
 
ショウ:いや、分らんぞ。今は10連ガチャを引くために貯金してるからな。
 
秋野:奥さん家で泣いてるだろ、そんな金の使い方。
 
ショウ:バカ言え、10連ガチャが今なら10%オフなんだぞ、
    こんなチャンスは二度と無いぞ。
 
秋野:一度だって必要ねえよ。
 
ショウ:お前はさっきから否定しかしていないがな。
    自分が知らなかった世界の事を安易に批判するだけなら誰でも出来るんだぞ。
 
秋野:なんだよ急に。
 
ショウ:一人の友人として言わせてもらうが、
    俺が佐藤から加藤になると、何かお前に不都合が起きるのか?
 
秋野:いや、お前さっき呼んでも返事しなかったろ。
 
ショウ:俺はな、小学生の頃にこの名字ガチャの存在を知ってから、
    絶対に回す、絶対に佐藤とおさらばしてやる、という確固たる意志を持ってるんだよ。
 
秋野:そんなに佐藤が嫌だったのか?
 
ショウ:ああ、嫌だね。クラスに3人佐藤がいると、絶対こう呼ばれるんだ。
    佐藤A、佐藤B、佐藤Cってな。
 
秋野:RPGゲームの敵みたいな扱いだな。
 
ショウ;そんな寂しい人生ともおさらばだ。俺は絶対に勅使河原になってやる。
    そう心に誓い、収入抜群の薬剤師になるべく日々の努力を積み重ねてきたんだよ。
 
秋野:動機が結構なレアだな。
 
ショウ:大体だな、先祖が決めたか何だか知らないが、
    名字が変えられないなんておかしいと思ったんだよ。
    国の野郎、案の定売ってやがったんだぜ。
 
秋野:その販売市場は需要と供給が乖離しすぎてるけどな。
 
ショウ:なあ秋野、ちょっと俺と一緒についてきてくれないか?
 
秋野:2階にか?
 
ショウ:ああ、お前が回してくれないか。
 
秋野:やだよ、絶対高橋とか渡辺とか引くぞ。
 
ショウ:頼むよ、お前が言う通りなんだよ。
    加藤だと、名字が変わったことに全然気づかれねえんだよ。
 
秋野:でも、確かに興味ある。
 
ショウ:よし、頼む!
 
 

(暗転)
 

(場面転換。秋野、バイト先のバーに着く)
 

由樹:あら秋野くん、遅かったわね。住民票持ってきた?
 
秋野:あの、すみません、取るには取ったんですけど、
   ちょっと取り直しになりそうで。
 
由樹:どうしたの。
 
秋野:あの、僕今日から山村じゃなくて姉小路になりまして。
 
由樹:なんで?
 
秋野:いやあ、ガチャの魔力って怖いですねえ。
 
 
 

テーマ:



(夜道を歩いているミコト。
 後方に注意を傾けながら、しばらく歩き続ける。)




ミコト:・・・。




(ミコト、足を止める。振り返らず声を発する。)



ミコト:・・・誰。



(返事はない)


ミコト:分かってんのよ、さっきからずーっとつけてきてんの。
    

(ミコトの背後から出現)


田中:やあ、ばれましたか。

ミコト:ばれましたか、じゃないわよ。
    あれだけ凄い足音を出しながら歩いてちゃ、誰だって気づくわね。

田中:足音・・・ですか?
   そんなはずはないですよ。


(田中は靴がない)


ミコト:靴履いてないの?
    それに何よ、そんな黒のロングコートなんか着ちゃってさ。

田中:いえ、靴とか履く必要ないんですよね。
   見ます?コートの中。

ミコト:ははーん、さてはコートの中身は全裸っていうアレね。
    いいわよ、どんだけお粗末なものがあるか見届けてやろうじゃない。


(田中は足がない)


ミコト:・・・!!!

田中:すいません、お粗末で。

ミコト:ちょちょちょっと、もしかしてあんた・・・。

田中:幽霊とは違うんですよねー。
   一緒にされたくないっていうか、プライドが許さないんですよ。

ミコト:この日本で夜に出る足のない存在なんて、
    幽霊以外ないでしょう!?

田中:いやあ、私死神なんですよ。

ミコト:もっとタチ悪いの来ちゃったじゃない!

田中:おっかしいなあ。また見つかっちゃうなんて。
   これで今月3人目ですよ、ばれたの。

ミコト:スキが多いのね。
    ちょっと足元がお留守なんじゃない?

田中:留守どころか在宅してませんよ、私の元には。

ミコト:で、その死神が一体に何の用よ。

田中:適応早いなあ。良い事です。
   ま、ありていに言えばですね。
   お迎えに参上しました。

ミコト:お迎えって・・・天国の?

田中:いやー、どっちかっていうと地獄かなあ。

ミコト:何でよ!何であたしが地獄なの!?

田中:7勝8敗くらいで。

ミコト:何よその千秋楽までもつれた感のある表現。

田中:このままでは天国行きからの陥落は免れないでしょうね。

ミコト:紙一重で天国に行けるとかあんの?

田中:いやー、私にはその決定権が無くて。

ミコト:なんだ、ただの使いっぱかあ。

田中:表現悪いわー。減点1。

ミコト:今からでも減点されんの?

田中:勿論。まだ生きてますからね。

ミコト:でっでも私、そんなに悪い事なんて何にもしてないのよ?

田中:悪い事をする人は、無自覚だから悪い事が出来るんですよ。

ミコト:じゃあ教えてよ。このままじゃ理不尽だわ。

田中:例えばですね、2週間前自宅に出たゴキブリを、
   理由もなく殺生しましたよね。
   あれも立派な案件です。

ミコト:ええー、あれダメなの?

田中:生命を奪う行為は、正当防衛以外はどうあろうと減点対象です。

ミコト:でもさ、気持ち悪いんだもん。

田中:生理的感情論だけで許される事では無いですので。

ミコト:そんなこと言ったら、人類の殆どは地獄に落ちちゃうじゃない。

田中:そうですよ。

ミコト:あっさりー!

田中:天国なんて幻ですよ。生きるも地獄、死ぬも地獄。
   ただ訪れるのが早いか遅いかだけです。

ミコト:そもそも単なる使いっぱが、
    ここまでベラベラしゃべって大丈夫なの?

田中:もういいですよ、生前に姿を見られた時点で始末書ですから。

ミコト:始末書なんか書くの?

田中:ええ、もうこれで今月3枚目です。

ミコト:ああ、みんなにバレてんだもんね。

田中:このままじゃ配置転換されちゃうんです。やばいなあ。

ミコト:死神って世知辛いのね。

田中:こっちでいう所の市役所職員みたいなもんです。

ミコト:うわ、夢も希望も無いわね。

田中:何を言います、9.3倍の狭き門を潜り抜けて採用されたんですよ。
   将来は明るいはずです。

ミコト:死後の世界に明るいもへったくれも無いと思うけど。

田中:死神課の課長になれば、なんと通勤手当が倍になるんですよ。

ミコト:止めてよ、悲しくなるから。

田中:というわけで、あなたにお願いがあります。

ミコト:はあ?

田中:私が見えなかった事にして下さい。

ミコト:私は今あなたの一挙手一投足をまじまじと体感してるんだけど。

田中:ですよねー。やばいなあ。
   最近失敗続きだから、このままじゃなー。

ミコト:ねえねえ、ふと思ったんだけど。

田中:なんです。

ミコト:私が死ぬのって、もう決まっちゃってるの?

田中:ですね。

ミコト:いつ?

田中:明後日。

ミコト:早っ!何その無感情な宣告。
    え、どうやって死ぬの?

田中:それは個人情報ですので。

ミコト:・・・それ、私自身の情報でしょ?
    誰が誰に対して保護すんのよ。

田中:それもそうですね。
   あなたは明後日、鹿の群れに踏まれ続けて亡くなります。

ミコト:何よその三文記事で扱われそうな死に方。

田中:あなた、明日から奈良へ出張でしょう?

ミコト:日本で鹿が群れてる所なんてそこ位しか無いもんね。
    という事は、あんたやっぱり本物なんだ。

田中:ですです。

ミコト:足のない人に、足で踏まれる予言を聞かされるって一体・・・。

田中:そんなに気を落とさないで下さい。
   アリクイに食われて死ぬよりはいいでしょう。

ミコト:アリクイって何食べるの?

田中:アリ。

ミコト:あんた、バカ?

田中:失礼な。こう見えて大学主席ですよ。

ミコト:学歴なんて社会に出たらなーんも関係ないからね、このドジ男。

田中:魂に響く言葉ですね。

ミコト:ていうかさ、もし私が奈良に行かなかったらどうなるの?

田中:死なないかも知れませんね。

ミコト:そんな事って許されるの?
    あんたが予言したんでしょ。

田中:あくまで予定ですから。予定は未定。

ミコト:そんな軽い感じなの?

田中:あなたに起こる運命よりもっと強い事象の運命が起これば、
   そちらを優先せざるを得ませんから。

ミコト:ねえ、このお迎えを逃したら次はいつなの?

田中:次は・・・73年後ですね。

ミコト:あんた、死神どころか救いの神だわ。

 


テーマ:
久々に男性しか登場しない作品。
ネタの方向性の偏り方がッ…!!
余りにも酷いッ・・・!!
 
 
 
 
 

高月:中村さん、すみませんね。お付き合いいただいちゃって。
 
中村:いいえ、これも管理会社の仕事ですから。
   それにしても、家賃半年滞納は厳しいですね。
 
高月:いきなり契約解除を出してもよかったんですけど、 
   それで向こうさんが感情的になっても面倒臭いですしね。
 
中村:着きました、ここがスガさんのお部屋ですね。
 

(ドンドン)
 

高月:スガさーん!いらっしゃいますかー。
   家主の高月ですけどー。
 

(シーン)
 

中村:反応がありませんね。
 
高月:もう何度も居留守を使われているのは分かってるんです。
 
中村:あら、開いてますね。
 

(ガチャ)
 

高月:スガさーん、いますかー?
 
スガ:はーい、どーぞー。
   ゲホゲホッ。
 
高月:スガさん、いらっしゃったんですか。
   お邪魔しますよ。
 
スガ:すみません、こんな格好で。
 
高月:あらら、寝てらっしゃったんですか。
 
スガ:ええ、どうにもこうにも具合が悪くて。
   立ち上がることも困難なんです。
   ゲホッゲホッ。
 
高月:あらららら。
   言われてみればお顔の血色も悪そうに見えますね。
 
中村:体調崩されてどの位になるんですか?
 
スガ:そうですね、かれこれ半年ほどでしょうか…。
   エホッエホッ。
 
中村:家賃が止まったころと一致しますね。
 
高月:一体どうしたんです。 
   医者には行かれてるんですか?
 
スガ:最初は行ってたんですが、
   やはり医療費が高すぎて、薬代も購入できなくなったんです。
 
高月:今時そんな保険のきかない薬なんてあるんですか?
 
スガ:やだなあ、かなりあるんですよ。
   なんせ今の日本は【ドラッグ・ラグ】ですから。
 
中村:ドラッグ・ラグ?
 
スガ:日本と海外との新薬認可の差の事ですよ。
   あいつ等がお役所仕事をしている間にも、僕の体は蝕まれていくんです。
   ウエッホウエッホ。
 
中村:高月さん、ここは一旦出直しましょうか。
 
高月:うーん・・・。
 

(ガチャ)
 

佐藤:おーい、スガいるかー!
 
スガ:お、おい、今来客中だから後にしろ。
 
高月:こちらの方は?
 
佐藤:初めまして、スガの友人で薬剤師の佐藤と申します。
 
中村:どうなさったんですかそんなに息を切らして。
 
佐藤:いやあ、一刻も早くこいつに知らせたくて。
 
高月:我々に構わないで大丈夫ですよ、どうぞ。
 
佐藤:おいスガ、聞いて喜べ!
   ようやく日本でもあの薬の認可が下りたぞ!
 
スガ:お、おい、今言わなくていいじゃないか。
 
佐藤:いやいやいやいや、少しでも早くお前に伝えたくてな!
 
スガ:電話でもいいだろ。
 
佐藤:俺はこの喜びを、一刻も早くお前と分かち合いたかったんだよ!
   まさかジェネリック販売の許可が下りるなんてな!
 
高月:暑苦しい人だな。
 
中村:すみません、ジェネリックって何です。
 
佐藤:後発医薬品の事ですよ。
 
高月:後発医薬品?
 
佐藤:簡単に説明しますと、
   日本で最初に開発された薬には特許があり、
   同じ有効成分で同じ効き目の薬を他社は開発できないんです。
 
高月:えっ、そうなんですか?
   どの世界にも既得権益ってあるんですね。
 
佐藤:仕方がないと言えば仕方ないんですよ。
   新薬の開発費って数百億円が普通ですからね。
 
中村:そんなにかかるんですか!
 
佐藤:でも、ジェネリック医薬品なら数千万円で済みます。
   同じ成分の薬が、かなり安価で入手可能になるんですよ。
 
高月:へえ、そりゃ助かる。
   これでスガさんの病気も良くなるんですね。
 
佐藤:病気?まあ病気と言えば病気ですけど。
 
高月:ん?どういうことです?
 
スガ:佐藤くん、少しおしゃべりが過ぎるよ。
 
佐藤:という訳で早速手に入れてきたぞ、シルデナフィル。
 
スガ:あ、ああ、ありがとう。さようなら。
 
佐藤:なんだよ、つれない奴だな。
 
高月:それ、一体何の薬なんですか?
 
佐藤:バイアグラのジェネリックですよ。
 
中村:はあ?
 
佐藤:バイアグラですよバイアグラ。
   御存知ありません?
 
中村:存じてますよ。
   多分日本で一番有名なED治療薬じゃないですか。
 
高月:スガさん、一体どういうことです?
 
スガ:えほっえほっ。
 
高月:棒読み猿芝居は止めて下さいよ。
   立てないくらい悪かったんじゃないですか?
 
スガ:いや、だからその、勃てないくらい悪いんです。
 
高月:そういう意味かよ!
 
佐藤:よかったな、これでお前の自信も戻ってくるぞ!
 
高月:アンタも中々に空気読めねえな。
 
佐藤:いやー、俺は嬉しいよ。
   来週の合コンにお前が参加してくれれば百人力だよ。
 
高月:不純しかない流れだな!
 
佐藤:黒光りガースーの上腕二頭筋ツカミ、鉄板だからなあ。
   上も下もカッチカチ!のツカミが聞けなくて寂しかったんだぞ。
 
高月:何だそのゲスい鉄板。
 
中村:スガさん、ちょっと立ち上がってくださいよ。
 
佐藤:お、早速飲ませちゃいます?シルデナフィル。
   薬剤師的には行為1時間前をお勧めしていますが。
 
中村:ええー、とりあえず浣腸買ってきていいですか?
 
高月:中村さん大丈夫ですか!?
   そっちの世界の住人ですか?
 
中村:いやでも見て下さいよこのスガさんの身体。
 

(スガ、上半身を脱いでポーズ)
 

高月:何脱いでんだよ!調子乗ってポーズとんなよ!
   健康体そのものじゃねえか!
 
中村:いやあ、この肉体は芸術だ。
   この身体なら我が身を差し出しても構わないですな。
 
高月:この場でいきなりそんなカミングアウト要りませんよ!
 
佐藤:流石毎日ジムで鍛え上げてるだけはあるな。
 
スガ:おい、そんなにしゃべるな。
 
佐藤:しかも海外直輸入のプロテインやステロイドも取り入れちゃうなんて、
   本当頭が下がるよ。
 
高月:いろいろバラしちゃってるよこの人!
   ある意味スガさん可哀そうになるな!
 
佐藤:シルデナフィルでお前の別の頭は上がるけどな!
 
高月:一番ゲスいのこの人だー!
 
佐藤:それにしてもジェネリックって有り難いよな。
   スガの唯一の悩みが一気に解決したからなあ。
 
高月:唯一の悩みが解消して、別の悩みが浮上してるでしょうけどね。
   家賃払えよこの野郎。
 
スガ:僕のチンじゃだめですか?
 
高月:うまいこと言った気になってんじゃねえぞ、このバイアグラ男。
 
佐藤:いや、シルデナフィル男ですよ。
 
高月:うるせーよてめー!
 
中村:仕方ないなあ、今回はそれでいいですよ。
 
高月:中村さん!?勝手に決めないでくださいよ!
 
佐藤:あとこれ、歌詞渡しとくな。
   折角だから皆さんもご一緒にどうですか?
 
高月:か、歌詞?
   何ですかこれ?
 
佐藤:いやー、今度スガに、
   ウチの製薬会社の広告塔になってもらうんですよ。
 
高月:広告塔!?
 
佐藤:そうそう。
  【けっこうみんな、悩んでいる】的な。
 
高月:その広告、そんなにメジャーなのかよ!
 
佐藤:最後に、スガ。これだけは言っておくぞ。
 
スガ:な、何だ?
 
佐藤:副作用で筋肉痛を引き起こす可能性があるから気を付けろ。
 
高月:シルデナフィルはもういいよ!
 
 
 
 

テーマ:

今回は久しぶりの女性3人形式コメディ。

この話、実は登場人物ごとに別ネタがあるのですが、

それはまた折を見て。

一応設定をざっくりとだけ載せておきます。

 

あゆみ・・・バー勤務、若干とろい。

ミコト・・・会計事務所勤務。あゆみと同居中。

乃里子・・・以前は二人と一緒に住んでいたが、今は近所に住む主婦。

 

 

 




あゆみ:・・・。





(ガチャ)


乃里子:やほー、何してんの?

あゆみ:来週のイベントの練習。

乃里子:アンタの勤めてる飲み屋の?

あゆみ:うん。

乃里子:で、何してんの。

あゆみ:見ての通りだよ。

乃里子:見ての通りというよりは、嗅いでの通りかしらね。
    凄い匂いよ、それ。

あゆみ:乃里子ちゃん、納豆の匂い駄目な人?

乃里子:別に駄目じゃないけどさ。
    うわ、テーブルがむっちゃネバネバしてる。

あゆみ:次は納豆早移しなんだもん。

乃里子:小豆、里芋ときて次は納豆?
    
あゆみ:面白いよね、段々難易度上がってるんだよ。

乃里子:面白いのはそのお店のママの頭の中だわ。

あゆみ:次は味の素の粒移しを考えてるんだって。

乃里子:で、アンタがモルモットにされるの。

あゆみ:モルモットってひどーい。
    テストプレイヤーって呼んでよ。

乃里子:そう煽てられて練習してる訳ね。
    ご苦労なこったわ。

あゆみ:で、今日はどうしたの?

乃里子:いやさ、旦那帰って来るまで暇だなーって思って。

あゆみ:不良主婦だね、家事しなよ。

乃里子:あのね。
    掃除や洗濯って、慣れると意外と早く終わんのよ。

あゆみ:汚ギャルのノリちゃんともあろうお方から、
    そんな言葉が聞けるとは。

乃里子:昔の話でしょ。

あゆみ:昔ったって、一緒に住んでた頃は家事一切ダメだったじゃん。
    まだ1年だよ?

乃里子:人間その気になれば何でも出来るって証左ね。
    寧ろアタシはアンタが飲み屋で働けてるのがビックリだわよ。
    かつてのヒッキーがさ。

あゆみ:いい人なんだよねー、ママもボーイくんも。

乃里子:お店結構閑古鳥なんでしょ?大丈夫なの?

あゆみ:潰れたらまたいい働き口見つかるまでのーんびり暮らすもん。

乃里子:ヒッキーというかヒッピーというか。

あゆみ:へへっ、あたしは雲のように生きるの。

乃里子:一生そうやって流されて生きな。
    で、ミコトはまだ帰ってないの?

あゆみ:ミコトちゃんならずっと寝てるよ。

乃里子:起こしちゃダメなの?

あゆみ:逢魔時に起こせって言われてるから。

乃里子:絶対ミコトがそんな言葉知ってる訳ない。アンタの表現でしょ。

あゆみ:夕暮れ時は昔から災いを齎すって言われてるんだよ。

乃里子:うんごめん、ご高説の所悪いけど。
    あたし一応西洋式の時刻表示で生きてるからさ。

あゆみ:世話が焼けるね。

乃里子:多分世間的にはその単語、アンタの方を指すだろうけどね。

あゆみ:今風に言えば、夕方六時ごろかな。

乃里子:ありがと。
    でも、どうしてこんな時間に。

あゆみ:うん、今日はどうしても行かなきゃいけない所があるんだって。

乃里子:夕方からわざわざ?何処に行くの?

あゆみ:高尾山らしいよ。

乃里子:夕方から?

あゆみ:変だよね。

乃里子:ねえあゆ、ミコト一体何時に寝たの。

あゆみ:十時。

乃里子:朝の?

あゆみ:夜の。

乃里子:あのね、一般人は20時間後に起こせって多分言わないわよ。

あゆみ:でしょー?あたしも凄く寝るなーって思って。

乃里子:あーあ、可哀そうにアイツ。

あゆみ:あ、時間だ。



(『エリーゼのために』が流れる)



乃里子:またよく寝そうな目覚まし曲だこと。

あゆみ:この曲が良いんだってさ。

乃里子:何でよ。

あゆみ:会社の上司からの着信音、コレにしてるんだって。

乃里子:最高の目覚めの演出ね。




ミコト:ギニャーーーーーーーーーッ!!




乃里子:ギニャーって。

あゆみ:人間心の底から慌てると、変な声出るねえ。

ミコト:ちょっとあゆみ!!どーゆーことよ!!

あゆみ:六時だよ、おはよー。

ミコト:あたしゃ朝の六時でお願いしたのよ!
    あーあ、折角の高尾山デートが・・・。
    ライン見るのが怖すぎる。

あゆみ:未読スルーはマナー違反だよ。

ミコト:余計なお世話!

乃里子:1日の6分の5寝れるアンタもアンタよ。

ミコト:あら乃里子、いたの。

乃里子:いたのじゃないわよ、来客よ来客。
    ほら、もてなしなさい。

ミコト:あたし達を裏切って結婚して出て行ったあんたを、
    あたしは客とは認めない。

乃里子:冷たいわねえ。

あゆみ:冷たいねえ。

ミコト:しかもクッサ!何なのこの匂い!
    最悪の目覚めだわ。

あゆみ:あれ、ミコトちゃん納豆NGだっけ。

ミコト:発酵物全般がNG。

乃里子:そうだよあゆ、コイツ確かヨーグルトとかもダメだったはず。

ミコト:体内に菌が入るっていう感覚がもうアウト。

あゆみ:善玉菌だよ?

ミコト:あたしのボディには善悪一切関係無いね。
    というわけでさっさと片付けてくれないかな。

あゆみ:はあい。

乃里子:で、ミコト。何よさっきのセリフ。

ミコト:高尾山デートの事?

乃里子:それそれ。

ミコト:新しい彼がピクニック行きたいって言うからさ、
    朝早起きしてお弁当作ろうって思ったのに。

乃里子:何時集合だったの?

ミコト:午前八時に駅前集合。

乃里子:アタシ10時間寝過ごす奴って初めて見るかもしんない。

ミコト:あたしだって初だわよ!

乃里子:それにしても寝過ぎよ。

ミコト:だってさ、最近3日連続完徹してたんだから。

乃里子:この時期の会計事務所は地獄だわね。

ミコト:もうね、ご飯なんか食べると絶対戻すから、
    ここ二日はエナジードリンクのみの生活してたんだから。

乃里子:そんな状態で登山なんか危険にも程があるって。
    お嬢さん、山を舐めちゃあいけねえぜえ。

ミコト:仕方ないじゃん、今の彼氏が純正アウトドア派なんだから。

乃里子:どこで知り合ったの。

ミコト:あゆみのお店。

乃里子:あんな開店休業のお店でよく知り合えたわね。

ミコト:いやしかもさ、黒人なのよね。

乃里子:アタシ今混乱著しいんだけど。

ミコト:最初はママ目当てで来てたらしいけど、

乃里子:あー、あの変人クールビューティー。

ミコト:なんか二人でサバトがどうこう話してたけど、
    あたしはあんまり興味無くて、
    取り敢えず酒だけ飲んでたのよね。
    そしたら声掛けられちゃって。

乃里子:大丈夫?アンタ高尾山で生贄にされてたんじゃない?

ミコト:まさか。でも会話の意味は本当に謎だったのよ。
    さくりふぁいすとか聞こえては来たけど。

乃里子:それい、生贄って意味じゃん。

ミコト:マジ?

乃里子:マジ。アタシこう見えて英検準1級よ。

ミコト:やだ、それじゃあいつ、うら若き清らかな乙女を探してたって事?

乃里子:アンタを清らかとは言いたくないけど。

ミコト:じゃあラインとかブロックしといた方がいいかな?

乃里子:そうしなさい。

ミコト:携帯持ってくる!よいしょっと。



(ネチャ)


ミコト:やだ、何これ。

あゆみ:ミコトちゃん、そこ今から拭こうと思ってたのに。

ミコト:全てが手遅れよ、もう。
    目覚ましついでに顔も洗ってくる。

乃里子:戻ってくるの、遅かったわね。

あゆみ:布巾探すのに手間取っちゃった。

乃里子:ねえあゆみ、アンタのお店の常連の黒人だけど。

あゆみ:モーリスの事?

乃里子:モーリスって言うんだ。
    そいつ危ないんじゃないの?

あゆみ:ううん、いい人だよ。
    あたしたちお店のメンバー皆で、
    モーリスと一緒にお出かけするくらい仲良いんだよ。

乃里子:何処行ったのよ。

あゆみ:金時山。

乃里子:箱根の?

あゆみ:うん。

乃里子:金太郎のお話に出てくる山?

あゆみ:うん、モーリスってチュニジア出身でね。
    砂漠地帯で育ってるから、緑に囲まれた山に憧れてるんだって。

乃里子:だからって何でわざわざ金時山なんかに。

あゆみ:だって、折角日本に来たんだから、
    いっぱい日本の文化を覚えて欲しいでしょ。

乃里子:気持ちは分かるけどさ。
    その黒人、アンタの所のママさんと怪しい会話してるって聞いたけど。

あゆみ:うっそー。

乃里子:だってミコトの奴、サバトとかサクリファイスとか聞いたって。

あゆみ:それ多分、モーリスの実家の話だよ。

乃里子:呪いの館が実家なの?

あゆみ:まさかあ。
    多分サハラ砂漠近くのサファリでアイス食べてるって話じゃないかな。

乃里子:とんでもない空耳ね。

あゆみ:英語に慣れてない人なら仕方ないよ。

乃里子:アンタ英語得意なの?

あゆみ:一応TOEICは満点だよ。

乃里子:失礼しました、師匠。

あゆみ:どしたの急に。





ミコト:ギニャーーーーーーーーッ!!





あゆみ:びっくりしたー。

乃里子:今度は何よ!?

ミコト:手を洗う前に顔洗っちゃった!!

乃里子:地獄だわね。

あゆみ:流石は逢魔時だね。

 

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