加藤:では、やっぱり法人化が良いと。
ミコト:そうですね、加藤さんご自身の所得だと、
今回で累進課税制度の上限に達してしまう以上、
前年の利益率と成長率を維持できるようなら、
法人格を有した方が間違いなく節税効果は高いです。
加藤:そうですか、妻ともしっかり話し合って検討してみます。
ミコト:個人所得だと累進課税で所得税のみで45%に達してしまいますからね。
法人化することによって経費の幅も広がりますし、
数年前に施行された法人税率の軽減によって、
上手くいけば約27%の租税回避が見込めます。
加藤:なるほど。
ミコト:うちの会計事務所では行政書士の有資格者も数多いので、
法人化届け出の手続きをご所望なら、何時でもお申し付けください。
加藤:ミコトさんも、お持ちなんですか?資格。
ミコト:ええ、一応。
加藤:そうですか、ではその時が来たら是非お願いします。
さて、そろそろ打合せ開始から1時間だ。ちょっと休憩しませんか。
ミコト:はい。
加藤:あ、コーヒーでもご用意しますよ。
ミコト:ありがとうございます。
加藤:いやはや、しかし流石のお手並みですね。
ミコト:何が、ですか?
加藤:あなたの事ですよ。
ミコト:まあ、仕事ですので。
加藤:その若さでこれだけ優秀な方に、私は出会った事が無い。
ミコト:世の中広いですよ。私なんてまだまだ。
加藤:ストレスとか悩みとか、あるものですか?
ミコト:ええ、人並みには。
加藤:才女の悩みというのも面白そうですね。
雑談ついでに教えてもらうことはできませんか。
ミコト:まあ、個人的な事なので。
加藤:まあそう仰らずに。
解決の糸口なんて、日常生活の何気ない会話の中に落ちているものですよ。
ミコト:はあ・・・。
加藤:もしかしたら、貴女の悩みを解決する手段を私が持っている可能性だってある。
全ての可能性はゼロではないですから。
ミコト:では、この場限りの秘密になさってくださいますか。
加藤:勿論。
ミコト:私、知らない言葉が出てくると、必ずネットで検索をかけてしまうんです。
加藤:知的探求心の旺盛な現代人ならごく普通の事ですよ。
私も調べ物の時はネットを大いに活用します。
ミコト:でも、こないだ知った言葉を検索かけても、何も出てこないんです。
そのせいで夜も全然眠れなくて。
加藤:ふーむ、何ですかそれは。
ミコト:げちょひょーん。
加藤:は?
ミコト:いえ、だから、【げちょひょーん】です。
加藤;何ですかそれは。
ミコト:解決、できますか?
加藤:う、うーん・・・。
ミコト:やっぱり、貴方もそうなんですね。
加藤:い、いや、流石に戸惑いますね。
ミコト:何故です。
加藤:ギャップが。
ミコト:ギャップ?
加藤:才女の風格漂わせる貴女から、そんな言葉が出てくるとは。
ミコト:そんな…ってことは、
加藤さん、ご存じなんですか!?げちょひょーんのこと。
加藤:見当もつきません。
ただ、美人が絶対口にしなさそうな単語のイメージではありますけどね。
ミコト:そうですよね・・・。
加藤:というか、何でそんな言葉が出てくるんですか。
ミコト:少し前なのですが、私の友人が何気に呟いた言葉なんです。
加藤:その友人に聞けばいいじゃないですか。
ミコト:今は無理なんです。色々ありまして。
それに、自分自身で解決したいっていう変な欲が出ちゃったんです。
加藤:まあ、親密度の低い相手の方が相談しやすい加減があるのは分かりますが。
ミコト:最初は怒りにかまけて聞き流していたんですけど、
冷静になってしまうとどうしても気になっちゃったんです。
加藤:記憶力の良さが裏目に出る例ですね。
ミコト:あれ以来私の頭の中には、げちょひょーんが棲み着いて離れないのです。
加藤:さっき流暢に仕事の話をしていた時も?
ミコト:油断すると無意識に出てたでしょうね、げちょひょーん。
加藤:ちょっと先ほどの話を、油断して話してみてくれませんか。
ミコト:からかい始めてません?
加藤:そんな事はないですよ、悩みの解決にはまず現状把握から。
貴女の現状をきっちりと把握することが解決への道の一つです。
ミコト:加藤さんのげちょひょーんだと、
今回のげちょひょーん制度では45げちょひょーんになってしまうんです。
加藤:もはや暗号ですな。
何ですか、45げちょひょーんって。
ミコト:英語で言うとアイドルグループっぽくなりません?
加藤:なりませんよ。
ミコト:げちょひょーん48。
加藤:言わんでいいです。
ミコト:しかもですね、げちょひょーんが私の中で進化してきてるんです。
加藤:そんな物にまで進化論が適用されるんですか?
きっとあの世で嘆いてますよ、ダーウィン。
ミコト:ええ、最初はただのげちょひょーんだったのですが、
時々促音が追加されるんです。
加藤:促音?
ミコト:小さい【つ】の事です。
加藤:げっちょひょーん、ですか?
ミコト:いえ、げちょっひょーんです。
加藤:言いにくい!
ミコト:そうですか?
加藤:難しいですね。
ミコト:ただ、げちょっひょーんはどうも強めの感情を表しているようですので、
日常の基本形は、結局げちょひょーんで落ち着くんです。
加藤:貴女の匙加減でしょうが。
ミコト:促音は基本発音しないので、
もしかしたら時々げちょっひょーんではなくて、
【げちょ】と【ひょーん】に分裂しているのではないかという不安もよぎります。
加藤:そこは冷静に分析パターンを構築してるんですね。
ていうかちょっと待ってください。
貴女に連呼されると、私の脳にまで住み着き始めましたよ。
ミコト:げちょひょーんが一匹、げちょひょーんが二匹…。
加藤:新たな展開を作るなー!
ミコト:夜寝るときに数えてみてください。
加藤:羊に謝って下さいよ!
ミコト:効果は真逆です。
加藤:気になって寝れなくなるよ!俺も!
ミコト:そんなに怒らないでくださいよ、そちらから聞いて来たくせに。
加藤:いや、私の想像の範疇を軽々と超えてきたもので・・・。
失礼しました、では冷静になりましょう。
ミコト:げちょっ、げちょっ、げちょっ、げーちょひょーーーーん。
加藤:不意打ちでリズムに乗せないでくれ!
ミコト:失礼、脳内でこんな感じで毎日リフレインするんで、つい。
加藤:それはそれでお辛いでしょうけど。
ミコト:辛いです。
加藤:因みにそのお友達は、どういうシチュエーションでその言葉を発したのですか?
ミコト:同居人なんですけど、私の共通の友人と電話で会話している時に発してました。
加藤:ちょ、ちょっと待ってください。
ミコト:はい。
加藤:げちょひょーんの存在を知る人が、まだいるんですか?
ミコト:その共通の友人でおそらく最後だと思います。
加藤:その人には聞けないんですか?
ミコト:何か聞きにくいじゃないですか、近すぎる関係だと。
加藤:うん、まず貴女自身がそのお二人に確認することが最優先ですね。
ミコト:やっぱりそうですか。
加藤:まあ、私にできるアドバイスはこんなところですね。
ミコト:ありがとうございます、気持ちが前向きになりました。
加藤:せっかくですので、せめて寝不足解消だけでもお手伝いしますよ。
睡眠薬でもお使いになりますか?
こっそり処方してあげますよ。
ミコト:先生、それはいくら何でも、げちょひょーん法違反ですよ。
加藤:症状悪化してますって。